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交錯タイトロープ
2-18



「戦いってヤツはいつも虚しいぜ……。人類皆兄弟じゃねぇのかよ……」
昼休みの屋上──周囲に誰の気配もないままに伊沢一太郎は呟いた。
「何だ?今日この日、遂に何かに開眼したのか?伊沢?」
隣では文庫本を片手に弁当をつまむ早瀬が適当な返事を返している。
その正面を恭と理子、ついでに慶とエナも一緒に弁当をつついていた。
「朝の一件、オマエ忘れたとは言わせねぇぞ!!どんだけ死にそうな目に遭いそうになったか!!」
朝以降の逃走劇は早瀬から聞く限り、授業中も続いてたらしく、伊沢は息も絶え絶えで漸く逃げ切ったらしい。
「つーか……オマエ等、何かのハブですか?どうして俺が弁当無いのに皆してこれ見よがしに弁当のエレクトリカルパレードを開いちゃってんですか!?」
普段ならば甘いマスクと証される伊沢の口元から、飢餓と苦悶の涎が漏れている。
「むぐぐぐぐ……卵焼き、ウインナー、ハンバーグ……」
「ちょ、ちょっと、止めて下さい先輩。人のお弁当を恨めしく睨まないで下さいよ」
サッと自身の弁当を隠すエナ。彼女の弁当が伊沢の視界から消えた事により、残る三人にそのターゲッティングは移る。まずは慶に。
「いや、僕の弁当見ても困りますケド……あげませんし」

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あきゅろす。
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