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〜儚く散った声〜



季節は夏から秋へと変わり緑で輝いて木々達も今ではすっかりオレンジのようなブラウンのような寂しい色に変わり果てた。
あんなに蒸し暑かった風も今では肌寒く感じる。


季節は足早に過ぎようとして空も休まる事なく色が変わり、雲は変形しながら時を刻み、時計の針も休まる事なく時間を進める…決して止まる事はない。


…止める事は出来ない。




「ナナお嬢様…」


「…ブレイク………」



庭の木に寄りかかり自然を感じていたらブレイクに見つかってしまった。


…隠れていた訳ではないが





「こんな所に居ては風邪をひかれますヨ?」


いつもの怪しい笑みを浮かべ「さぁ、中へ」と屋敷の中に導こうとする。


だが、私は動かなかった。





「ナナ?」



普段、彼は立場上、私を(一応)お嬢様と呼ぶが(そりゃ、もう嫌味たっぷりで)最近は、名前で呼ぶ事が多くなった。




いつからか

なんてそんなの覚えてないわ…




少し離れた所に居たブレイクは全く動く気配の無い私に近付き、顔覗き込んできた。
…それでも何処か遠くを見つめるようにボーッとしている。






気付いて無い訳じゃない。

ただ…



ただ………。





全く動かない私に何度か名前を呼んできたが、途中で諦めたのか黙って私を見る事にしたらしい。




至近距離で向かい合う私達。


目を合わさなければ全く会話も無い。






そんな状態に痺れを切らしたのかブレイクはもう一度「ナナ…」と呼んだ。儚げに。


その声に応える様に私はブレイクの両袖を両手で掴んでいた。顔は俯いたまま





なんで掴んだのか

自分にも良く分からなかった。



助かったのはブレイクが何も言わないでいてくれたから…






もう一度


もう一度、名前を呼ばれたら



溢れてしまいそうだったから。








この涙のように


この想いも………。









一時、その状態が続きブレイクが抱き締めてくれようとした時、やっと、我に返れた

私は上手くブレイクの手をかわした
ブレイクに背を向けて…




「ごめんなさい。もう戻りますわ」


ブレイクを見もせず、お屋敷に一人戻った。ブレイクを一人残して…








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