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物語
第11話 償いと後悔







とぼとぼと歩くフレイたちの視線の先には、金髪で腰まであるだろうか…長髪の美しい女性が、空を見上げて悲しい顔をしていた。
皆は気にせず前を歩いて会話をしている中、フレイは気になって足を止める。


フレイ
(なんだ…あのヒト、どうして空なんか見上げて…?)
ネリア
「どうしたのだフレイ?」
フレイ
「ぁ、いや…なんでもねェよネリア。…行こう」
ネリア
「……?おう…」


ネリアに話しかけられたフレイは、ネリアに心配させまいと止めていた足を動き出した。
そんなフレイに疑問を持ちつつも、ネリアはあまり気にせずフレイの後を追う。



りん
「ぇ…?!う、うそ……そんな…ッ!」


フレイたちの耳に、聞き逃しそうなほど小さく呟いたりんの声が耳に入った。
その声をした方へと振り向いてみると、フレイ達から6メートルほどの遠い距離にりんはいた。


アルヴォンド
「どうしたんや…りんちゃん?」
フィーネ
「…りん、ちゃん…?」
ガザフ
「なんだ…?」
りん
「ぁ……ぁあ……ッ」


恐怖と怯え露わにするりんの姿を見て皆は不安になる。
どうやら、何かを見て怯えているらしい。
りんが見ている視線の先には…


フレイ
(さっきの女の人……?)


フレイは気付いた。
先ほど自分が気にしていた、あの金髪の女性。
りんはそのヒトを見ているのだ…と。


フレイ
「大丈夫か、り―…」


フレイがりんに語りかけようとしたその時だった。


りん
「ハイリア…ッ?」


思わず聞き逃しそうなほどの小さな声で呟いたりんの言葉。
フレイはその声を逃すことなく拾った。
そして―…


???
「ぇ…?」


その、女性も。



???
「今…あんた、なんて言ったの…?」
りん
「ぁ…」


その女性のヒトは目を見開き、驚いたような表情をしてりんに向かってそう言った。
問われたりんは肩をビクつかせては、目を泳がせている。
明らかにりんの様子がおかしい。


???
「ねぇ…どうして、どうしてあんたがお姉ちゃんの名前を知ってるのよ!!あんた…お姉ちゃんの知り合いなの!?ねぇ、お姉ちゃんと逢った事があるの?!」
りん
「ぇ…お姉、ちゃん…ッ?」


皆はこの状況が理解出来ずにいた。
そして、この状況になった当事者―りんですら理解できずに困惑している様子だ。


???
「わたしはハイリアの双子の妹のマリアよ!」
りん
「双子の…妹…?!ハイリアに…双子の妹…ぇ、という事は…ハイリアは…天空人…だったの…!?」
マリア
「天空人…?何言ってるのあんた…―…ッ!ま、まさか…あんた……地上人…!?」
りん
「は…はい、私は地上人で…その、ハイリアの…友達…でした」
フレイ
(でした…?)


そのりんの意味深な言葉を聞いてフレイは疑問を抱く。
どうしてそう言うのか…その真意はなんなのか。
フレイだけでなく、他の皆も気になっている。


マリア
「でした…って…どういう意味なのよ…ッ?」
りん
「……ッ」


気まずそうに言葉に詰まった様子を見せるりん。
彼女は大きく息を吐くと、静かに…しかし弱々しく言葉を発した。


りん
「ハイリアは…6年前に…亡くなりました……ッ」
マリア
「え…」
りん
「……私が……ハイリアを、殺しました……ッ」
マリア
「…ッ!!」
アルヴォンド・イルフォンス・ガザフ
「な…ッ!?」
メル
「え…?」
ウォード
「まさか…ッ」
ネリア
「どういう事なのだ…?!」
フィーネ
「……ッ」
キィリル
「……」
フレイ
「りんが…友達を殺した…ッ!?」















同時刻。
場所は変わり、地上世界(アスピア)…首都ルイセンド王国、ルイセンド城内王室。
そこには、一人孤独に椅子に凭れ掛けているアイザンド国王の姿がいた。


アイザンド
「フフ…ッ」




ローリアンス
『何を言っているんだ…君』
アイザンド
『何を言っているも何も……私はいつでも本気だよ?シエル国王殿…♪』
ローリアンス
「……ッ」




アイザンド
「フフ…ハハ…ハハハハハ!!!!…くく…ッ、あの焦った声…いつ思い出しても笑いが出るよ…ッ」


「父上…」


アイザンドの前方から声が聞こえた。
笑いを止めてその声がした方へ顔を向ける。
そして先ほどまであざ笑うような表情から一気に優しい顔へと戻っていた。



アイザンド
「ぉお……遠征から戻ってきたのだな。―…逢いたかったぞラルク、我が愛しの息子よ」
ラルク
「ハッ…父上、1年振りです。只今戻りました」


ラルク…―ラルク・ハロウ・フェイ・ルイセンド王子。
彼は王子の身であるにも関わらず、自ら世界騎士の入隊を志願。
そして今、23歳という若さで世界騎士1番隊隊長に任命され、部下と共に世界を渡り歩き人々を見守ってきた。
彼は何事にも真剣に取り組み、種族に関係なく困っている者に対して手を差し伸べる…彼のその姿を見た者は世界騎士に憧れ、そして多くの者が入隊を志願してきたほどである。
そんな注目の的である彼が…1年前、突然遠征をしたいと志願してきたのだ。
父であるアイザンド国王から了承を得た彼は、すぐに部下と共に遠征に向かった。
そして…今日、こうして遠征を終え、ラルクは戻ってきたのである。


アイザンド
「随分と長い遠征だったのだな…一体何をしてきたというのだ?」


そう優しいトーンで、息子のラルクに向かって質問を投げかけた。
父に問われたラルクは口角をあげると、

―…チャキッ





アイザンド
「何の真似だ…ラルク」


息子に剣を向けられているというのに、驚く事もなく、表情を変えず問いかけるアイザンド。
そんな父に対し、ラルクは眉間にしわを寄せて少し悲しい表情を見せる。


ラルク
「見ての通りです…私はたった今、貴方を終わらせにやってきました」
アイザンド
「終わらせる…?はは…一体何を言っておるのだラル―」
ラルク
「とぼけるのもいい加減にしてください。……あなたの計画は此処までです。これ以上…多くの民の命を犠牲にするわけにはいきません」
アイザンド
「計画……犠牲?はて…何を言っているのやら…ッ」
ラルク
「こっちは全て知っているんですよ。貴方がグリュエル騎士団の行動を操っている首謀者であること、そして…そのグリュエル騎士団ですら利用していたことも…ね」
アイザンド
「……私を疑っているのかね?」
ラルク
「いいえ、貴方だと確信しております。…父上……いや、」










アイザンド
「………」
ラルク
「父上をどこにやったのだ……貴様…ッ!!」










マリア
「嘘……ウソよ!!お姉ちゃんが死んだなんて信じない…デタラメ言うんじゃないわよッ!!!!」


突然、姉の死を告げられたハイリアの妹マリアは、錯乱状態に陥っていた。


りん
「ウソではありません…わたしが…ハイリアを殺したんです…ッ」
マリア
「……―ッ!!イヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!いや…そんなのウソよ!!イヤァアアア!!!」



ショックのあまり頭を抱え込んで膝をつき、涙を流し叫び散らす少女。
それを見てりんは今にも泣きそうな表情をして見つめていた。
そんなりんを、皆は…フレイは見ていられなかった。


フレイ
「りん…ウソだろ?お前が殺したなんて…ウソ、だよな…?」
りん
「……ッ」
フレイ
「ウソだって言えよ…りんッ!!!」


嘘だと言わないりんに、フレイは動揺を隠せないでいた。
りんが「殺した」という言葉には絶対意味があるはず…そう信じて。


フィーネ
「フレイちゃん落ち着きなさい!りんちゃんは―」
フレイ
「分かってるよ!!…りん!オレは―…」


刹那、フレイに寒気が襲い掛かった。


フレイ
(なんだ…?嫌な予感がする…ッ?!)
マリア
「―…さない…ッ」


―チャキッ


フレイ
(まさか…アイツ…!?)
マリア
「許さない許さない許さない許さない許さない…ッ、ァアアアアアアアアアアッ!!!!!」
フレイ
「早く逃げろ!!りんッ!!!」
りん
「ぇ…?」



フレイは皆より早く気付いた。
そう、マリアが手にしていた小型剣に…―




マリア
「死ねェエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!!」



迫り来る狂気。



ガザフ
「な…?!ナイフを持ってる…しまったッ!!」
アルヴォンド
「りんちゃん!!!」
メル
「イヤァアアアアアアアアアアッ!!!!」


りん
(だめ…身体が……動かない…ッ)


―いや…このまま……いっそ死んで罪を償った方が……ッ―





『死ぬなんて絶対に許さねェぞ…りんッ!!!』


りん
(…ぇ)














暗くなる視界、生々しい音と鉄の臭い。
何が起きたのか、りんをはじめとした皆がこの状況を理解出来ずにいた。



フレイ
「やめろ…ッ、こんな事をしても…ハイリアは喜ばねェ…ぞッ…!!」
りん
「フレイ…さ…ッ!」
マリア
「なによ…なんで邪魔するのよ!!?あの女に罰を与えようとしてるのに…邪魔するんじゃないわよッ!!!!」

―グチッ!!

フレイ
「ぐぁッ…!!;」


完全に頭に血が上っているマリアはフレイの言葉に全く耳を傾けなかった。
そして彼女はフレイの胸部に刺さったナイフを更に力任せに深く刺していく。
更に刃の向きを変え…180度へ回すように内部を抉る。
刹那、バキバキっと言った嫌な音がした。
その瞬間、言葉にしがたい激痛が…フレイの身体を襲った。


フレイ
「ぐぁああああッ…!!!!」
りん
「いや…イヤァッ!!やめてください…ッ、いやぁああああああああああ!!!!」
マリア
「ふふ……これで、邪魔者はいなくなったわね…ッ」


顔と服中にフレイの返り血を浴びているマリアは、フレイの顔を伺おうと上目づかいに見つめる。
そして刺していたナイフを思い切り抜き出すと、多くの血が芝生に染み渡っていくのが見える。
それを見てマリアは彼の死を確信した。
―…が、



フレイ
「バカ野郎…ッ、オレはまだ……生きてる…ぜ…ッ」
マリア
「な…ッ?!ウソ…うそよ!どうして死んでないのよ!!!どうして…―」


マリアは恐怖する。
即死に値する傷を負わせたと言うのに、フレイは倒れずマリアを見つめて台詞を吐いたのだ。


フレイ
「オレはな…ッ、何があっても死なねェって…約束したんだ。その約束を…破るワケには、いかねェんだ…よッ…!」
マリア
「何よ…どうしてアイツを庇うのよ!!!あの女はお姉ちゃんを―」
フレイ
「りんはそんな事をするヤツじゃねェ!!」
マリア
「…ッ!」
フレイ
「オレは信じてる…りんは、ヒトを殺すような奴じゃねェって…ッ」
りん
「フレイさん…ッ」


フレイの真っ直ぐな言葉に、りんは痛いほど胸が締め付けられた。
彼はどうしてこうも真っ直ぐに自分を信じてくれるのだろうか…。
嬉しくもあり、時にそれは苦しくも感じる。


「スリープ!」
マリア
「何よ…アンタなんかに何が―…ッ?!」

――ドサッ…


何者かに呪心術「スリープ」を掛けられたマリアはそのまま力なく芝生の上へと倒れていった。


フレイ
「……ッ?」
キィリル
「安心して…彼女を眠らせただけだよ」
フレイ
「……そう…か…サンキュ、キィリ…ル……―」


―ドサ…ッ


フレイはホッとしたのと同時に意識がぐらつき、そして力なく芝生の上へと倒れてしまう。


ネリア
「フレイッ!!!!」


倒れたところを中心に血が広がっていく。
それを見た皆はフレイの身の危険を感じた。
真っ先にフレイへと駆けつけたネリアは、うつぶせになっている身体を起こし仰向けにするとフレイの顔を見つめた。


ネリア
「フレイ…しっかりするのだ!」
フレイ
「かふ…カハッ!!ゲホ…ハァ…ネリア…ッ」
ネリア
「馬鹿者、無茶ばかりしおって…ッ」
フレイ
「ハハッ…こうする事しか…オレは皆を守れないしな…これが、オレのやり方だ…―ゲホッ…!!」
ネリア
「私が応急処置をする…その間にりんは手術の準備を―」
りん
「………」
ネリア
「りん…?」


ネリアはりんを見ると、彼女は恐怖に支配された表情を見せていた。


りん
(ぁ……私のせいで……また…死んでく…ッ!)

『ごめん…あたし……もう限界なの』

りん
(いや…いやだ…ッ!)

『さようなら…』

りん
(怖い……誰かが目の前で死んでいくのはもう―)


「りんッ!!!!」

りん
「…ッ!!」


りんを呼ぶ大きな声に驚き我に返った彼女は、その声の主とやっと目を合わせる事が出来た。


りん
「フレイ…さ…ッ!」
フレイ
「大丈夫だ…オレは死なねェって……言った、だろ…ッ!」
りん
「……やめてください…ッ」
ネリア
「……りん…?」


りんは自らの手をきつく握りしめると、意を決して言葉を発する。


りん
「……そんな目で私を見ないでください!!失敗するのが怖いんですッ!私は…診て手に取ってきた人たちの命を全て救えたことはありません…そんな私を…ッ」
フレイ
「大丈夫だよ…オレはりんを信じてるから…オレは死なねェ…よ」
りん
「……やめてくださいッ!私を信じないでください!私は―」

「りんちゃん」
りん
「ぇ―…」



―パァンッ…!!!


ネリア・ガザフ・イルフォンス・ウォード
「なッ…!?」
フレイ・キィリル・フィーネ・
「…ッ!?」
メル
「ふぇ…?!」

りん
「アル…ヴォンド……さん…ッ?」
アルヴォンド
「…ッ!」


そう、りんの頬を思い切り叩いたのは紛れもなくアルヴォンドであった。
予想外の行動に皆驚く。


アルヴォンド
「医者が失敗を恐れてどないすんねん!」
りん
「…ッ!貴方に…私の何が…ッ」
アルヴォンド
「…辛かったやろな……きっと、せやかて救いたかったのに救えなかったんやからな…」
りん
「…ッ!」
アルヴォンド
「せやけどな…救えなかったんは、自分が一生懸命助けようと頑張った結果や。頑張ってダメやったならしゃあないやろ。りんちゃんの頑張りを…誰も責める奴なんかおらへん。むしろ…感謝しとると思うで…?」
りん
「…―」


らん
『自分を信じなさい。たとえそれが…失敗を恐れる自分でも…手術を不安に思う自分にせよ…負の気持ちも全て信じる事。これが、医者という仕事の使命なのですよ…りん』

りん
「おとうさん…ッ」



ネリア
「フレイ!しっかりするのだ…聞こえるか、フレイ!!」
フレイ
「ハァ…う…ッ」


イルフォンスの精霊アニマの精霊心術「キュアティフ」によって応急処置はしたが、出血が激しいかったため、フレイは出血性ショック症状を起こしている。


ガザフ
「だめだ…このままだと本当に危ないぞ」
イルフォンス
「りん!」
りん
「……ッ」


拳を強く握りしめるりんの様子を見たアルヴォンドは鼻で笑うと、


アルヴォンド
「なんやりんちゃん…もう一発かつ入れて欲しいんやったら―」
りん
「―…いえ、大丈夫です。十分…喝もらいましたから…」
アルヴォンド
「…さよか」
りん
「此処から離れましょう…人気のない所で手術を行います。それまで私が治癒心術をかけて応急処置をしています」
アルヴォンド
「はよ此処から離れるで!沙月りん先生の命令や!!」


皆はりんの言葉を合図に移動を始める。
フレイはガザフによって背中に背負われ、そして移動していく。
りんも続こうと止めていた足を動かす。
すると、ふと視界に倒れているマリアの姿が目に入る。


マリア
「姉…さん…ッ」


目から流れる一筋の涙。
それを見てりんは心臓に痛みが走る。
そして口を静かに開くと、


りん
「ごめんなさい…ッ」


小さな声でつぶやき、その場を後にした。













ネリア
「気持ちよさそうに寝おって…ったく」
ガザフ
「さぁて…今日も疲れた……俺は寝るよ」
ネリア
「皆はどうしたのだ?」
ガザフ
「もう寝たよ…ネリアちゃんも無理しないで休みなよ…では」
ネリア
「ぁあ……おやすみ、ガザフ…」


ガザフが部屋を出ていくのを確認すると、ネリアは小さなため息を吐く。
そして安らかに眠っているフレイの寝顔を見て、ネリアはフレイの右手を優しく両手で握りしめた。


ネリア
「馬鹿者…お主の行動にはいつもハラハラする。…自分の命を大切にしてくれ…ッ」











ウォード
「フィーネさん…こんな時間に起きてどうしたんですか?」
フィーネ
「あら…ウォードくん」


同時刻。
宿屋の外にあるベンチに腰かけていたフィーネを見つけてウォードは彼女に話しかけた。
すると、彼女はいつもの優しい笑顔を見せると、


フィーネ
「ちょっと寝付けなくて…」
ウォード
「!…そうですか…実は私も寝つけなくて外の空気を吸いに来まして…」
フィーネ
「そう…」


二人はそう会話を交わすと、ウォードはフィーネの隣に座って月を見つめた。
しばらく続く沈黙。
その空気を斬ったのは…フィーネであった。


フィーネ
「ウォード君…」
ウォード
「どうしたんですか…フィーネさん?」
フィーネ
「貴方…今、死にたいって思わなかった…かしら?」
ウォード
「ぇ…!?私はそんなこと思ってなど…!!」
フィーネ
「そう…よね」


そう最後に小さく弱々しい声でつぶやいたフィーネを見て、ウォードは疑問に思う。
いつものフィーネではない…咄嗟にそう思った。


ウォード
「どうしたんですか…何か体調が―」
フィーネ
「実はね…私、この世界に来てから…私の中に流れ込んでくる相手の記憶や過去や思っているモノを…本当とウソが混ざった見え方をするようになってしまっているようなの…ッ」
ウォード
「!」
フィーネ
「正直混乱してるわ…本当かウソかも判別出来なくなるなんて…ッ」


俯き悲しそうな表情を見せるフィーネ。
そんな彼女にウォードは微笑むと、


ウォード
「フィーネさん…本当だと思うモノを忘れてますよ…」
フィーネ
「え…?」
ウォード
「私たちの信頼と絆…これだけは嘘ではないと言えます」
フィーネ
「!…ふふ、そうね…私ったら一番重要な事を忘れていたわね」


笑っているフィーネを見てウォードはまた微笑む。


ウォード
「フィーネさんは本当に強いんですね…」
フィーネ
「あら…ここまで来るのに結構苦労したのよ?」
ウォード
「……と言いますと?」


再び訪れる沈黙。


フィーネ
「ふぁ〜…!眠くなってきたわね…私は先に寝てるわよ、ウォード君♪」
ウォード
「ぇ…ぇえ!?あ、お、おやすみ…なさい、です…ッ」
フィーネ
「おやすみ♪」


そう言うとフィーネは宿の中へと入っていった。
そして扉に背を預けて天井を見上げる。


『記憶に惑わされるな…目の前にあるすべてを信じろ』

フィーネ
「そうね…私ったら今更よね……。…気付かせてありがとう、ウォード君」




ウォード
「ハァ…」
ウォード
(ここまで来るのに苦労した…か)


『今までの奴らがそうしてきたんだ…そうするのが当然だろ』


ウォード
「規律…伝承…任務…そんなものは人を縛り付ける鎖でしかない…ッ」


そう言うと、空を見上げて月を見つめる。


ウォード
「過去に縛られるのもまた孤独……それを打ち破ってこそ…真の人生を歩めるものなのだ…ですよね、ネリア様」


優しい声で小さく呟くと、ウォードは大きな欠伸をし始めた。


ウォード
「眠たくなってきた…そろそろ私も寝るとするか…ッ」


そしてその言葉通り、ウォードは宿へ戻り床へと就いたのであった。











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