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* if I turn around


+ if I turn around +

  〜振り向けば〜



私は物凄い勢いで走って行った

あいつの元に…!



「景吾!!」


勢いよく開いたドアの音と私の怒鳴り声が景吾の部屋に響く


「あーン?てめぇ、もっと静かに入ってこれねぇのか」


私が怒っているにもかかわらず、そんな事気にも止めず景吾は悠々とソファで本を読んでいた
私の方を一度も見ずに…


私は景吾の処へ行き景吾の持っていた本を取り投げ捨てた



「ちっ…、ナナお前何を…!!」


やっと景吾はナナの方を向いた


「何が、じゃないわよ!
何でいつもいつも私の邪魔をするのよ!」



今日はバレンタイン。
私は憧れていた先輩にチョコを渡そうとした、が受け取ってもらえなかった


どうしてかと訪ねたら「跡部に受け取るな」そう言われたから…




「毎回毎回毎回…
今年も去年も一昨年も!!
よくもまあ飽きずに邪魔してくれるわね!」



そう、私は毎年バレンタインは本命一本できた。必ずその時好きな人にあげようと努力したが…
それは見事に毎年、景吾に邪魔をされたのだ!



「ちっ、あいつ喋りやがったか」


「はぁ?!意味わかんない!」

ナナは景吾に背を向けた
景吾はめんどくさそうにため息混じりで言った

「で、チョコはどうしたんだ?」

「…たわよ」


「あン?」


「捨てた!っつたの!」


ナナは溢れそうになる涙を必死にこらえ叫んだ。それでも声は震えていた


「お前…そんなあいつが好きだったのか?」


景吾の声がとても切なく聞こえナナは景吾の方に振り向いた。
声と同じように景吾の表情も切なくどこか苦しそうだった。


ナナは余計分からなくなった


何故、景吾がそんな表情をするのか…



「好き、だったわよ
じゃなきゃチョコあげないでしょ!?」


「…婚約者である俺にはないのに、か?」


相変わらず苦しそうな表情の景吾
ナナはなるべく景吾を見ないようにした


そうじゃなきゃ、
こっちまでおかしくなりそうだったから…


「婚約者って…親同士が決めた事じゃない
私には関係ないもの!」


「………」


景吾はナナの言葉を聞くと黙り込んでしまった

ナナはそれがいたたまれなかった


「景吾だって早く本当に好きになれる人見つけた方がいいよ」


「………」


「………」


また沈黙が続いた。

風の音や鳥の囀りがよく聞こえる
心臓の音も…



「…好きな奴ならいる」


「え?」


「そいつを手に入れる為なら
どんな事だって利用する…
親の権力だろうとな」



その時ナナには景吾の言っている本当の意味は分からなかった


「最悪じゃない、そんなの。」

ナナはまだ顔をあげれずにいた


「そうでもしなきゃ、傍に置いとけねーだろ」


声が段々大きくなったと思ったら、下を向いていたナナには景吾の足が映った

いつの間にか目の前にいたんだ


ナナは顔をあげようとした瞬間、景吾の顔は見えず暖かい温もりを感じ景吾の先が見えた

抱き締められてると気付いたのはそれから数秒してからだ


「け……ご?」


「なんで気付かねぇんだよ、おまえは…」


その声はとても弱々しいものでいつもの傲慢でナルシストの景吾のものではなかった



その時、初めて気付いた

景吾の気持ちに…。



ナナも本当は好きだったのかもしれない


いつの間にかナナは景吾に手をまわしていた

景吾はそんな私の行動に一瞬戸惑ったものの強く抱き締め返してくれた





今まで気付かなくて

ごめんね。

でも、本当は

気付いてたのかもしれない…

自分の気持ちに。

それでも、婚約は親が決めたもの

私は景吾の気持ちを確かめたくて

景吾の本当の想いを確かめたくて

景吾を試してたのかも…

振り向いてもらいたくて。



景吾、これからも

よろしくね?


* 振りけば. *




- END -



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