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交錯タイトロープ
3-5
「ありがとう!今度何かで埋め合わせるから」
「はいはい、いいから早く行きなさいよ」
そして理子は教室へと一番乗りで辿り着き、自分の鞄と恭の鞄に手を掛ける。その時、何かに気付いた。
「あ」
恭の机には鞘袋が立て掛けられていた。
「そういえばコレ、朝持ってきてたっけ。忘れる所だったわ」
そうして次第に戻ってくる生徒達の姿を擦り抜ける様に理子は廊下を掛けていく。
そして下駄箱で自分の靴を履き、同じクラスの幼馴染の下駄箱に目を向ける。しかし、既にその中には彼の靴は無く、内履きが乱暴に転がっていた。
「ッあのォっ、バカァッ!!」



理子が恭の荷物を抱えるよりも前、彼は細かい雨が降っている校舎裏にその姿を現した。
視線の先にはこの不良グループの中心である渋谷を始め、巨漢の津島、恭よりも小柄な羽間、ヘッドフォンとゴーグルを着けた村本がこちらに気付く。足下には幾つか煙草の吸い殻が落ちている。
「待たせやがって、風邪でもひいたらどうしてくれンだ?アァ?」
小柄な羽間が喚き立てるが、
「知るかよ。アンタ等こそ、俺がバッくれたらどうする気だったんだよ」
恭は普段とは変わり、声を落としながら物静かに相手の挑発を躱す。その生意気な態度に羽間が食ってかかろうとするが、渋谷が制止。そのまま静かに佇む恭に口元を緩めた。
「いつになくヤる気じゃねェか?テメエらしくもねェがオレとしては願ったり叶ったりだ」

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