[携帯モード] [URL送信]

交錯タイトロープ
2-17
「お、サンキュー」
慶に礼を述べ、目を通そうとした瞬間、理子が横からプリントを奪った。
「ちょっと、高杉君?恭をあんまり甘やかさないでよ。少し痛い目に遭った方がコイツの為になるんだから」
「何だよ、慶の好意を無駄にすんのかよ!?」
「人の好意ばかりアテにしてるアンタが何偉そうに言ってんのよッ!!」
そう言いながら二人は、慶から渡されたプリントを奪い合う。その右へ左へと素早く繰り広げられる二人の応酬から、恭の生命線であるプリントが所々千切れ、満遍なくシワが入っていく事に二人共気付かない。
そして互いに両手で端を掴んだ膠着状態になった時、エナが微笑みながら呟いた。
「さっすが、許婚同士。仲良いよね、二人共。まるで夫婦漫才みたい」
「「ッ違ァァう!!!!」」
二人の叫びが教室に響いた瞬間、ギリギリだった両者の力の均衡は崩れて、プリントは裂けた。
「ホラ、息ピッタリ」
「おおおおぁああああ!?俺の命綱がぁァァァ!?」
舞い散る大小様々な紙片をあくせく拾い集める恭を見下ろし、加害者の筈の理子は何かを悟った聖女の如く呟いた。
「戦いはいつも虚しいわ…。ヒトは何でいつも争うの……?」
その問い掛けは始業のベルに掻き消されるだけだった。

[*←前][次→#]

17/30ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!