* 唐突な出逢い
+ A sudden encounter +
〜唐突な出逢いに〜
もう町にはキラキラと輝くイルミネーションが飾られる季節。この時期の夜はアウター無しにはいられず、コートのポケットに両手を突っ込み1人足早に家に向かっていた。
すると、
目の前に一台の車が止まり、運転手側の窓が開いた。
「お姉さん、今から何処行くの?」
ここは表通りとはいえ、結構な田舎な為、1人で行くような所は何処にもない。
要するに…
たった今私はナンパにあっている。
こんな寒い日にご苦労な奴だ。
いつもなら無視をして行くが、目の前の車が私の行く手を阻んでいる為、それが出来ない。
今回は特別に応えてやろうとした時、後ろから肩を叩かれた。振り向くと、目が切れ長でイケメンの男が笑顔で私の肩に手を置いている。
てか……だれ?
「1人で帰る時は送っちゃる。
言うたじゃろ?」
女の1人歩きは危険じゃからの。と、さも知り合いの様に言う彼。
ナンパ野郎は私に男が居た事が分かり舌打ちをした。……ただの誤解だが。でも、今回はこういう誤解は有難いものだ。
当の私は話についていけず唖然としているが…そんな事、ナンパ野郎は知るよしもない。
「それじゃ、行くぜよ」
「え?」
誰か分からない彼に腕を取られ、私達はそのままナンパ野郎の元から去った。
もしかしたら、
私が忘れてるだけもしれないし…
でも、
こんな訛った特徴的な人忘れる筈が…
私は彼に引っ張られながら、必死に脳みそを回転させた、が全く分からない。
ナンパ野郎の車が見えなくなる場所で彼は止まった。必然的に私も止まった。
「ここまで来れば安心じゃの」
その言葉を聞き私は脳みそを働かせていた為か、すぐに理解が出来た。
彼はナンパ野郎から私を助けてくれた。のだと
「あ、あの!」
「ん?」
「ありがとうございました」
助けてくれた彼に深々と礼をした。腕は繋がれたまま。
お礼を言え、すっきりした私は顔を上げた。すると、暗闇でも多少は分かる程彼は驚いていた。
「まさか、礼を言われるとはのー」
…ん?
「え、だって、助けてくれたんじゃ…」
珍しく、勘が外れたのかと思い。
目が泳ぎ、明らかに動揺する私を見て彼の口端が上がった。
「これもナンパかもしれんよ?」
「……ははは!」
私が笑うと彼は不思議そうに少し眉間に皺を寄せた。
それに気付いた私は笑いを堪え、笑ってしまった事に軽く謝った。
「自分で自分の事ナンパって言う人初めてみました」
そう言うと「そうか…?」と彼も笑ってくれた。
男なんか興味も無く、逆に毛嫌いっていたし、ナンパ野郎なんて以ての外だった私だが、彼には全然警戒心が無かった。
「ところでお前さん名前は?」
* 唐突な出逢い*
- END -
たまにはこういうのもアリかもしれない。
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