物語
第26話 旋律
「な、なんだよ…これ…ッ」
第26話 旋律
ガザフ救出を決意しメルの家を出てから3日後の、夕焼けでオレンジ色の光が灯されている夕方頃、
フレイたちはメルの家に戻った。…のだが
周囲の木々が倒れ焦げていたり、白い景色の中に赤い血のようなものが散らばっていた。
あまりの衝撃的な光景に、皆は呆然としてそれを見つめていた。
するとメルがみんなより先に前に出て、
メル「パパは…?じいちゃんは…お姉ちゃんとお兄ちゃんは…どこなの?」
イルフォンスは倒れている木々をみて調べると、
イルフォンス「この焦げ具合、そして血をみると、ついさっき出来たばっかりのようだね」
アルヴォンド「おい…これ洒落にならんで…ッ」
りん「ガザフさん!ウォードさん!!フィーネさん!メルのおじい様!!どこですか!!いたら返事をしてください!」
そうりんが叫んだ瞬間、
『避けなさい!!』
ネリア「な…この声は…―」
フレイ「ぐぁあああああッ!!」
どこからともなく金切り声が上がったかと思うと、後ろからフレイの叫び声が上がった。
皆後ろを振り向くとそこには―
ネリア「!?が、ガザフ?!!」
メル「パパァッ!!!」
そこには、ガザフがフレイの上に跨り首を絞めている光景だった。
フレイ「かはッ…がぁ…!!お…やじぃッ…!」
ガザフ「はぁ…殺す…コロスゥウウウウッ!!!」
メル「!パパやめてぇええ!!フレイお兄ちゃんを殺さないでぇええ!!!」
メルはガザフに近付き、フレイの首を絞める手を握ってそう呼びかけた。
メル「パパ目を覚ましてよ!!悪い夢から目を覚ましてぇえええ!!!」
フレイ「め、め…るッ…!」
ガザフ「ぅう…ッ、メル…?!生きてる…ッ?!…ぁあああああ!!!!!」
メルの姿を見た瞬間、ガザフはフレイの首を絞める手を離し、頭を抱えて叫びだす。
上半身を起こしたフレイは必死に肺に空気をいれようと咳き込んだ。
そこにりんが近付き、フレイの背中を摩っては「ゆっくり深呼吸してください」と言う。
イルフォンス「アル…今のうちだ、やるよ」
アルヴォンド「ぁあ…了解やイル!」
そう言うと、二人はガザフを挟むように立ち、8大精霊とオリジンを呼んでは、精霊たちの気をガザフに注ぎ込んでいく。
ガザフ「ぁあ…はぁ…ッ!!」
フレイ「お願いだ…親父、死なないでくれ…ッ」
メル「パパ…」
そして次第にガザフの様子は落ち着き、表情も苦しい顔から安らかな表情へと変化し、そして静かに白い雪の地面へと倒れていった。
それを確認が取れたアルヴォンドとイルフォンスは注ぎ込むをやめて、お互い目を合わせると安堵した表情を浮かべた瞬間、力を使い慣れていないアルヴォンドは倒れかけたところを素早くイルフォンスが受け止める。
イルフォンス「大丈夫かアル!」
アルヴォンド「あはは…もうちょっと力付けなアカンな…ッ」
メル「ね、ねぇ…パパはコレで大丈夫なの…?」
イルフォンス「大丈夫だよ…安心して」
イルフォンスはメルの頭をくしゃくしゃになでてそう言うと、メルは張り詰めた糸が切れたようにボロボロに大粒の涙を流してはガザフを抱きしめた。
メル「パパァ…パパァ〜!!」
フレイ「良かった…親父…ッ」
この場にいる皆が安堵した表情を浮かべる。
りん「ところで…メルのおじい様とフィーネさんとウォードさんは一体どこに…」
???『来たか』
『『?!!?』』
急に聴こえてきた声に皆が驚いてすぐ、ネリアは何かを察したのかフレイとアルヴォンドたちの前に立ち塞がる。
そしてなにかが、ネリアの前に現れた。
それは―…
ネリア「な、なんだ…ウォードか…驚かせるでな―」
「ネリアちゃん逃げて!!」
ウォード「許さない…」
ネリア「ぇ…?!」
―ドスッ…!
フレイ「ぇ…?」
ネリア「かはッ…?!」
皆は目の前の光景が信じられなかった。
それは…ネリアのみぞおちを思い切り殴るウォードの光景だった。
ウォードらしからぬ行動に皆唖然とする。
みぞおちを殴られたネリアはそのまま意識を失い、彼女を肩に軽々とウォードは担いだ。
ウォード「…」
フレイ「おい…ウォード?お前何やってんだよ…ッ」
りん「ウォードさん…嘘ですよね…?」
イルフォンス「!まさか―」
???「きゃはひゃ!!よくやったね〜白黒くん!」
女の声が聞こえたと思った瞬間、ウォードの後ろから表れてきたのは見知らぬ顔。
フレイ「誰だお前…ッ!」
イルフォンス「やっぱりね…彼女はイオナ・カンバルト。グリュエル騎士団ナンバーUで…気持ち悪い奴さ」
イオナ「うわっはぁ〜どうしてそこにイルがイんの?!ぁ、なに、おままごと?!!きゃひゃは!!おもしろそ〜!」
アルヴォンド「うわ…ホンマに気持ち悪いな…ッ;」
イオナ「うひゃ!褒めてくれてありがとう〜眼鏡〜」
アルヴォンド「褒めとらんわ!!;」
イルフォンス「イオナ…守護騎士の彼になにをした」
そのイルフォンスの言葉を聞いた瞬間、急に甲高い笑い声を上げるかと思うと、
イオナ「なぁ〜に〜?ただ実験してみたんだちょ!」
りん「実験…?!」
イオナ「僕の最高傑作の玩具をね〜試したんだ!そしたら成功したの!!な!?凄いっしょ♪」
フレイ「何をしたのか答えろよ!!」
イオナ「えっへへ〜〜特別におしえてあっげりゅ〜♪じつはね〜白黒君の腕に針を打ったの!打たれたヒトはボクの命令通りに動く玩具になるんだー!!元に戻るのもボクしかできないんだよ♪どう?!凄いだろ!!」
りん「酷い…ッ」
説明し終わったイオナは、ネリアを肩に軽々と担ぐとにやりと笑みをこぼして、
イオナ「んじゃ…ボクはさよならするね〜」
フレイ「!ネリアを離せ!!」
フレイはネリアを救おうと立ち上がりイオナの元へと駆けつけていく。
イオナ「最後の命令だよ白黒くん!あいつらをボッコボコだよ〜ん!では、バイビー♪」
フレイ「!ネリアァアアアアアアアアッ!!!」
イオナは空間心術“ワープ”を出して、フレイは目の前でイオナとネリアの姿が消えていくのを見せ付けられる。
そしてフレイの視界には白い景色が、
フレイ「ウォード…?!」
ウォード「殺す」
りん「避けてくださいフレイさん!」
振り下ろされるウォードの大剣をフレイは見つめることしか出来ず、避けることが出来なかった。
殺される、そう思った。
???『セイント・バブル!!』
フレイ「!?」
ウォード「ぐぁああああッ…!」
聞き覚えのある声が聞こえた瞬間、水心術“セイント・バブル”が出現し、数多の大きい水泡をウォードを容赦なく攻撃する。
攻撃を食らったウォードは苦痛の叫び声をあげて振り下ろす剣を止めて後ろに体をよろめいた。
その隙にフレイはバックステップをしてウォードのそばから離れた。
そして先ほど術を放った本人が、ウォードの後ろにいた。
フレイ「!フィーネ!!」
フィーネ「良かったわ…ぎりぎり間に合ってッ…」
りん「どこにいらしたのですか?!」
フィーネ「説明は後よ!まずはウォードくんを元に戻さないと…本気で戦わないと殺されるわよ!!」
フレイ「元に戻すって…どうすりゃ良いんだよ!!;」
フィーネ「あのイオナって子の記憶を読み取ったんだけど、それによると彼を戦意喪失させると元に戻るらしいわ」
りん「戦意喪失って…」
イルフォンス「つまり、彼を死ぬ直前まで追い詰めないと元に戻らないってことか…イオナらしいよ…ッ」
フレイ「そんな…オレ…仲間を殺すなんて…ッ」
フィーネ「フレイちゃん!みんな!!気をしっかり持ちなさい!!!その気で戦わないと貴方たちが死ぬわよ!彼を殺さない程度にやるわよ!!」
フレイ「くそッ…!!」
そうフレイは叫ぶと、背中の剣を手にとる。
りんも決意をして背中の長刀を手にし、続いてイルフォンスも節剣を手にし、メルも手に杖を手にして臨戦態勢に入る。
アルヴォンド「すまんな皆…ッ、俺は参加できひんで…ッ;」
イルフォンス「気にしないで、アルはガザフさんを看ていてね」
アルヴォンド「うぃーす…!;」
フレイ「いくぞ…皆」
ウォード「殺す…殺す…コロスウゥウウウウウウウッ!!!!!」
りん「来ます!!」
フレイ(…ネリア)
フレイは心の中でネリアを気にしながら、ウォードとの戦いを始める。
―シュン
場所は変わり、イオナがワープした場所は、どこかの研究室。
肩に担いでいるネリアを見ては甲高い笑い声をしていると、彼女の後ろから人影が現れた。
イオナ「うひゃひゃ…ぉ〜!オルグユじゃん!!言われた通り、このオレンジつれてきたよー!!」
オルグユ「ありがとうイオナ、感謝する。早速準備を始めてくれ」
イオナ「おいっさ〜!!うひゃひゃ〜楽しみ〜♪」
敬礼し、そう楽しそうにスキップしながらネリアを担いで違う部屋へと入っていった。
それを見つめて、オルグユは口角を歪めては大きく笑い始めた。
???「オルグユ様…」
そんなオルグユの背後から聞こえてきた声。
笑うのをやめてその声の主の方へと後ろを振り向いて見つめると、オルグユは微笑んでは頭をなでて、
オルグユ「どうしたんだいアニエス…怖い夢でも見たのか?」
アニエス「いいえ…。オルグユ様、なんか嬉しそう…だから、アニエスも嬉しくて」
オルグユ「そうか…ぁあ、嬉しいよ。理想の計画に近づいていってるからね…」
アニエス「オルグユ様の願いはアニエスの願いです…」
そう言うとアニエスはふわりと笑みを浮かんだ。
オルグユ「そうさ…忌々しい種族と…この世界とさよならするんだ…」
―全てを、リセットするために…ね
27話に続く
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