*10 向かう先
次の日の朝―
「…分ったわ」
「頼んだぞ、ウィル」
「はーい」
朝っぱらから中佐に呼び出され
何かと思えばエルリック兄弟の護衛をしろ、と
それは元々任されていた任務
今さらどうこう言っても仕方がないが…
(何か気に食わない)
あの2人を見れば何をしてきたか一目瞭然だ。そんな2人を護らなくてはならないのは…正直気が引ける
ウィルはエルリック兄弟が泊まっている部屋の前で立ち止まりノックをした
コンコンッ―
「はーい」
「ウィルです。今後の事についてお話があります」
ウィルが言い終わると扉は開きそこには鎧のアルフォンスが立っていた
「どうぞ」
「失礼します」
「すみません、まだ兄さん寝てて…」
申し訳なさそうに言うアルフォンス
部屋へ入ったはいいがアルフォンス以外の気配を感じないと思ったら
(…そういう事か)
「いえ、大丈夫です。昨日のあれで疲れたのでしょう。
…ここで待たせてもらってもいいですか?」
「はい…それと……」
?
「敬語は使わなくていいですよ!こんな身なりですけど僕のが年下ですし…」
「ありがとう。でもこれも仕事なので…」
そう言うとアルフォンスは肩を落とした。鎧のため表情は分からないが
(感情は伝わるもの、だね)
多分、ウィルが敬語を使う事によって気疲れでもするのだろう。あまり仲良くする気はないが…仕方がない
「なるべく使わないように気をつけるよ」
少し笑顔で言うとアルフォンスも…笑った気がした
「うん!あと僕の事はアルでいいよ。アルフォンスって長いし…」
「分かった、私の事も呼び捨てでいいよ」
表情は無くても雰囲気で大体の表情まで理解出来る
(…不思議なものだ)
それから少し話をした。アルフォンスは気さくで優しい性格なのだろう…悪い人ではなさそうだ
(こんな人が禁忌を犯したなんて…)
人は見かけによらない。
改めてそう思った
「…ん……」
アルフォンスとの話の途中、やっとエドワードのお目覚めだ。
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