物語 第3話 二つの騎士団、そして旅の始まり あれから、三人は世界首都ルイセンド王国に戻り、変装のおかげでなんとかネリアが天空人とばれずに済んだまま、フレイとガザフの自宅へと連れて行くことが出来た。 ネリア「本当にヘンテコな格好をしている人でいっぱいな町なんだな」 フレイ「だからさっき説明しただろ?今そういう格好をするお祭りなんだって」 ネリア「安心しろ、独り言だ」 フレイ(独り言にしてはでけぇよ) ネリア「そういや…先ほどまでいたガザフとやらはどこに行ったのだ?」 フレイ「親父なら城の方に行って任務の報告しに行ったよ」 【第3話 二つの騎士団、そして旅の始まり】 場所は変わって、ルイセンド城の謁見の間。 そこにいるのはルイセンド王国アイザント国王と、ガザフの姿があった。 アイザント国王「わかった、今度会議でその問題について話し合うとしよう。あと、遠征の二人の任務承けたわまった。気を付けていってきなさい」 ガザフ「は、ありがとうございます陛下。それでは、失礼いたします」 そう国王に向かってお辞儀をすると、後ろを振り向いて謁見の間を出て行った。 ???「は、国王に何を報告していたのかな?ガザフ世界総指揮官様?」 ガザフ「何の用だオルグユ、嫌味を言いに来たのか?」 オルグユ、彼はグリュエル騎士団の総指揮官である。 グリュエル騎士団とは、もともと世界騎士団だったものが分裂してできた騎士団で、オルグユ率いる7人、計8人で構成される少数騎士団だ。 分裂したのは、ただ警備・護衛して世界を守るとする、世界騎士団のやり方が気に食わないオルグユが自らが動いて世界を守る別のやり方でグリュエル騎士団を設立して行動している。 グリュエル騎士団のやり方、それは残酷なものだった。 一見、普通の人から見たら悪いものを征伐し、処罰して良いことを行っているようにも見える。 しかしその真意はグリュエル騎士団が独断で気にしない種族だと判断したものは全滅まで追いやるほど、虐殺を繰り返す極悪非道の行為。 だが、それはガザフ・フレイ・その種族の関係者・世界騎士団の者しか真実を知らない。 そう、この話はさきほどネリアに話したことは、すべてグリュエル騎士団が行っている話のことだったのだ。 しかし、この行いを知らない国王はなぜ知らないのか?たぶん、オルグユがウソの報告をして、それを信じ込んでいるんだろう。 オルグユ「まさか!ただ僕は君のことが心配で様子を見に来たんだよ?嬉しいだろ親友よ」 ガザフ「冗談はそれまでだ。明日遠征する…せいぜい頑張るのだな」 オルグユ「相変わらず冷たいなぁガザフ?僕とお前は昔からの大親友ではないか!」 ガザフ「それはとっくの昔に忘れた」 二人は小さいころから幼馴染であった。子供のころからよく遊んでいた。 二人で笑いあった日々もあった。 世界を守ろうと、種族差別社会を終わらそうと。 志は二人とも同じだった。 しかし20年前、ガザフは18歳、オルグユが17歳のとき、二人の仲は決裂した。 そう、グリュエル騎士団の結成だ。その日からオルグユ筆頭のグリュエル騎士団ができ、お互いの道は分かれてしまった。 オルグユ「あっそ、じゃぁせいぜい世界を守るために頑張るんだね、世界騎士総指揮官殿〜」 ガザフ「貴様もな…いずれまた会おう」 次逢うときはお互い戦い合うだろうがな そう心の中でガザフは思い、オルグユを背にして自宅へと歩みだしていった。 ************** ――ガチャ、 フレイ「あ、親父おかえりー。いつもより報告遅かったんだな…なにか問題でもあったのか?」 ガザフ「気にするな。ところでネリアちゃんはどうした?」 ネリア「わたしなら今風呂から上がったところだぞ」 そう言って二人の前に現れたのは、パンツとブラジャーを着て、肩にタオルをかけて現れて出てきたネリア。 フレイ「ちょ、うわぁああああああああああぉおおおまえ!!なんつー恰好で出てきやがった!!///」 ネリア「呼ばれたから出てきたんだが…なにが悪かったのか?」 フレイ「わ、悪いも何も!!そんな恰好で出てくるお前の神経がおかしい!悪い!!///」 ガザフ「ね、ネリアちゃん…もうちょっと恥じらいがあってもいいんともうんだが…ほら、おれら男だけなんだし;」 ネリア「ぁあ、そうだのぅ…確かに、私が悪かった。…よし、これなら心配なかろう」 フレイ「身体を隠せばいいって問題じゃねーよ!///」 ネリア「そんなに鼻血を垂らしながらじろじろ見るでない……気持ち悪い」 フレイ「な、誰がそういうことさせてると思って――///」 ガザフ「と、とりあえず…ネリアちゃん、服を着替えてきてくれ。話はそれからだ」 ネリア「うむ……分かった」 女と話したこともないフレイにとっては女の裸を見るのも話すのも初めて。 そんなもんだからこれからの旅が色々な意味で辛そう、そう心に決めたフレイであった。 **************** 今度は服をちゃんと着てテーブルについたネリアは反対側の席につく二人を見て口を開いた。 ネリア「で、話とは何なのだ」 ガザフ「単刀直入に聞く。君の住む世界「スカイピア」は、本当に我々の住む世界「アスピア」の真上にあるのか?」 フレイ「は?何聞いて―」 ガザフ「お前は黙ってろ」 その質問を聞いたネリアは、二人の顔を見てこう言った。 ネリア「実は私もこの世界からきて、そのことに疑問があったのだ。私たちの世界からはお前たちの住む世界ーアスピアの姿が一望できるのだが…この世界に降りてから大変驚いてしまったのぅ」 ガザフ「この世界からはスカイピアの姿が全く見えない…そうだな?」 ネリア「あぁ…どうして見えないのか私はわからない。…これは一体、どういうことなのだ?」 ガザフ「俺にもさっぱりわからん…」 フレイ「そういうことがあるのか…俺も知らなかった」 ・・・・・・・・・・ ネリア「で、それだけか?」 ガザフ「ぁ、最後にもう一つ。君はどうしてそんなに死にたがる?何かわけがあるのならここで話してはくれまいか?」 ネリア「…ッ?!」 フレイ「それは俺も気になってる。なぁ、おれたちで良ければお前の悩んでること受け入れてやる。だから―…」 ネリア「お前らに話す気はない。なら私はさきほど交わした条件を取り消して死ににいくだけだ」 フレイ「…!おれはお前が心配で―!!」 ガザフ「よせフレイ!…いま急に話せと言ったのが悪かった。でも後から自分から話したくなったら遠慮なく話してくれ。俺たちは君を助けたい。この気持ちは何があっても変わらないからな?」 ネリア「…」 フレイ「…チッ」 またしても不穏な空気が漂う二人。 内心焦りながらも、ガザフは席を立ち上がって口を開けた。 ガザフ「よ、良し!これで話は終わりだ!お前らお腹空いただろ、今から俺が腕によりをかけてごちそう作ってやるからな♪」 フレイ「ぁ、ぁ…そういや帰ってきてからご飯食べてなかったな…腹ペコだぜ」 ガザフ「アリスタ誕生祭は明日までだから、明日はまた今日と同じ変装をしてこの街を出発するぞ!明日からの長旅に備えてたくさん作ってやる!ネリアちゃんは何か好きな食べ物はあるかい?」 ネリア「わたしは…肉なら何でも良い」 ガザフ「意外と肉食なんだな…飛空種族だからか?」 ネリア「関係ない、私がただ単に肉が好きなだけだ。あとデューリアもお願いする…ぁ」 デューリア…聞きなれない言葉を聞いたガザフとフレイは頭に?マークを浮かべてはネリアを見つめてくる。その気配を感じたネリアはしまった、という顔をして焦ったように口を開けた。 ネリア「こ、こっちにはない…食べ物のことだ。き、気にしないで、肉料理を頼む!!」 フレイ「ぁ、ぁあ…だってよ親父?」 ガザフ「お、おう!わかった!今日は豪華メニューだぞー!!」 二人は普段より豪華になりそうな夕飯に心躍らせているなか、ネリアは顔をうつむいて小さく言葉を口にした。 ネリア「デューリア…か。ウォード…どうか無事で…」 その言葉は、フレイの陽気な笑い声の中に消えていった。 第4話に続く。 [*前へ][次へ#] |