交錯タイトロープ 2-1 「ッ…ハ…ァッ!?」 窓から陽光が射す中、恭は飛び起きた。 余りに生々しい夢に、自分がいる場所が自室だと気付くまで僅かに時間が掛かった。 「…ハァ…ハァ…」 荒い寝息に自分が悪夢にうなされていたと気付く。寝巻の下はじっとりとした寝汗で気持ちが悪かった。 (──何て、夢なんだよ…) 記憶の痕跡に残る、女の恍惚とした表情。 同じ顔なのに、あの人とはまるで違う笑みを浮かべていた。 恭は頭を振り、寝巻代わりのTシャツを脱いで、ショートパンツだけの姿になる。 そのまま部屋の隅のタオルを手に取り、寝汗を流そうと風呂場へと向かおうとドアノブを捻ろうとした──その手前でドアがノックされた。 「恭、起きてる?」 「な、理子!?」 「あ、起きてるんだ。ちょっといい?」 ノブが捻られ、ドアが開かれる。その先に現れたのは、ショートヘアの活発そうな少女だった。 「起きてるんなら、ジョギングに付き合って……」 少女の目に留まったのは半裸の少年。しかも扉を開けたすぐ傍。 「ちょっ!?ちょっとアンタ、朝から何してんのよ!?」 「ま、待てって、理子!!お前、今、とんでもない勘違いしてねぇか!?」 [次→#] [戻る] |