彩りの残花
6
ああ、と静かに頷く。そして次第に彼女の姿が夜空に溶けていく。
「彩華姉さん」
「なあに?」
「俺、貴女を好きで良かった」
「私も、カズ君を愛してるよ」
交わした言葉が胸に沁みる。そして彼女は遂に空へと旅立った。
独りになった公園。その空にいよいよ最後の花火達が飛び、弾ける。
「うああああああああああ!!」
轟音に掻き消されてしまう様に悲しみを振り絞る。堪えていた涙が堰を切って零れてきた。
それでも俺は空を見た。
命を燃やして彩り鮮やかに散っていく、花火の中に、彼女の微笑みがあった気がした。
「泣かないで」と言っているのかもしれない。でも今だけは、最後だけは全て悲しみを振り絞ってしまいたかった。
光も、音も止み、残ったのは月と星々の光だけ。
いつかの夜を思い出しながら、胸に宿る貴女との思い出を思い返す。
そして、ゆっくりと独り、歩き出した。
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