物語 第18話 紅雨 ―…コツッ…コツッ ローリアンス『やぁ、天空神様…牢獄の居心地は?』 薄暗く土臭いこの牢獄、その中には後ろ手に手錠に縛り付けられているネリアの姿がいた。 ネリア『…貴様、私を捕まえて何をする気だ』 ローリアンス『言っただろ?いずれ分かるって…んじゃ』 −パーティの始まりだ− 第18話 紅雨 『イヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!!!!!!』 ―グチャグチャ…ッ ローリアンス『ふふ…良い声だね…!ハハハハハ!!!』 ネリア『や…やぁ…ッ!』 ネリア「私は牢獄されてから多分1か月は経ってはいないだろう…ある日、ローリアンスの奴が私に見せたいものがあると言ってやってきたのだ」 ガザフ「見せたいもの…?」 ネリア「私を護ってきた…守護騎士たちだった。そのうちの一人を毎日…一日も欠かさず…私の目の前で処刑していったのだ」 りん「――ッ!!!??」 フレイ「…ぇ…ッ?!」 ネリアの告白を聞いて、フレイは今まで無表情だった顔から驚いた顔へと一変し、顔をネリアの方へ向けて彼女を見つめた。 ガザフ「…狂ってやがるぜ…ッ」 ウォード「…ぇ、それでは…」 ネリア「ぁあ、お前の両親…いとこ…甥姪…親戚…友達…私に優しくしてくれた者…すべて…私の目の前で無残な殺され方をされた…シエル軍によってな…」 ウォード「―…ッ!!!!!;私はてっきり…捕まったのは私だけなのかと…そんな…ッ」 ネリア「…恨むなら恨んでも構わないぞ…私のせいで死んだのだからな」 ウォード「な、私はネリア様を恨みません!これはネリア様のせいではない…あの国王のせいだ…ッ」 ネリア「確かにそうだが…私は、そうさせた原因だ…私は」 りん「そうです、ネリアさんのせいではありません!!悪いのはそのシエル新国王の方です!!」 ガザフ「そうだ、嬢ちゃんのせいじゃない…何も君が責任を負う事はないのだ」 ネリア「りん…ガザフ…!」 フィーネ「ネリアちゃんが語っている時にその内容を映像で見させてもらったけど…これは相当ひどいわ…辛かったでしょ?よく堪えたわね…」 ネリア「…ありがとう。話にはまだ続きがあるんだが…最後の処刑…それがウォードだったんだ」 ウォード「それは知らないまま…私は言われるがままにネリア様のいる牢獄へとネリア軍の兵士に連れていかれたんだ」 兵士1『さぁ、お前の主がいる牢獄へとついたぞ』 ウォード『すまない、最後の頼みとして…ネリア様と二人きりで話をさせてもらえないだろうか…1分だけでいい。お願いだ』 兵士2『…まぁ、それくらいなら構わない。ほら、最後に話してやれ』 ウォード『ありがとう…』 ―キィイ… ウォード『ネリア様…―ッ!?!』 牢獄内に入ると、異臭が私の鼻を突きました。 今思うと、それは今までネリア様の目の前で殺されてきた関係者たちの血からの異臭だったんだと思います。 それを我慢しながら奥の方へと進むと、私は衰弱しきったネリア様を発見しました。 ウォード『ネリア様!』 ネリア『ウォード…なのか?』 ウォード『…ッ今すぐここから出ましょう!』 私はすぐネリア様の腕に付けてある手錠を外して、抱きかかえて心術で壁を壊して城の外へと逃げました。 それをシエル城の方も理解し、慌てた事でしょう。 私はシエル王国から外れた天空へと逃げ、下に見える地上世界(アスピア)を眺めて決意したのです。 ネリア『ウォード…なんて事するのだ!こんな事したら―…』 ウォード『ネリア様…』 叱るネリア様を無視して、私はネリア様を地上世界(アスピア)の方へと落したのです。 主の無事を祈って… ネリア『ウォー…』 ウォード『先に地上世界(アスピア)へお逃げください。私は後から追います…地上世界(アスピア)で逢いましょう…』 ネリア『ウォードォオオオオ!!!!』 ネリア「私はそれからは、ウォードの想いを無駄にしてはいけないと思い、この世界へとやってきて…そして降りた森をさまよい歩いていたら…フレイたちに出会ったというわけだ」 ガザフ「なるほど…ウォードはその後どうしたんだ?」 ウォード「私はその後に故郷でもあるガーディアンへと向かい、これを取りに行ったのです」 ネリア「な、それは…!」 りん「なんですか…これ?」 ウォード「これは我々の土地ガーディアンに代々伝わるペンダントだ。今は掛けるひもが取れてしまってペンダントではなくなったがな。ネリア様がいつも肌身離さず持っていたのだ」 フィーネ「代々伝わるというのは?」 ネリア「よく分からないが…それを付けていると守られている感じがしてな。それにこれは…母上の大切なものなのだ…ありがとうウォード」 ウォード「いいぇ…さて、話を戻します」 ウォード「そのペンダントを取りに行った後、ネリア様に続いて地上世界に降りようとしたところにシエル軍がやってきたのだ。奴らは此処にいると踏んだのだろう。私は奴らの攻撃をかわしては受け、力尽きた私は地上世界へと落ち…死にかけていた所をあの夫婦に助けられたのだ」 ネリア「そうだったのか。私のせいで…本当に」 ウォード「ネリア様…もう謝らないで下さい。私は守護騎士…ネリア様を護るのが務めであり、私の生きがいなのです。ですから…自分を責めないでください、ネリア様は悪い事など一つもしていないのですから」 ウォードはそう優しい声で、ネリアに向かって語った。 その言葉を聞いたネリアは驚いた表情をしてはウォードを見つめている。 りん「そうです!それに私…ネリアさんの過去を聞けてうれしかったです。貴方が死にたいと思うキッカケが分かりましたし、心術が使えなくなる理由もわかってスッキリしてます。話してくれてありがとうございます…ネリアさん!」 ガザフ「もう辛い思いはしなくてもいいからなネリアちゃん?」 フィーネ「ネリアちゃんは強くて優しい女の子なのね…お姉さん感激よ〜」 ウォード「私は…これからも、そしてずっと死ぬまで貴方を一生守り抜いてみせます。守護騎士の名に懸けて」 ネリア「みんな……ありがとう。私はここに来たときより心が前向きになってきたように思える。証拠に、先ほどフレイを助けようとした時、秘奥技を使えるほどまで心術をあつかえるようになった。だが、まだアリアを使えるほどまでには至らぬがな……こんな私だが、よろしく頼む」 フレイ「ごめん…ネリア」 ネリアは声がしたフレイの方へと顔を向けると、背を向けてネリアの方に寄り掛かり顔を俯く彼の姿があった。 ネリア「フレイ…?」 フレイ「おれ…ネリアのこと何も知らないで無責任な事ばかり言ってた…そうだよな、ネリアとウォードの言うとおりだよ。おれ…相手の事も知らないどころか自分の事も…親の事も知らなかったんだ…酷いよな…おれの方が」 フィーネ「!!フレイちゃんやめなさい!」 フレイ「死んだ方が―」 ―パァアアンッ!!! フレイ「…ッ?!」 ネリア「…ッ!!」 ネリアはフレイの言葉を言い終わる前に、フレイを自分の方へと体を向けたかと思うと、思いっきりフレイの頬を叩いた。 その行動にフレイのみならず、皆も驚いた表情を見せていた。 ネリア「私は…お前に出会うまで、死にたいと思っていた。でも…フレイ、お前に出会ったおかげで私は目が覚めたんだ。あの時、お前がかばってくれた時…また私のせいで誰かが死ぬんだと思って怖かった」 フレイ「ネリア…」 ネリア「でも私の為に命を懸けて守ってくれてると知った時…私は今までの弱い自分から卒業すると決めたのだ。もう誰も失わないために…いつも誰かに守られているのではなく、誰かを守る私になろうとな」 そう言った後、ネリアは叩いたフレイの頬を優しくなで始める。 ネリア「だから…フレイ、死ぬなんて言わないでくれ。今度は…私がお前を守るから…な」 フレイ「でも…それは俺が“アリスタの涙”だからだろ…ッ!」 ネリア「違う。お前が“アリスタの涙”でなくても…私はフレイという一人の男を守ると決めたのだ。だから…今までの無礼を許してくれフレイ。そして…辛い事をともに分かち合おう。お前は一人ではないのだからな?」 フレイ「……なんだよ、それ、おれのセリフじゃねェかよ…ッ。―…ありがと、ネリア」 ガザフ「嬢ちゃん…変わったな」 りん「ぇえ…初めてお会いした時とは大違いです」 ウォード「今のネリア様は生き生きしている。ガーディアンではああいう表情は見せなかったからな…」 フィーネ「あらぁ?寂しいのね〜ウォードくん♪」 ウォード「な、そ、そんなこと思ってませんよッ!!!」 場が和み、今までの緊迫した空気が嘘のように消えていた。 それを感じ取ったフレイは、自分の過去を思い出してきて以来、久々の笑顔を見せた。 そのフレイの笑みにつられて、ネリアも笑みを見せる。 ガザフ「アルヴォンドはああいう行動をとったのは何か理由がありそうだな」 ネリアの過去の話から変わって、今度はアルヴォンドの事について話を始めた。 りん「はい…私、アルヴォンドさんが起こした行動の最中、彼の生心力はとても乱れていました。多分、アルヴォンドさんのあの行動はやらなくちゃいけなかった行動のように感じました。なにか使命のような…焦りを感じていましたからね」 ネリア「なるほど…」 フィーネ「彼…相当重いものを背負っているわね。そして、責任感を人一倍感じる子よ。きっと“アリスタの涙”としての何かが、この行動を起こしたんじゃないかしら?」 ウォード「フィーネさんはアルヴォンドの記憶は見られたのですか?」 フィーネ「いいえ、彼が思い出したくないのか、まったく記憶を読み取ることが出来なかったわ…」 りん「よほどの過去をお持ちなんですね…アルヴォンドさん」 フレイ「…あいつが俺らを裏切ったのは正直ショックだよ…でも、俺は…あいつの本当の事を知りたい!だから…」 ネリア「アルヴォンドを追う…そして問い詰める…だろ、フレイ?」 フレイ「ぁあ…そんで、アルヴォンドをさらったあの仮面の男の事も聞いてやるんだ!」 フレイはそういうと、脳裏に謎の仮面の男の映像が蘇ったのと同時に、思い出した一部の記憶も思い出す。 フレイ「あと…俺の記憶を全部思い出すきっかけにもなるかもしれないから…さ。もしまた暴走しそうになったら…皆、おれを遠慮なく殴ってでも正気に取り戻してくれても構わない、よろしく頼む」 ガザフ「おうよ、息子を殴るのは俺の役目だ。沢山ぶん殴ってやるから覚悟しろ!」 ウォード「ふん、急に元気になりおって…まぁ、お前らしくていいがな」 フィーネ「お姉さんにまかせなさいフレイちゃん♪」 りん「はい、援護なら任せてください!」 ネリア「ぁあ、またさっきのビンタをお見舞いしてやるぞ」 仲間の返事を聞くと、フレイは大きく深呼吸しては夜空を見つめ、 フレイ「明日の朝から旅の再開だ!目的はアルヴォンドの追跡とグリュエル騎士団の活動とアリスタの涙の事についてだ!改めてよろしくな皆!!」 皆(フレイ除く)『ぁあ!!』 かあさん…とうさん…天国から俺を見守ってください。 おれ…頑張るから…さ 場所は変わり、此処はとある森の中。 そこには、アルヴォンドと謎の仮面の姿の男の姿がいた。 ???「やぁ…元気そうだね、“愛しい人”?」 アルヴォンド「あの場から救ってくれたのは感謝するで自分。…せやけど、その“愛しい人”っていう言い方やめてくれへんかな!?なんか俺と同性愛みたいな言い方で気色悪いで〜!;」 ???「ふふ…大丈夫だよ。そんな風に思ってないと思うけど?」 アルヴォンド「まぁ…茶番はここまでにして…」 アルヴォンドはそう言うと、剣先を仮面の男に向けて睨み付ける。 アルヴォンド「自分…何モンや?」 ???「…あれ、覚えていないのかい?」 アルヴォンド「自分の事なんか記憶にない。お前何モンや?」 ???「そーかぁ、僕の事覚えていないんだね…ふふ」 アルヴォンド「な、何がおかしいんや!」 腹を抱えて笑う仮面の男にアルヴォンドは声をあげて叫んだ。 仮面の男は笑うのをやめると、アルヴォンドに背を向けると、 ???「いずれ分かるよ…あ、自己紹介を忘れていたね?」 アルヴォンド「…?」 ???「僕はイルフォンス。グリュエル騎士団ナンバーTなんだ。では…また逢おう、“愛しいヒト”♪」 アルヴォンド「!!グリュエル騎士団やて!?ちょい待ておま―」 言い終わる前にアルヴォンドの目の前で姿を消した仮面の男―イルフォンス。 それを確認し終わると、アルヴォンドはため息をついて、空を見上げた。 アルヴォンド「イルフォンス…どっかで聞いたことあるような…気のせいか?」 ―シュンッ ???「やぁ〜、帰るのがおそいじゃないかぁ〜イルフォンスぅ?」 ???「何道草してんだよ…待ちくたびれたよ。会議だってさ、ほら、席について!」 イルフォンス「ぁあ、すまないね君たち」 オルグユ「お前らに告げる。…本日より“理想郷(ユートピア)計画”を開始した…各々自分の持ち場につくように…ッ!」 19話に続く [*前へ][次へ#] |