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* 頬を伝う雫が輝く時
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〜頬を伝う雫が輝く時〜



天気の良い休日
私はいつものように窓を開け読書をしていた。生まれつき体の弱い私は外で元気よく遊び回る事が出来ない


そんな退屈な毎日を過ごしている時、あの人はやって来た


どうも、最近取り締まりが厳しくなった異能者なんちゃら法に引っ掛かり捕まりそうになったところをちょうど窓の開いていた私の部屋に飛び込んだそうだ。

(私の部屋は2階なのに木から飛びのり入って来たらしい…)


幸い、兵の人に顔を見られていない為今も普通に暮らしていけてるみたいだ。


それから何回か遊びに来てくれた。私は外で遊べないせいか友達は少なかったので嬉しかった。


でも…

もうあの人は来ない…


私が「さよなら」を言ったから。



そして、
今日は先日決まった婚約者に会う事になっている



気付かなかった。

あの人に会えない事が

これ程まで、胸が苦しくなる事を…



コンコンッ――

「ナナ様、準備はよろしいですか?」


私はベッドから立ち上がり扉を開け部屋から出た


「大丈夫です。行きましょう」


今さら気付いたってもう遅い

私は婚約してしまったのだ


有名な騎士家のご子息と…


せめて名前ぐらい聞いとくべきだったと後悔ばかりだ。



ナナは客間の前に着くと深々とお辞儀をした。それと同時に客間の扉も開く

扉が完全に開いたところでナナは口を開いた


「お初にお目にかかります。ナナ・ユリィンレスと申します。本日は遠い所から遙々ご足労…「めんどくせー事はいいから、顔上げろよ。」

「ぼ、坊っちゃんっ!」


貴族ともあろう者の言葉とは思えぬ発言。その言葉に周りの大人は驚き、私の婚約者様の使いの者だと思われる方は焦っていた。

でも…

(この声…どこかで……)


ナナはゆっくり顔を上げた


「うっ…そ……。」

ありえない。
本当にありえない。


もう二度と会えないと、
会う事すら許されないと思っていたあの人がナナの前に堂々と立っていた。


「なんて顔してんだよ」


周りの大人は2人が知り合いという事に驚いたのかざわめいている。そんな大人達に関係なく2人はもう自分達の世界に入っていた


「だって…どうして?」


目はうっすら涙を浮かべ、顔を少し赤く染め、ずっと客間の入り口に立ち動こうとしない

いや、驚いてびっくりし過ぎて動けないナナ

そんなナナとは反対に意地悪な笑みを浮かべこちらに近づいてくる

「ナナを驚かしてみたかったんだよ」


「どうして、私の名を…?」


名乗った覚えのない名前を何故、知っているのか不思議だった

ナナの言葉にまたイタズラを思いついた子供のように笑い、ナナの左手をとった


「オレたち、婚約者だろーが」

そう言うと私の左手の薬指に指輪をはめた。「ぴったしだな」とご機嫌そうに笑い


その後、ナナは泣いてしまった。嬉しさのあまりに…




* 頬を伝うが輝く時. *


(スパーダ、大好きだよ)


- END -



あきゅろす。
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