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交錯タイトロープ
10-1



日が沈み、夜の戸張が降りた頃、蒼史郎から告げられた知らせに近衛道場に居た恭達は驚いた。
「理子が攫われた!?」
「済まん、俺のミスだ…!」
いつになく深刻な表情を浮かべる蒼史郎。彼の言葉に恭は家を飛び出す勢いで玄関に向かう!
「待て、恭!」
呼び止めたのは宗十郎。その武人たる顔には揺らぎはなかった。
「待つのだ。相手がどうあれ何処にいるのか分からないのではただ闇雲に彷徨うだけだ」
「でもじっちゃん!」
「焦るのは分かるが、蒼史郎の話を最後まで聞かぬか」
師の眼差しは鋭い。一刻を争う事態だが、師の言う通りである。
「オイ、周防のオッサン、どういう事だ?攫われたなんてただ事じゃ…」
何事かと問い掛けようとする渋谷。その肩を宗十郎が引き止める。
「渋谷よ。今日はこのまま帰ってくれまいか?」
「ああ?だからどういう事だって──」
その場に居合わせた渋谷も理由が知りたかった。しかし宗十郎を始め、全員の尋常ではない雰囲気に言葉を濁す。
「──分かったよ、今日は帰ってやる。だが、何かあれば教えろ。俺も手伝ってやる」
「悪いな、また今度」
そのまま彼が玄関を出たのを見送り、再び全員が口を開いた。
「それでリコちゃんは!?」
「今ハルアキがお守りで位置特定しているが、妨害があるのか、まだ特定に到ってない。恐らくはこの街の何処かの筈──」
その時、近衛家の玄関先の電話が鳴る。全員の視線が集まり、宗十郎が応対するがすぐに恭に受話器を渡した。
「…もしもし?」
『やあ、少年。お久しぶりだね』


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あきゅろす。
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