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交錯タイトロープ
1-1
「…良かった…」
耳元に響く、少年の声は震えていた。
後悔と安堵と喜びが混ざった、複雑で小さな響き。
それを聞き、サリアも恭の背中に精一杯の力で腕を回す。
「…ゴメンね…。私は、此処にいるから…」
もう離れたくはない程、きつく、強く。
ただ、彼の身体に、心に、魂に、彼女の温もりと鼓動の音と想いを焼き付けられる程に。
「キョウの傍に…いるから」

ただ、二人は抱き合ったまま、互いの胸の高鳴りを感じ合う。
この気持ちを、失くさない様に。
この想いを、消えない様に。
しっかりと結び合った──。




「ぅ…!?」


不意に恭の胸に激しい痛みが走る。
激痛に意識を断ち切られそうになるのを拒む様に視線を逸らすと、その目に映ったのは胸を貫き、赤黒い塊を握った細い指。
それが恭自身の心臓と、背に回された筈のサリアの手だとは、彼は理解出来なかった。
血管が繋がったまま脈動する心臓を握られたまま、サリアへと目を向けると彼女は笑っていた。
「ねぇ?嬉しい?」
その差し込んだ腕を抜き、恭の背後にゆっくりと回り込み、残った右腕を首筋に触れる。
「な……ァ…?」
「貴方の中……とくんとくんって熱いよ?…凄く…凄く熱くて、私まで熱くなってきたわ…」

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あきゅろす。
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