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物語
第9話 不安な心と闇の再来



第9話 不安な心と闇の再来









ガザフの視線の先には、フレイとウォード、ネリアとメルの2組が早速耳に付けた通信機を使って楽しんでいた。

フレイ
「おーい黒髪〜パフェたべてぇなー作れよ早く―」
ウォード
「な…ッ?!貴様…人に物を頼むには言い方ってものがあるだろう…ッ!」
ネリア
「メル、聞こえるか私の声が…!」
メル
「うん!聞こえるよネリアお姉ちゃん♪あはは、たのしいな〜♪」


騒がしい2組の姿を見たガザフは、呆れと同時に怒りが込み上げてくる。
そして我慢できずに「うるさい」と叱りつけるのであった。

叱りつけた後、ガザフはため息をついてフレイたちに背を向けてフィーネがいる所へとゆっくりと歩く。
そんなガザフの姿を見て、フィーネは小さく笑った。
笑うフィーネを見て、ガザフはまたため息をつくと、


ガザフ
「フィーネ…呑気に笑ってないで叱ってくれ。あいつらの行動を読んでいたんだろう?」
フィーネ
「あらぁ…たのしそうだから口をはさんじゃいけなと思って…ダメだったのかしら?」
ガザフ
「…黙って見届けることが時として悪い事もある…叱る時はしっかりと叱りつけないとだな…」
フィーネ
「いいじゃない…これからきっと…私たちに沢山の試練が訪れるわ…それまでは楽しむときは楽しんだり、笑う時は笑って…それでいいじゃない」
ガザフ
「…!…フッ、そうだ…な」


そうお互い会話を交わすと、まだ楽しそうに話している2組の姿を見ると、自然と笑みがこぼれた。


イルフォンス
「…」

みんなの一番後ろで立ち尽くしてるイルフォンスは、皆の姿を少し微笑んだ表情で見つめていた。

―カササッ

イルフォンス
「?!」

背後から聞こえた草木が揺れる音に反応し、反射的に音がした方へと振り向いた。











キィリル
「黎明へと導く破邪の煌めきよ…我が声に耳を傾けたまえ」

場面は変わり、すこし開けた平原と木々が溢れる場所で、皆は魔物と戦闘をしているようだ。
りんが展開しているドーム型のバリアの中に、アリア「リミッターソウル」を謳っているネリアと、リミッターソウルのおかげで少し術技が使用する事ができるアルヴォンドは、りんとネリアに守られながらも心術で皆の戦いを支援していた。
そんな3人に向かって鳥とオオカミの魔物が襲いかかろうとしていた。
―その時、

イルフォンス
「そうはさせない…!はぁあ…!!龍影衝閃ッ!!!!」
『フギャァアアアアアッ!!』


イルフォンスのおかげで3人に襲いかかろうとしていた魔物を全て撃退することが出来た。


キィリル
「聖なる祈り…永遠に紡がれん―…」
フレイ
「弧月閃!襲雷神剣!!とどめだ…襲爪雷神翔ッ!!!」


詠唱を唱えるキィリルの前に襲いかかろうとする2体の魔物を、気付いたフレイが攻撃を放ち見事に2体倒すことができた。


フレイ
「よしっと…ッ!皆離れろ!!…キィリル今だッ!!!」
キィリル
「―…光あれッ!!…グランドクロスッ!!!」


皆が特定の場所へおびき寄せ、軽く10体以上はいるであろう魔物に対し、キィリルは聖心術「グランドクロス」を唱えた。
すると空から、魔物たちがいる地面から巨大な光の矢が出現し、魔物目掛けて一気に突き刺さる。
そして眩い光を放った瞬間、大きな爆発を生み出し、大量の魔物を全滅することが出来た。
キィリルの力を見た皆は、驚きを隠せずにいた。


フレイ
「す…スゲェんだな…天使種族って…ッ!」
アルヴォンド
「せやな…これは良いもん見せてもろうたわ」
ネリア
「これでこの場にいる魔物はすべていなくなったな…?」
フィーネ
「気配が全くないから安心してちょうだい、皆♪」
メル
「うへぇ〜…メル…疲れたよ…ッ」
フレイ
「あ、すまねぇ皆…!今回復してやるからな…っと」


長期戦で体力や生心力(ヴィオゼーラ)を消耗し疲れている仲間の姿を見てフレイはすぐ駆けつけ、皆を集めると生心力(ヴィオゼーラ)回復心術「イノセント・ヴィオゼピリア」をかけていく。
だが、一人だけその中に混ざっていない人物がいた。
そう、イルフォンスである。


イルフォンス
「……」


仲間と離れた場所で俯いて佇んでいる彼は、ずっと…とある出来事について引っかかることがあり、戦闘中ずっと考え込んでいたのだった。
彼の脳裏には…長期戦の前に、彼の背後から何か音がし振り向いた時のシーンが浮かんでいた。


イルフォンス
(おかしい…あの時確かに、殺気と視線を感じたはず…あれは一体…ッ?くそ…気になって―)
『危ねぇ…イルッ!!!』
イルフォンス
「…ッ!!」


誰かが自分を呼ぶ声で我に戻ったイルフォンスは前を向いた瞬間、目の前に誰かの姿がいたことに気が付く。
誰かとは…そう、宝心種族であるフレイであった。
そして肉を断つ音と悲痛な叫び声が脳内に響き渡っていく。
そこでイルフォンスは認識した、魔物に殺されそうなところをフレイが助けてくれたのだ…っと。


フレイ
「はぁ〜…間に合ってよかったぜ…ッ!…怪我はないか…イル?」


安堵の息を漏らすと、フレイはイルフォンスの方へと向いて彼の目を見て心配そうにそう言った。


イルフォンス
「ぁ、ぁあ…ありがとうフレイ」


助けてくれたフレイに対し、イルフォンスは苦笑いを含みながらお礼を言う。
そのイルフォンスらしくない態度に、フレイは「どうしたんだ?」と言っているような表情を見せる。


フレイ
「そう…か、怪我がねぇなら良いんだ。ぁ…ところでよ!イルの生心力(ヴィオゼーラ)も回復―」
イルフォンス
「大丈夫だよ、生心力(ヴィオゼーラ)を激しく消耗するような戦闘はしてないから」
フレイ
「で…でもよ、なんかお前疲れてるような―…」
イルフォンス
「僕が?あはは…ッ!…本当フレイは心配性だね…僕は全然疲れてないよ」
フレイ
「そうか…なんか悩んでることがあったらすぐ言えよ?」
イルフォンス
「ありがとう…フレイ、言いたくなったら言うよ」


そう二人は会話を交わすと、イルフォンスは先に皆より前へと進んでいく。
彼の背中を見た皆は心配そうに見つめるのであった。





あれから歩いて2時間ほどは経っただろうか…だだっ広い草原から一変し草木が生い茂る森の中に皆はいた。
そして皆から少し離れ一番後ろで歩いているイルフォンスは、まだ何か考え込んでいる様子を見せている。

―ザッザッ…

イルフォンス
(なんだろう…この胸騒ぎは…ッ)


彼の脳内には、せわしなく心臓の音が響き渡っていた。


オリジン
「ど…どうしたんだ?イルぅ…ッ」


悩む彼を心配して我慢できず、丸いオーブである生心体で姿を現したオリジン。
オリジンにこれ以上心配掛けさせまいと、イルフォンスは優しく生心体に触れる。


イルフォンス
「オリジン…!…ごめんね、心配かけさせて…僕は大丈夫だよ」


そう言って優しく微笑むその彼の表情はどこか辛そうで…オリジンは安心出来ずにいた。
その時であった…――



『ぁーあ…此処が天空世界(スカイピア)かよ…たいして地上世界(アスピア)と変わんねェじゃねェか…ッ!』

―ドクンッ…!

イルフォンス
「…ッ?!」

背後から聞こえる声…それを聞いた途端、更に鼓動が早くなる。


『こんなもんかよ…ったくッ…!せっかく先祖代々生きてきたっていうこの大地に俺様が来たっていうのによぉ…がっかりだなぁ…おい』

イルフォンス
(この声…喋り方…そんな…ッ)


粘り気のある特徴的な声を聴いたイルフォンスは、脳裏にとある人物が浮かび上がる。
そして認めたくない事実を確かめる為に、恐る恐る、せわしなく脳内に響き渡る警告音と戦いながらゆっくりと振り向いていく。

そして―…


イルフォンス
「――…ッ!!」
『はぁ…来て損した―…ん?』


声がする方へと向いたイルフォンスは、その姿を見てすぐに驚き硬直してしまう。
いや…恐怖と怒りと動揺がない交ぜになった感情が、一気に彼へと襲い掛かり身体が硬直してしまった…と言った方が正しいだろう。
同時に、冷や汗が沢山溢れ出していた。


―ドクンッ…

イルフォンス
「どうして……ッ」


彼は…声を震えながら小さな声でそう呟いた。


???
「ん…お前…どこかで見た事あるよう…な…?」

イルフォンス
「う…嘘だッ…!」


イルフォンスの様子を先に気が付いたフレイは彼へと駆け寄っていく。


フレイ
「どうしたんだ…イル、顔青いぞ?」
アルヴォンド
「イル…?」
ガザフ
(…な、まさか…あいつは…?!)
りん
「あの方は…?」


二人の姿を皆は交互に見ると、心配そうに口々に漏らした。
ただ…ガザフとフィーネを覗いては…。


???
「!!ぁあああぁああッ!!!!お前……あのガキじゃねぇか!!!」
イルフォンス
「…そんな…僕は…ッ!」

ネリア
「お主…イルの友達…なのか?」


二人の様子を見かねたネリアはすぐさまその人物に質問を投げる。
質問を投げられたその人物は、急に肩を揺らすと大きく狂ったような笑い声をあげていった。
その姿に、皆は動揺する。


キィリル
「何がおかしいんだ…貴様」
???
「ハハ…は…ッ!友達ィ…?!ふざけるな愚か者めがッ!!!…いいか?耳の穴かっぽじって良く聞け…ッ!…あのガキはな…この俺様を殺そうとしたのだッ!!」

アルヴォンド・ガザフ・りん
「ぇ…ッ?!」
ウォード・ネリア
「なッ…!?」
フィーネ
「…イル…くんッ…」
メル
「イルお兄ちゃんが…おじさんを…ッ?」
キィリル
「………」







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