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物語
第28話 深まる謎と研究島ガルヴァン




翌日、早朝。


メル「フレイ兄ちゃん起きてぇえええ!!!!」
ガザフ「起きれぇえフレーーーイッ!!!!」






第28話 深まる謎と研究島ガルヴァン





皆が目を覚めてから30分経過したなか、フレイだけ未だに爆睡している。
先ほどからこのように起しているのだが、一向に起きる気配を見せないでいた。


フレイ「ん〜…むにゃッ…、まだ〜…あと30分ッ…」


そう呑気に舌ッ足らずで話すフレイの声を聴いていた、隣の居間のテーブルに腰かけている他の仲間。


アルヴォンド「さっきより分数増えてへん…?」
イルフォンス「ふふ…ほほえましいね」
りん「いつもは自分で起きるのに…今日は珍しいですね?」
フィーネ「どうやら昨日ネリアちゃんの事を考えてて寝れなかったらしいわよ、フレイちゃん」
ウォード「あのバカ、なにをそんな思い詰めて…」
りん「もしかして、フレイさん…自分がネリアさんを助けてあげれない事を後悔しているんでしょうか?」
フィーネ「守ってやるって約束したのに…そう彼の記憶が言ってるわ」


そうフィーネの言葉を聞いて、皆沈黙する。


りん「…皆さんに心配掛けないように元気に明るく振る舞っているんですね…」
ウォード「…フレイの奴、今まで口が悪い能天気バカだと思っていたが…ちゃんと私たちをよく見ていて、ちゃんと考えて、悩んでいる…良い奴なんだな」
フィーネ「そうね…フレイちゃんは人思いの優しい子よ。考えすぎるのがダメな所だけど…ね」
アルヴォンド「考えすぎてバカな行動せぇへんとぇえけどな〜…誰かさんみたく」


そうアルヴォンドは怒った表情をして、反対側の椅子に腰かけてコーヒーを飲む双子の兄のイルフォンスを睨んだ。
その様子に気付いた彼は含んだコーヒーを飲みこんでカップをテーブルに置くと、嫌味を含んでこう話し出した。


イルフォンス「おや、それは僕の事かな…“愛しのヒト”?まだ根に持ってるんだね」
アルヴォンド「だぁーーから!その呼び方イヤやって言うとるやないかァ!!;それにいちいち記憶消さんでも――」
イルフォンス「だってああしないと、君の事だから僕の後を追ってくるだろ?そして後先考えない君は頭に血が上ってグリュエル騎士団に余計な事を言って…。はぁ…記憶を消さなかったら君は今頃この世にはいなかっただろうね?」
アルヴォンド「ぅぐ…ッ!;ぁああもううるさいねん!!」
りん「アルヴォンドさんがうるさいです!!話の腰を折らないでください!」
アルヴォンド「…はい、ごめんなさい」


りんに注意されたアルヴォンドは、しょんぼりして手元にあるコーヒーを口にして黙りこくる。
それを見てりんは大きくため息をついて、再び先ほどの話題に戻って話を再開した。


りん「フレイさんはまだ記憶を全て取り戻しておりませんし…すべてを取り戻したとき、生心力(ヴィオゼーラ)が暴走しないか心配です」
フィーネ「そうね…いくら生術具(エテルナ)で生心力(ヴィオゼーラ)をコントロールしている役目を持っているといっても…許容範囲を超えるとその役目は失う…昨日のウォードくんのようにね」
イルフォンス「なるほど…イオナのあの実験物はそれを利用したんだな。生術具(エテルナ)はその術それぞれに適した量しか生心力(ヴィオゼーラ)を消費させないけど、暴走した生心力(ヴィオゼーラ)は生術具(エテルナ)が機能せず、爆大な生心力(ヴィオゼーラ)が心術の強さを強化させた…」
ウォード「そうか…だから元に戻った時、生心力(ヴィオゼーラ)が激しく消耗したせいで冷静な判断が出来なかったんだな。でも…フレイに怒られた瞬間…不思議と負の気持ちが無くなっていたんだ」
りん「それも…あのフレイさんの宝心種族となにか関係のあるんでしょうか…?」

イルフォンス「あるよ…宝心種族の特徴は、フレイ君のあの額の宝石…あれは生心力(ヴィオゼーラ)を生み出すものでね、いくらでも生成が可能なんだ」
りん「あ、そういえば…随分と前にガザフさんが言っていましたね」
アルヴォンド「そうやったっけ?」
りん「んもう…アルヴォンドさんったら!!」
イルフォンス「仕方ないよ…りん、アルはこういうのは昔からあまり興味がないし、人の話を聴かないおバカさんだから…ね♪」
アルヴォンド「はいはい…どうせ俺は役立たずデスヨーだ」
ウォード(ガキか貴様は;)


拗ねるアルヴォンドの様子を見て、心の中でそうウォードはツッコんだ。


イルフォンス「話を戻すね。詳しくは分からないけど…何らかの形で、相手が不足している生心力(ヴィオゼーラ)を補充することが出来る能力を持っているらしいんだ」




フレイ「そう…なのか?」


居間にはいつのまにか髪を下ろした状態な起きたばかりのフレイの姿がいた。


ウォード「!!おまえ…いつからいたんだ!;」
フレイ「イルが俺の種族の話をした時」
アルヴォンド「タイミングよすぎるやろ;」
りん「あれ?ガザフさんとメルちゃんは?」
フレイ「部屋掃除してるよ。…んで、さっきの話本当なのか?」
イルフォンス「ぇ、ぁあ…そうだよ」


そう答えるイルフォンスを見て、フレイは自分の額にある宝石に手を当てた。


フレイ「オレ…誰かを怒った時とかになると…この宝石が熱くなるんだ」
りん「そう…なんですか?」
フレイ「…昨日もウォードを説得していた時も…此処が熱くなった」
イルフォンス「…なるほど、もしかしたらその宝石が熱くなる時は生心力(ヴィオゼーラ)が作られて相手に注いでいる時のサインなのかもしれないね」
フレイ「なぁ…それ以外にも、この種族の事知ってるのか?知ってたら教えてくれ!!」


フレイは焦るようにそうイルフォンスに言った。
それを聞いたイルフォンスは


イルフォンス「ごめん…それしか知らないんだ」
フレイ「!……そう、か…」

アルヴォンド「フレイ君、イルよりもっと知ってるやつがおるやろ…なぁ?」


アルヴォンドは寝室の方を向いてそう言った。
その視線の先を向いてみると、掃除を終わらしたガザフとメルの姿があった。


アルヴォンド「知ってるんやろ…おっさん?」
ガザフ「何を話したのかと思えば…はぁ、俺はイルフォンスが言った事しか知らないぞ」
アルヴォンド「ウソ付くんやないで?俺とフレイのおふくろと親父と仲が良かったそうやないか?せやから…知ってて当然やと思うんやけど?」
フレイ「!!そうなのか?!」
ガザフ「…お前の言うとおり、確かにお前とフレイの両親とは親友だ。だが…俺は宝心種族の事はさっき話したこと以外知らないんだ。友達だからと言ってすべてを知っているとは限らないだろ」

アルヴォンド「あ!そや…おっさん、昔オルグユっちゅーグリュエル騎士団の黒幕とめっちゃ仲が良かったそうやないか」
ガザフ「……それがどうした」
アルヴォンド「それが今はめっちゃ仲が悪ぅなっとる…昔おっさんとオルグユに何があったんやろな〜」
ガザフ「あいつと俺は考え方が違った…ただそれだけだ」
アルヴォンド「……」
ガザフ「……」


二人の険悪な雰囲気を切ったのは、二人の間を塞ぐように立ったフレイだった。


フレイ「やめろよアル!…親父がこう言ってるんだ」
アルヴォンド「…ま、フレイ君がそう言うんならもう追求せぇへんけど……俺はずっと疑ってるからなおっさん」
ガザフ「……勝手にしろ、ガキが」


気まずい雰囲気が、また漂う。
そしてその空気を破ったのは…





―キィイッ…


自分の家に入ってきた、メルの祖父であった。



メルの祖父「ぉお…みんな起きたか」
メル「!じいちゃんどこに行ってたの?!」
メルの祖父「そうだ…メルよ、お前にこれを…」


そう言うと、ガザフの後ろに居るメルのところまでやってきてはメルの小さな手に何かを渡した。


メル「なにこれ…三日月の模様がついた腕輪?」
ガザフ「!!お父さん…これは…」
メルの祖父「これはのぅ…結婚記念日にガザフが手作りして作った腕輪をルーシィにプレゼントした大切な物なんじゃ。これを…常にお守りとして身に付けなさい」
メル「ママとパパの大切なもの…!…ッうん!」


そう微笑んで返事をすると、メルは自分の右腕に付けて嬉しそうに鼻歌を歌って喜ぶ。


ガザフ「これ…」
メルの祖父「あいつが喜んでいたからのぅ…死んだと知らせが来てから、家に置いていった腕輪を箱に入れて地面に埋めて保管したのじゃ…いつかこいつが大人になって渡すその時まで…な。でも今はこれをキッカケに、元に戻る為に使ってくれればと思う。…これはお前さんら二人の大事な思い出じゃから…のぅ」
ガザフ「……感謝します…」


そうガザフは言って深々と礼をすると、メルの祖父も続いて礼をした。


アルヴォンド「チッ…イライラすんねやけど」
イルフォンス「カルシウムが足りないんだよきっと」
アルヴォンド「じゃかしいわボケェ!!」


フレイ(俺の種族の力…誰かに生心力(ヴィオゼーラ)を送る力…か)
フレイ(!それじゃさっきの説明なら…オレはネリアに生心力(ヴィオゼーラ)を送っていたことになるよな?でもネリアは心術が使えてない…)
フレイ(俺は…一体何なんだ?なぁ…母さん、父さん…)
フィーネ「フレイちゃん」


悩むフレイの所に、フィーネが近付きフレイの肩に手を置くとそう言った。


フレイ「フィーネ…?」
フィーネ「焦っても何もうまくいかないわよ?大丈夫…すべてはきっとあなたの眠っている記憶が教えてくれるわ…信じる者に幸せはやってくる…そう言うでしょ?」
フレイ「…そうだよな、ありがとうフィーネ」
りん「フレイさん!一人で抱え込まないで私たちに相談してくださいね!私はフレイさんの友達なんですから♪」
ウォード「ぁあー…昨日は…その、ありがとう…な、私で良ければいつでも話を聴くぞ」
フレイ「りん…ウォード…!」
イルフォンス「僕はアルと違って冷静にアドバイスできるから…いつでも聞いてねフレイ」
アルヴォンド「なんやとイル!ったく…フレイ、なんでも話聞くで…いつでも呼んでや!」
フレイ「…イル…アル」
メル「メルも…フレイ兄ちゃんの話きくよ!パパの事の愚痴も聞くから!!」
ガザフ「メルの言うとおりだ…っておいこらメル!;」
フレイ「……ははッ!…ありがとう…皆…ッ」


皆に励まされ、フレイは目じりに涙を浮かばせて微笑んでは礼を言った。











メルの祖父「忘れもんはないかのぅメル」
メル「大丈夫だよ!んじゃ…じいちゃん、行ってくるね」
フレイ「ありがとうじいちゃん!雪熊カレー美味かったぜ♪また来るよー!」
メルの祖父「おう…いつでも遊びに来なさいな」
メル「行ってきまーす!!」


メルを始め皆もメルの家を出て手を振ると、それに応えてメルの祖父も手を振ってその姿を見送った。





フレイ「んで…家を出たのは良いけどよ…行く場所決まってないよな?
ウォード「確かに…ネリア様は一体何処に連れていかれたのだ?」


そう悩む皆に、イルフォンスが口を開けた。


イルフォンス「おおよそ見当はついてるよ、多分ネリアは…此処から南にある、この島……此処は研究島ガルヴァンに連れて行かれた可能性がある…此処はイオナの活動場所だからね」
フレイ「なぁ…ここまでどうやっていけばいいんだよ?遠いぜ…」
アルヴォンド「此処で俺とイルの出番や」
イルフォンス「今から君たちをガルヴァンまで一気にワープさせる」
フィーネ「あらぁ!とても早いわね〜♪」
りん「ワープ…初めてなので少し怖いです」
アルヴォンド「こわないで、安心しぃや〜りんちゃん♪」


そう軽く会話を交わした後、皆を挟むようにイルフォンスとアルヴォンドは立ち、そしてワープするための大きな魔方陣が出現した。


イルフォンス「目的地は…」
アルヴォンド「ガルヴァン!」


二人はそう言うと、魔方陣から出た淡い光が皆を包み込む。
そして皆の姿が見る見るうちに薄くなっていき……そして姿がなくなると魔方陣とともに淡い光も消えてなくなっていった。









―…研究島ガルヴァン


無事移動できた皆は、目の前の光景に驚いた。


フレイ「なんだ…ここ…!」


移動した場所は建物内で、無機質で若干暗めで埃くさい。



イルフォンス「どうやら手違いで中まで侵入しちゃったみたいだね;」
アルヴォンド「まぁこれで結果オーライなんやないのぉ?」
フレイ「?なんだこの扉…」


フレイは目の前にある扉へと近付いた瞬間、自動的に扉があいた。


フレイ「うわぁ!…ケホッ…」
イルフォンス「しまった…この部屋は!!;」


開いた際に溜まった埃が宙に舞い、思わず皆はせき込んだ。
そして目の前に広がる光景を見て、皆は驚愕する。










フレイ「な…ッなんだよ…これ…!」
りん「奥にもたくさん人が変な容器の中に!」
ガザフ「まさか…これッ…!」

イルフォンス「察しの通り…これは全部道具化された人たちさ…ッ!この部屋だけじゃない…他の部屋にもいる。ざっと万もの人がいるだろうね」
アルヴォンド「…最低やな…」


皆が道具化の現状を目の当たりにして驚いていた時だった、




???「誰…なの?」
フレイ「な?!!」


後ろを振り向くと、それはいた…



イルフォンス「やぁ…アニエスじゃない…か」
アニエス「イルだ…この人たちはだーれ?」
イルフォンス「この人は…えと…」
ガザフ「こいつ…確かっ…!」
アニエス「ぁ…貴方は…オルグユ様のお友達「だった」人…オルグユ様の敵だ。どうしてイルは敵と一緒に居るの?」
イルフォンス「……」
フレイ「なぁ…誰だよこいつ?」


フレイは目の前の幼い少女を指差してイルフォンスに聞いた。


イルフォンス「彼女はアニエス。グリュエル騎士団ナンバーXだ」
フレイ「ぇ…こんな小さいやつが?!」
アニエス「小さい言うなです…ムカつきますから。ねぇ、イル…どうして敵といるの…もしかして…イル、裏切ったの?」
イルフォンス「い、いや…彼らは僕たちの計画の邪魔をする奴らだよ、アリスタの涙…会議で聞いただろ?そいつらを捕まえて連れてきたんだよ」
フレイ「?!おいイルフォンスお前うら――ッ?!」


フレイの言葉を手で遮ったのは、アルヴォンドだった。


フレイ(?!)
アルヴォンド(し!静かに…此処でバレてしもうたら、ネリアちゃんの所まで行けへんなる……此処はイルのウソの通りにするんや)
フレイ(!)

理解したフレイは首を縦に振って答えると、塞がれた口を解放されて吸えなかった分、息をたくさん蓄えた。


イルフォンス「アリスタの涙のネリアがここに連れて行かれてる、イオナがやっている研究を見せつけたいんだけど場所を忘れちゃってね。案内してくれないかい?」
アニエス「…わかりました。では…案内します」


そしてアニエスと一緒に歩いて話しているイルフォンスに皆は後を付いていくのであった。


フレイ(ネリア…どうか無事でいてくれ…ッ!今すぐ助けに行くからな…!!)







第29話に続く

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