物語 第13話 開かずの記憶 ガザフ「なん・・・だと…ッ?!」 アルヴォンド「フレイ君が…宝心種族…!それに、ネリアちゃんがフェニックス・・・やて…ッ?!;」 りん「女神アリスタ…?!そんな…まさか!」 ネリア「ぁ…ぁあ…!」 ウォード「何という事だ…あいつらが…ッ!;」 フィーネ「…」 フレイ「俺は…宝心種族…女神アリスタ…ッ?!―……って、なんだ…それ??」 第13話 開かずの記憶 その場にいたフレイとガザフ以外皆ずっこけた。 フレイ「ぇ、ぇえ?!なんでずっこけるんだよ?!?;」 りん「ほ…ほんとに知らないんですか!?」 ガザフ「……ッ」 戸惑うフレイに、アルヴォンドは顔を俯き静かに口を開き始めた。 アルヴォンド「“女神アリスタの涙”…それは女神アリスタが生心力(ヴィオゼーラ)を生成してこの星アリスタを作った際に、この星の安定と平和を守るため、生心力を補充する役割を、使命をもつ…所謂女神アリスタの末裔の種族の事や」 ウォード「その種族は…操霊種族・宝心種族・ネリア様である天空の神“天空神”フェニックス種族…この3種族の事を指すのが“女神アリスタの涙”というのだ」 ガザフ「宝心種族は…身体のどこかに必ず宝石が埋め込まれているのが特徴で、そこから無限大に生心力を生み出すことが出来る特殊種族なんだ」 フレイ「!!親父…おれが何の種族なのか、最初から知ってたのかよ?!!」 ガザフ「…ッ」 ネリア「…我々フェニックスは…歌を歌うことで世界を保っている種族なのだ…」 フィーネ「そして操霊種族は――…」 アルヴォンド「唯一精霊と契約でき、自由に扱うことが出来る種族や…なぁ、“みんな”」 そのアルヴォンドの言葉を合図に、アルヴォンドを囲むようにして急に出現した何か―― そう、精霊が出現したのだ。 フレイ「あれが精霊…?!」 アルヴォンド「俺らを解放しや……シャドウ!!」 シャドウ「承知した」 シャドウ―…闇の精霊は、アルヴォンド・ネリア・フレイを縛り付けていた縄を黒い霧によって消滅させ、三人を開放させた。 フレイ「うわぁあ…!―・・ッ」 シルフ「うぉっと!大丈夫かよフレイ…しっかりしろよな!」 急にほどかれた縄にバランスを崩して倒れそうになるところを風の精霊シルフが生んだ優しい風によりそれは免れた。 フレイ「あ…ありが、とう・・」 ウンディーネ「あら♪やっぱり…貴方お母さんのコニスにそっくりねぇ〜?」 フレイ「!!母さんを知って――」 水の精霊ウンディーネにそういわれたフレイは、ウンディーネに母親の事を聞き出そうとした時、 セルシウス「この馬鹿者!!こんな状況で何を言っておるのだ…そういうことは後で言え!」 フレイ「うぇ?!」 ノーム「そうだよぉお〜やめたげてよ今そんな場合じゃないよ〜」 フレイ「うわぁああああなんだよこれぇえ!っていうか前見えない!!」 次々とフレイの目の前に氷の精霊セルシウス、地の精霊ノームが現れてフレイの周りには精霊に覆われててんやわんやに。 アルヴォンド「こらぁあああああ何しとのや自分!!フレイ君で遊ぶやない、このドアホ!!」 イフリート「馬鹿者…もうちょっと冷静になって考えんか;」 ヴォルト「バカ」 ルナ「あら〜にぎやかでいいじゃない?」 そしてアルヴォンドの周りには炎の精霊イフリート、雷の精霊ヴォルト、光の精霊ルナが次々と口にする。 りん「わぁ…これが八大精霊…初めて目にします…っ」 ガザフ「操霊種族だったとは…!」 ネリア「アルヴォンド…お前…ッ」 ウォード「これは偶然なのか必然なのか…」 フィーネ「ふふ…♪」 ベルザンド「ぁあ……盛り上がっている中悪いんだけど…俺様の美しい顔を見なさーい!!」 キース「そうよ!見なさいよベル様の美しい顔に注目ーー!!」 そう言葉に反応して、アルヴォンドと精霊は二人を睨み付ける。 アルヴォンド「許さへんで…自分らがしてきた数々の悪行…俺は一生許さへんぞ!!」 ベルザンド「ひぃいい?!;」 キース「ひゃぁああ!!;」 アルヴォンド「次逢うときは自分らをぶち殺したる、よう覚えときや…消え去れ、プリズミックワープ!!」 アルヴォンドがそう言うと、精霊たちの気がアルヴォンドの目の前に集まり形成された魔方陣と同じ柄がベルザンドとキースの足元に出現した。 そしてその魔方陣から白い光柱が立ち二人を包み込んでいった。 ベルザンド「な…ッ?!身体が薄くなってる?!」 キース「どこに飛ばされるのよ―!」 アルヴォンド「さぁな…それは飛ばされてからのお楽しみや…ほな、また〜♪」 そうアルヴォンドが笑って消えていく二人に手を振ると、完全にベルザンドとキースは姿を消した。 それと同時に騒ぎを嗅ぎ付けてやってきた世海都市ルーネの国王と兵士が現れてきた。 ルーネ国王「何事じゃぁ!!貴様らか、大広場を混乱に陥れたのは!」 気づけばフレイたちの周りにはたくさんの人だかりが。 そして噴水の淵が少し崩壊していた。 そんな状況を見た国王が叫び散らし、兵士がフレイたちに向かって剣を向けた途端、 ルーネ国王「!!目の前にいるのは…精霊…!それに、フィーネではないか!!」 その言葉を聞いたフィーネは国王の目の前に出て、ルーネ国王に向かってにっこりと笑ってこう言った。 フィーネ「詳しいことは私がお話し致しますわお父様…さぁ、皆ついてきて頂戴」 フレイ「ぇ、フィーネって…王女様なの?!」 ルーネ国王「わかった…話を聞こう。お前たちも付いてきなさい」 戸惑いながらも後に付いていこうと皆が歩き出した…その時だった。 ウォード「ネリア様!しっかりしてください!」 りん「アルヴォンドさん大丈夫ですか!?しっかりしてください!!」 フレイ「?!ネリア、アルヴォンド!!どうかしたのか!?」 フレイは4人の元へと駆け出した。 そこには顔を青ざめて辛そうに息をしているネリアとアルヴォンドの姿が。 ウォード「ネリア様は多分…疲れがたまっていたのだと思う。だが…」 りん「アルヴォンドさんの生心力が急激に減少してます…!これはいったい何が!!」 シルフ「もぉ!アルったら無茶すんなよな〜、無理にすげぇ生心力の消耗が激しい精霊術使うんだもん」 ウンディーネ「しかも精霊術使い慣れてないもの…当然の結果よ」 りん「だからこんな急激に生心力が…ッ、どうすれば回復するのですか!」 セルシウス「気にするな、少し休めば回復する。りん、お前は治癒心術が使えるのだな?それを5分おきくらいにかけてくれればすぐに回復するだろう」 りん「わ、わかりました!」 フレイ(アルヴォンド…俺たちの為に無茶を…!それにネリア…ッ) 場所は変わってルーネ城の内部、フィーネの部屋にフィーネ以外の6人はいた。 フィーネが使っていたと思われる3人は入るであろうとても大きいベッドにネリアとアルヴォンドを寝かせては、二人同時にりんは治癒心術をかけている。 フレイ「なぁ・・親父、どうして嘘ついてたんだよ・・どうして黙ってたんだ!!」 ガザフ「…」 フレイ「なんか言えよ!!」 ウォード「落ち着け馬鹿者!!」 黙って壁に寄り掛かるガザフに、フレイは胸倉を掴んだ姿を見てウォードは羽交い絞めして止めた。 それでもなお、ガザフは俯いてフレイの方を見ようとしない。 そんなガザフの態度にフレイはいら立ちを抑えられずにはいられなかった。 フレイ「っく…ッ、どうして…」 ―…ガチャ… すると、音を立てて自室に入ってきたフィーネが現れた。 フィーネ「…さて、詳しいことはお父様に話したら理解してくれたわ。しばらくは此処を使っても良いと言ってくれました。それでは…存分に話してちょうだい。貴方たちが隠していることすべてを…ね」 そうふんわりとフィーネは微笑んで言った。 その言葉を聞いたガザフは、うつむいていた顔から前を向いて静かに口を開いた。 フレイ「親父…?」 ガザフ「俺はお前が宝心種族であることは知っていた。けどそれ以外は何も知らない。以上…」 フレイ「…ッ!なんだよ、それ…!ほかにも知っていることがあるんだろ?!なぁ教えろよ親父!!」 フレイはガザフの態度に我慢の限界で、胸倉を掴んで壁に押し付けて睨み付けた。 そんなフレイを冷たいまなざしで見下ろしているガザフは、 ガザフ「それを知ってどうする。お前は5歳から前の記憶を失っている、その答えを知っているのはお前自身の記憶だ。俺は答えることも教えることもできん。記憶をすべて思い出したとき、お前にすべてを話そう」 フレイ「!!…くそッ!!」 フレイはガザフの胸倉を掴んでいた手を思い切り振り払った。 そしてフレイは仲間たちの輪から外れ、奥の暖炉のある場所へと歩みを止め、強く拳を握りしめては、今にでも泣きそうな顔をして俯いた。 フィーネ「あら、フレイちゃんとガザフさんは話さないのねェ〜残念。他のネリアちゃんとアルヴォンドちゃんはどうかしら?」 フィーネの問いかけに対して誰も答えるものはいなく、沈黙が訪れた。 だが、その空気を切り裂いたのが… アルヴォンド「何も話すことはない……で…ッ!?」 りん「!!アルヴォンドさんまだ動いては―」 アルヴォンド「大丈夫や・・気にせんでや」 りん「でも――」 りんは体を無理やり起こすアルヴォンドの手を掴もうとした瞬間、アルヴォンドは凄い剣幕でりんを睨み付けたかと思うと、 アルヴォンド「気にせんで言うとるやないか!!」 りん「?!!」 アルヴォンド「チッ…いくで“お前ら”」 シルフ「ちょ、アルお前どこに行く気だよ!外に出たら―」 アルヴォンド「大丈夫や、外に出ぇへん…テラスに出て頭冷やすだけや。フィーネお姉さん、テラスどこにあるか教えてくれや」 フィーネ「この部屋を出て左に歩いて直進すればあるわ」 アルヴォンド「おう、さんきゅ…」 そう言うと、アルヴォンドはベッドから出て、フラフラながらもゆっくりと部屋を出ていこうとした。 アルヴォンド「済まん……一人にさせてくれ」 言葉を残すと、アルヴォンドはフィーネの部屋を出て行った。 りんは目を見開いて、放心状態になっている。 先ほど言われた言葉が余程ショックだったのだろう。 それを眺めているウォードは視線をネリアへと戻した。 ぐっすりとやすらかに眠っている彼女の顔を見つめて、 ウォード「私はネリア様の一連を話すことが出来る。しかし、ネリア様の気持ちは残念ながら守護騎士である私ではなくネリア様本人でしかわかりません。ネリア様が自らお話しできる心境になる時をお待ちください。そして、私も知りたい内の一人だという事を覚えておいてください…」 りん「ウォード…さん」 3人の状況を理解したフィーネは肩を下ろしため息をついて、 フィーネ「あらぁ、せっかく告白の場を設けたのに…仕方ないわね。では、今日明日この街を自由にどうぞ。では…ごゆっくり」 とうとうつながった“アリスタの涙”。 3人の記憶には何が映っているのか…それは本人にしか知らない。 その記憶は深く傷が埋め込まれている… その傷が晒されるのはいつになるのか… フレイ(おれ…もう、全部わからないよ…ッ!かあさん、とうさん…ッ) 人口の太陽が月と入れ替わる瞬間、夕日を作り上げて街を、城を、部屋を茜色に染まっていった。 第14話に続く [*前へ][次へ#] |