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交錯タイトロープ
10-3
「だから少年と魔女さん、それとあの剣士と前に約束した黒服クンに出席願おうか。場所は…」
「…分かった。海沿いの『CCC』って会社の使われてない廃工場だな」
「それでは、また後でお会いしましょう」
通話が途切れる。恭はその場に居る全員に今の話をして状況を整理した。
「マズイわね…完全に主導権はあっち側だわ」
「ですが、他に選択肢はありません。罠だろうと向かう以外の手立てはないでしょう」
サリアとキースの言葉に恭、蒼史郎が頷く。
「最優先事項は理子ちゃんの確保だ。誰かが彼女を保護し、敵の本拠地から脱出する。そうすれば近くで待機するハルアキや譲二隊長に任せる事が出来る」
「理子…」
時刻はまだ午後7時頃。恭やその場の全員にとって長く感じる5時間。そして日を超えて始まる魔人達の饗宴は彼等とこの街の運命を決める。その瞬間を彼等は待つ。

しかしその時、焦りからか、誰一人として気付いていなかった。



「…海沿いの廃工場か…」
精悍なあの青年──渋谷が独り言葉を漏らし、夜風を切って走っていく。
理子が誘拐されたと物騒な話をしていたが、誰一人警察を呼ぶなどの対応を行わなかった事に疑問を感じた彼は、玄関を出てすぐに身を潜み、恭達の話に聞き耳を立てていた。そして目的地を確認して駆け出したのだ。
久しく忘れていた、闘いの情熱。それを思い出させ、感じさせてくれた近衛家の面々。
恩義というつもりではないが、彼は走らずにはいられなかった。そうしてやりたいだけだと、そう彼は自分に言い聞かせ、街を駆け抜けていった。


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