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物語
第21話 再会、そして…




フレイ「メルの母さんで、親父の知り合いのルーシィ…?」


目の前にいる女性を見て、フレイはそう呟いた。
だが、彼女の瞳は光も光景も何も映し出されていない。
何かがおかしかった。


りん「うそ…あのルーシィっというお方…変です…!」


りんは驚いた表情を浮かべて、そう言った。



ウォード「何か分かるのか…!?」
りん「あの人…生心力(ヴィオゼーラ)が見えないんです…!」

フレイ「生心力(ヴィオゼーラ)が見えない…?―!」
ネリア「まさか…!」
フィーネ「ウソ…あれが道具化…ッ!」
りん「あれが…道具化…!」


メル「ママ…?」











第21話 再会、そして…











ガザフ「ルーシィ…お前…死んだんじゃなかったのか?!」
フレイ「死んだ…?っていうか、親父とメルのかあさんは一体どういう関係なんだよ?!友達か!?」
ガザフ「!ぁ、まぁ…友達…だ」
メルの祖父「!おぬし…どこかで見たことがある顔かと思ったら…ガザフではないかッ…!!」
ガザフ「…お久しぶりで―ッ?!」


ガザフはそう言い終わる前に、メルの母ルーシィは娘に向かって闇心術「ブラッディソード」を発動した。


フレイ「しまっ―!!」
メルの祖父「メル逃げるのじゃ!」
メル「ぁ…」
メル(どうしよう…身体が動かない…ッ)







―ザシュァアアアア!!





メル「…?」


―ズザァアアアッ


フレイ「お…親父!!」
ネリア「ガザフ!」


皆が見たのは、メルにルーシィの術が当たる直前、ガザフがメルを抱いて術からかばい、左に吹き飛ばされ、大きな木の幹に背中を強打してそのまま前のめりへと倒れてしまう光景だった。
メルはガザフの下敷きになり、何が起こったのか理解できない表情を浮かべ、そしてガザフを見つめる。



メル「おじさん…?」
ガザフ「がふ…かはッ!!大丈夫か…メル…ッ?」


そう呟くと、ガザフは意識を失い、力なく顔を雪の中に埋もれた。
メルは続けて話しかけようとしたが、自分の身体と真っ白い雪に染みていく赤を見て、言葉を失った。


メル「…ッ!」
ガザフ「…」
メルの祖父「ワシは傷が浅いから死にはせん!先にあやつを治療するのじゃ!!」
りん「は、はい!!」


メルの祖父に治癒術を掛けていたりんは、命令に従ってガザフの元へと駆けつけ、すぐに治癒術をかける。
下敷きになっているところを助けてくれたりんにお礼を言うことも忘れ、メルは自分の身体に付着しているガザフの大量の血を呆然と見つめていた。


ルーシィ「…」
フレイ「あ、待て!!」


フレイはどこかへ行こうと後ろを歩くルーシィを見て追おうとしたが、目の前で彼女は消え去っていった。


フレイ「チッ…くそっ!!」
りん「ガザフさんしっかりしてください!!わたしの声が聞こえるのなら指を動かしてくれませんか?!」


りん呼びかけに対して、ガザフは答えなかった。
その様子を見てりんは顔を曇らせた時だった、


メルの祖父「あやつだけは死なせちゃいかん…!ガザフは…













メルの父親なんじゃから…なッ…!!」
りん「ぇ…?!;」
メル「おじさんが…メルの…パパ…?」
フレイ「ぇ…んじゃ…ルーシィっていう人と親父は夫婦で…メルは親父の娘…ってことか…?!」
メルの祖父「そうじゃ…運命とは皮肉なものじゃのぅ…ッ」


突然次々と告げられてメルは動揺を隠せないでいた。
当然だ、しかもまだ幼い12歳の子供にはまだ重すぎる。


ネリア「酷い…ッ」
ウォード「そうか…だからガザフさんはメルのそばを離れないで看病していたのだな」
フィーネ「久しぶりに出会った娘ですもの…心配になるわ」

そう呟いた皆を余所に、メルは目を覚まさないガザフを必死に揺すり始める。


メル「パパ…死なないでよ…パパ…パパァ!!」
りん「メルちゃん…ッ!」
メル「せっかく逢うことが出来たのに…死ぬなんて嫌だよぉ!!嫌…パパァ!!」


一心不乱に大粒の涙を流して叫ぶメルの声を聴いて、りんはそっとメルを優しく抱きしめた。


メル「おねえちゃん…?」
りん「私を信じてください。メルちゃんのお父さん…私たちの仲間を絶対に殺させはしません!私は医者です…信じてください」
メル「ほんと…?約束する…?」
りん「約束です」
メル「ぅん…信じる…約束する!パパを死なせないで!!」


メルとりんは指きりをして約束をすると、りんはメルを解放しては立ち上がり、


りん「ウォードさんフレイさん!ガザフさんをメルちゃんの家の中に移動おねがいします!メルちゃん、おじい様、ベッドと要らない布を貸させていただきます…手術を行いますので」
フレイ「了解!」
ウォード「承知した」
ネリア「私は何をすればよい?」
フィーネ「私も手伝うわよりんちゃん♪」
りん「お二方はメルのおじい様を家の中に連れてきてください。メルちゃん…たくさん布を探して私にくださいませんか?よろしくおねがいします」
メル「…ッ、うん!」















ガチャッ…

フレイ「!りん、親父の容態は…ッ?!」


手術を始めてから2時間後、メルの部屋の扉を開ける音がし、扉の方を見ると手術を終えたりんの姿だった。


りん「出血が酷く傷も深かったのですが、幸い致命傷には至らず一命を取り留めました。メルちゃんとフレイさんの血を頂いたおかげです」
フレイ「はぁ〜…ッ、良かった…!すげぇよりん!本当にありがとう!!」
りん「…」
ネリア「…りん?」


顔を曇らせるりんの表情を見て、皆は心配する。


りん「でも…ひとつ問題が…」
フィーネ「問題…?」
りん「はい…どうやらルーシィさんが放った心術は何か効果があったらしくて、ガザフさんは毒に似た症状があらわれているのです。その証拠に高熱が…ッ」
ウォード「普通はパナシーアボトルを飲ませれば治るはずだが…それでは効かない特殊なモノなのか?」
りん「毒ならこのような短時間で一気に高熱になるような事は起こりません。私には何なのかさっぱり…ッ」

メルの祖父「蝕心(ブラジェスト)…」
フレイ「?!」
メルの祖父「ルーシィが放ったのはエルフの中で最も禁忌な呪術と恐れている「ブラッディソード」。攻撃を受けた者は、高熱とともに辛い過去を悪夢として永遠に見せられ、生心力(ヴィオゼーラ)を暴走し、最終的には生心力(ヴィオゼーラ)を消滅、生きる屍と化す大変恐ろしい魔術なのじゃ」
ネリア「…そんな恐ろしい術があるだなんて…ッ!」
フレイ「ちょっと待てよ、ルーシィってやつは道具化されたことで生心力(ヴィオゼーラ)はもう消えてるんだよな?だったらなんで心術を使えるんだよ!おかしくねぇか?!」
メルの祖父「エルフは心術とはまた別の力の“魔力”が備わっておるのじゃ。その魔力を使って行われる術を“魔術”という。どうやら魔力は消されなかったようじゃのぅ…しかし」
メル「おじいちゃん…パパは…死んじゃうの…?」
ウォード「何かほかに助かる方法はないのですか!?」


そう皆の質問に対し、メルの祖父はこう言った。


メルの祖父「この森から西に進むと、エルフのみが住む街ノエルがある。そこに行けば何か助かる手がかりはあるはずじゃ」
フレイ「エルフが住む街、ノエル…」
メル「…ッ!メル、パパを助けにノエルに行―」
メルの祖父「行ってはいかん!お前が行ったらハーフエルフだという事がすぐにバレてお前は邪魔になるだけじゃ!!」
メル「どうして?!どうしてハーフエルフはいけないの!!どうしてなのおじいちゃん!」
メルの祖父「言ったじゃろ、エルフは血筋に厳しいと。半端者が大嫌いなのじゃ」
メル「じゃぁ…おじいちゃんは私の事が大嫌いなんだ。私なんか生まれちゃいけなかったんだ!!」


―パァアアン!

メル「…ッ!」
メルの祖父「二度とその言葉を口にするんでない!!誰がいつお前を嫌いと言ったんじゃ!だったらワシはお前と住んでおらんわ馬鹿者!!!」
メル「…ッ、ふぇ…ッ」
メルの祖父「ぁ…ッ!す、済まないメル…―」
メル「大嫌い…おじいちゃんのバカァアアアアアアッ!!」
フレイ「あ、メル待てよ!!」


泣いて家をいきなり飛び出したメルを、フレイは追いかける。
そんな二人を呆然と立ち尽くしてメルの祖父は見つめていた。



メルの祖父「はぁ…」
りん「私もヒュニマと意姿種族のハーフなんです。…そんなにハーフは疎まれるのですか…?」
メルの祖父「そうか、嬢ちゃんは意姿種族のハーフか。いや…エルフだけじゃよ。半端者をここまで嫌う種族というのは…同じ種族ながら恥ずかしいわい」
フィーネ「父上から聞いたことがあるわ。エルフは他の種族とは違って特別な力がある。それを恐れてエルフは他種族から疎まれている。だから北のこの地に住みかを作って住んでいる…っとね。それなのに…」
メルの祖父「そう、エルフはエルフの種族以外を憎んでいるのじゃ。かつて大昔にエルフは酷い迫害を受けていてな、その恨みが深く根付いておるのじゃ。じゃから、エルフ以外の血を受け継いだハーフエルフは汚れた血と称し、また迫害を生む…これじゃ同じことの繰り返しじゃ。皆同じ種族なのに…嫌な世の中じゃのぅ」

ネリア「同胞同士の争いか…醜いものだ」
ウォード「同じ種族なのに…これも蝕死力(ブラジェーラ)のせいなのでしょうか?」
ネリア「違うとも言い切れないが…恨みは恐ろしいという事だけは分かるな」
ウォード「ぇえ…そうですね」
















場所は変わって、メルの家から少し外れにある湖にメルはいた。
座ってぼんやりと雪だるまを作っている。
そこにフレイが後ろからやってきた。


フレイ「やっと見つけた!って…うわぁ〜ここ綺麗な湖だな!メルのお気に入りの場所か?」
メル「フレイ兄ちゃん…!うん…此処にいるとなんだか落ち着くの」
フレイ「そうか!隣、いいか?」
メル「うん…」


そうメルの了承を得たフレイはメルの左よこにある大きな石の上にある雪を十分に払ってからゆっくりと腰かける。
しばらく1分くらいは無言が続いた。
その空気を切ったのは、フレイ。


フレイ「いいよな〜メルって。かあさんととうさんがいるし…うらやましいぜ!」
メル「うん、やっぱり生きてた…うれしい。フレイ兄ちゃんは…いないの?」
フレイ「俺の両親は…殺された…と思う」
メル「ぇ…いないの…?でも、思うって…」
フレイ「俺さ、5歳から前の記憶が無いんだ!でも最近少しずつ思い出してきて分かったんだ。誰かに殺されたかもしれないって」
メル「ごめん…お兄ちゃん」
フレイ「謝るなよメル!;俺が勝手に話してるだけだからさ!」
メル「悲しくないの…辛くないの?寂しくない?」


メルの直球な質問に対して、さっきまでの笑顔が曇った表情へと変わった。


フレイ「そりゃ…怖いし辛いし、色々と押しつぶされそうで死にそうだよ…正直言ってさ」
メル「ぇ、フレイ兄ちゃん死ぬの?!いや、死なないで!!」


そう焦った様子でメルはフレイに言うその姿をみてフレイは、笑顔を見せてはメルの頭を優しくなで、


フレイ「でもさ…こうやってメルみたいに、俺を心配したり…怒ったり…悲しんでくれる人がいるから、俺は怖くもないし寂しくなくなるんだ」
メル「フレイ兄ちゃん…」
フレイ「皆が俺に生きてほしいって想っている限り…俺は、死ぬような馬鹿な真似は絶対しない!!誰だって生まれたその瞬間から生きる権利は対等に与えられている。死んでい良い命なんてないんだ!」
メル「…」
フレイ「だからさ…メル、一緒にノエルに行こう!もし何か言われたら俺がガツン!って言ってやるからよ!!…お前の父さん、助けてやろうぜ?自分の手で…さ」


そうフレイは言うと、メルに手を差し伸べる。
その手を、メルは笑顔を見せて握りしめた。


メル「うん!ありがとうフレイ兄ちゃん!」
フレイ「おう!絶対親父は死なせねぇぞ!!」
メル・フレイ「おーーー!!!」



そう心に決めた二人は、すぐにメルの家へと戻り、メルはかたくなに行くと言うのに対して、メルの祖父は「勝手にしろ」と言い、無理やりな感じではあるが許可を得てノエルへと向かうことになった。


フレイ「皆で行くのもあれだ、二手に分かれて残る組と行く組に分かれて行こう」
ネリア「どうするのだ」
フレイ「まずはおれとメルが行くことは決まってる。あとは二人だけど…」
フィーネ「なら。私が残ってガザフさんを見守るわ」
ウォード「!なら私も残ります!!」
フレイ「なら決定だな…黒髪、フィーネ、留守番よろしく頼む」
ウォード「誰が黒髪だ!貴様に言われなくてもきちんと留守番をする!」
フィーネ「大丈夫よ〜気を付けて行ってらっしゃい、皆♪」

メルの祖父「4日間までの間に戻るように。じゃなければもう手遅れになってしまうからの。よろしく頼んだぞ」
フレイ「ぁあ!必ず助けてやる!!行くぜ皆!」


フレイ・メル・ネリア・りんの4人はメルの家を後にする。
向かうはエルフ種族が住む街、首都ノエル。
そこにガザフが助かる手がかりは見つかるのだろうか…







第22話に続く





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