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* Farewell
+ Farewell +

  〜そして、さよなら〜






冷たい風が漂い、辺り一面銀世界。この地域は年中そうだ。その冷たい風さえ心地よく思う私は可笑しいだろうか…。



私は嘗てこの街に住んでいた。かなり昔の話だ。それに、住んでいたと言っても1ヶ月経つか経たないかぐらい



それなのに私は此処にとても永く居た気がした。




「ナナ…?」


ナナがボーッと歩いていると後ろから聞き覚えのある声がした振り向くと。…やはり


「ネフリー」


ネフリーはとても驚き目を丸く見開き一気にナナの元まで駆けつけた。流石、雪国の住人というべきか。雪の上だというのに普通に走って来た。


「ナナなのね?!」
他に誰に見えるのだろう…。いや、少しの間しか一緒に居なかった筈の私に気付いてくれた事が奇跡、か。


「うん。久しぶり」


私の声に一瞬安心の表情を見せたがまた一瞬で今度は怒りに変わった。


「どうしてあの日何も言ってくれなかったの?」



あの日。とは私がこの街から離れた日の事を指しているのだろう。



あの時、此処に来たのは偶然でそんなに永く居座るつもりはなかった。だが、彼等と出会い。親しくなり、この街から出る事が出来なかった。


私はまだ彼等と一緒に居たい。

そう思ってしまったからだ。



「…ごめんね」


別れを告げてしまえば余計、この想いは強まってしまいそうだったから。

告げれなかった

告げれる程の余裕がなかった。



でも、今度こそはちゃんと伝えなきゃ。後悔しないために



「ネフリー、ありがとね」


「え?」


「…あの二人にも伝えて?今までありがとう。って」


ナナはネフリーから離れた再び歩き出した。この街へ寄ったのは別れを言うため。私はもう…永く持たない、から


用が済んだナナは港に向かった。途中、ネフリーの声が聞こえた気がしたが気にはしなかった。



歩く度にジャリジャリ音する雪の絨毯に足を掬われないよう注意を払いながら向かった。


街を行き交う人々はそこまで多くはないが、何人もの人とすれ違う中、違和感を感じ、咄嗟に振り向いてしまった。一人の男性が驚いた表情でこちらを見ていた


「ナナ?」


視線が合ったまま数秒して先に沈黙を破ったのは相手だった。


私の名前…

まだ覚えててくれたんだね。



「うん。久しぶり」



久しぶりに会えて

名前も覚えててくれて

嬉しかったよ

本当にありがとう。




そして、さよなら *


- END -


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