交錯タイトロープ
9-5
しかし、サリアは結界から解放する前に、自身の魔力が尽きるのが分かってしまった。
焼き切れる苦痛と四肢の末端から力が抜けていくのを理解しても、ここで止められない。悔しさに唇を噛み、零れそうな涙を堪えているが、現実には失われつつある魔力が限界を超えていた。
(──まだ、まだよ!まだ終われないのッ!もう何もなくても、私はただ、キョウに会いたいだけなのよ!!)
魔力が尽きる──それがどうしたというのだ。
(──どう──したいの──)
もう出口が見えたというのに、出られないなんて、耐えられる筈もない。
(──そのちからが、ほしいの──)
会いたい、会いたい──ただそれだけで幾十の世界を越えた。だからこそ、もうその気持ちを抑えてはいられなかった。
(──それ──なら、わたしは──)
「キョオオオオオオオオオ!!」
絶叫と共に、サリアは結界を引き千切った。
弾け飛んだ結界の構築式と彼女の解除式が破片となり、魔力の粒子になっていく。
「……出、れた?」
実感するよりも前に、サリアは前のめりに倒れていた。
精神世界だが、もう身体が動かない。限界を超えてしまったのだ。
だが、死にそうな感覚はない。酷く疲れただけと、自己を確認した所で、サリアは眠りに落ちた。
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