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交錯タイトロープ
9-8



広大なる空間。白く、ただ遠く。地平も上空も彼方まで白い空間。
魔女の記憶──膨大な知恵と記憶の集積された、「百なる魔女」を構成する魂の記憶の中。白の地平のそこらには絵画や本棚が所々に点在している。
そこへ金色の髪を結った魔女・クェルナが降り立った。
「…出すつもりは無かったのだが、まさか、あの結界から出るとはな」
魔女の記憶の中、誰もいない空を見上げ一人言ちる。
「従者──あの少年への想いなのか。それとも…」
遠くを見つめていた視線を、自身の手に向ける。
「いずれにせよ、この身では私の観測ももう終わるか。口惜しいが、愛しき彼の者の姿を一目見るまではまだ先になるだろうからな」
クェルナの指先からは四散していく光が漏れている。それをしばらく眺めていた彼女は、サリアと会った時と同じ様にどこからか現れた椅子に腰掛け、静かに本を読み始めた。





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あきゅろす。
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