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交錯タイトロープ
3-1
「……という事で、浅川先生は今日を以てこの学校を去られます。皆さん、先生に拍手を!」
壇上に立つ校長の言葉にわああああと体育館の中を祝福の声と拍手が溢れていく。
その主役である浅川保険医は眼鏡の生徒会長から花束を受け取り、感激のあまり涙ぐんでいた。
「いいなぁ、幸せそうで」
エナが独り言ちながら拍手をしていると背後から腕が伸びて腰に絡まった。理子の手だ。
「な〜に〜?エナも浅川先生みたいな恋愛がしたいの?」
「だって、ロマンチックじゃない。中学生の頃からのずっと付き合ってた人なんでしょ?先生のお相手って」
二人は歓声の中、お喋りを始めた。集会整列時には生徒は出席順に並ぶ為、呉石と近衛は順番になり、必然的に二人は他愛の無い雑談をする事がある。長い拍手に掻き消されるのを良い事に、浅川先生の話から二人の会話は始まったのだ。
「確かに凄いけどね。でも私には何だか分からなくてピンとこないわ」
「そう?そんな事言うけど、理子と瀬名君も似たようなものじゃない?」
エナの思いがけない言葉に理子は顔を顰めて軽く手を振る。
「ないない、全然そんなのない。ていうか寧ろ有り得ない」
「あら、簡単に否定するわね?」

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あきゅろす。
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