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交錯タイトロープ
5-4

流れた言葉ではない唄は少女を満たしていった。
例え、彼女が幾つか歳を重ねていたとしても、こう思っただろう。
──綺麗、と。

そうして女は少女の頬に触れた。
『──貴女はいい娘ね…』

──おねえさん…?

唇の動きはその様な言葉を表してはいないが、少女には何故かそう聞こえた。
『貴女に楽しい贈物をあげるわ…。楽しい、楽しい贈物…』

──おくり…もの…?

『そうよ。何処までも行ける羽根──何でも出来る真っ白な玩具──ねえ…欲しい…?』

──うん。

『じゃあ、あげる』
そう女が告げた瞬間、少女の目の前から女は忽然と消えた。
唄は止み、空は赤から黒へと沈んでいく。既に辺りは夜の戸張を降ろしていた。
だが、女は見当たらない。まるで夜空に溶け込んでしまったかの様に幻の如く消えてしまった。
ただ、少女は不思議な出来事だと思いながらも、あの女の綺麗な微笑みが忘れられなかった。
そうして、ただ一人佇む草原から家路へと向かう。
女の唄った唄を口ずさみながら──。

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あきゅろす。
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