* Voice2 2
あれからまた何日か過ごした。
でもブレイクと会話する事は無かった
『これでいい』そうは思ってみてもやはり心に空いてしまった穴がとても寒く、寂しさが増す。
ベッドから外見上げれば太陽の光を雲が遮りいかにも寒そうだ。私は気だるく重い体を動かし、いつものように庭に出掛けた。
もう、私には屋敷から外に出る事は許されないから…せめて外の空気を感じようと最後の悪あがき。
(見つかっては怒られるんだけどね)
だからといって特別監視されるような事はなく難なく自室から外に出る事が出来た。外は冬の寒さが増し、容赦なく私に吹き付ける。
(さむっ…)
いつものようにお気に入りの木に寄り掛かるように座り、目を閉じた。
冷たい風に負けぬよう揺れる木々の音、鳥たちの囀り、野良猫たちの威嚇するような鳴き声。
(喧嘩はよくないんだけどね…苦笑)
自然の声を聞くと重い体も少しは軽くなる…気がする。とにかく落ち着く。
しばらく目を閉じたままボーッとしていると急に明るくなり少し暖かくなった。目を開けると雲と雲の間から光が漏れていた。
私はその光が耐えれず目を細めた。
太陽はいつもより西に傾いていた。気が付かなかったが結構永い事居たようだ。
その所為かいつもに増して心臓の痛みがひどかった。
(早く戻らなきゃ…)
そして、立ち上がった時、いきなり吐き気に襲われ我慢しきれずその場で吐き出してしまった。
口を覆った手を見てみると…
紅く染まっていた。
(あー、もう……ダメ…なん、だ…)
そう悟った時、私は倒れた。
アスファルトに強く体を打ち付けたが痛みは感じなかった…。もう、神経が麻痺しているのかもしれない…
これで、終わるんだ。と覚悟を決めた時
ふと、彼の顔が過った。
(せめて…もう、いち…ど……)
意識が朦朧としていく中、心残りなのは…想うのは…やっぱり貴方だ。
お婆様やシャロンの事を想えないの私はやっぱり親不孝者だな。
「ナナっ!!!」
遠くで誰かが私を呼ぶ声が聞こえた、気がした。…気のせいだろう
すると、いきなり体が浮いた。
(あ、こんな私でも天国に行けるのかな…?)なんて事を思い、ゆっくり目を開けると
「………」
今一番会いたかった、愛しい人が私を抱き抱えていた。
(…また、会えた……)
いつもヘラヘラ笑う彼には珍しく、怒ったような悲しそうな表情。
そんな顔してほしい訳じゃないのに、私がそうさせてしまっているんだよね?
私は最後の力を振り絞って口を動かした。
「……り……と。」
「しゃべらないでいい。じっとしていて下さい。」
冷たく感情的な声。彼のそんな声、初めて聞いた
ごめんね…?
「…りが、と……ブレイ、ク……」
「…っ、何言ってるんですカ!すぐに医者が来ますっ…!!」
だから、頑張って下さい。
そう聞いた時、なんだか体の力が全て抜けた感じがした。
なんとか右手を動かし、ブレイクの頬に触れた
「…ブレイク……」
“生きて”
重力に逆らえなくなった私の右手はゆっくり地面へと落ちた。
それから、
彼が私の名前を呼ぶ…いや、叫ぶに近い声が一時、鳴り止まなかったようだ。
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