彩りの残花 3 「ああ……夜空が広がっていくみたい」 光る空を眺める彼女の視線を追う。いつもなら暗い夜空も、遠くの花火に照らされ、貴女の言う通りに広く感じる。 そんな貴女の言葉に俺は何かを感じていた。 薄らとした感覚。 確信はないのに、もしかしたら、という感覚だった。 雑踏と賑わいの中、俺達は見つめ合う。 そして、二人でゆっくりとこの喧騒から離れていく。 背中の方からはまだ花火の音と輝きが舞っている。それでも先を進む彼女の後を追う。 そうしてしばらく、着いた先は花火会場から少し離れた人気のない公園だった。 「ふふ、二人だけだと静かだね」 彼女は手近にあったブランコに腰掛けて、俺を見つめる。遠雷の様に花火は続いているが、二人の間に流れている空気は確かに静かだった。 彼女は笑う。俺も微笑んだ。ただ、それだけ。 「何だろう。そろそろ、なのかもしれない」 そうか。 遠くの花火も終わりに向けて、何度も打ち上がる。 光に影が落ち、俺の姿だけを捉える。 ブランコに座る貴女の影は、ない。 [*←前][次→#] [戻る] |