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物語
第11話 海の占術師と衝撃






『フレイ…』



誰だ…女の声?



『こら、だめだろ?フレイが起きてしまう。…ほら』
『あれ、寝てたんだ?ごめんフレイ;』
『ったく…君と言うやつは…ッ』



青くて髪の長い女の人と…緑色で髪が短い男の人…?
俺の名前を呼んでる…誰なんだ?



『ほらフレイおいで、とうさんが抱っこしてあげるから』



!!



『はん、泣いてるじゃない!とうさんがいやだ〜って!かあさんが大好きだもんな〜フレイは♪』
『ぅう…おれのこといつ懐くんだよ…フレイ』




かあさん…とうさん…?
これが…おれの両親…ッ
おれが2歳のころに死んだから…記憶が全くないけど…これが…おれの…
たしか…とうさんがスティル、かあさんがコニスだっけ…




???『お、コニス…スティル!相変わらず元気そうだな?』




?今度は誰だ―…


スティル『げ、ガザフ…お前かよ』
コニス『ぉお!久しぶりだなガザフ!』



!!親父…?!今よりかなり若い…けど、声質は確かに親父だ…
そういや、親父ととうさんは大親友だって言ってたな…



ガザフ『なんだよその顔は。俺が出産を手助けしたのはどこの誰だっけ?』
スティル『ぐぅ…おまえだよ…あの時はありがとう』



…とうさん、かあさん…
なんで死んだんだ?どうして俺を置いていったんだ?
なぁ…教えてくれよ…ッ




???「それはね…」



?!今度はなんだ―…
ぁ、かあさんととうさんと親父が…消えていく!
く!まぶしい―…



???「少年君の記憶の中に眠っているわ…♪」








第11話 海の占術師と衝撃







光が消えたと思ったら、目の前には見覚えのない女性。
エメラルド色したゆるくパーマがかかった長髪で、耳のあたりによくわからないのがついており、水色のドレスのような服を纏った美しい女性。
彼女を確認し、ぱちくりと目を瞬くフレイは、さっきまでのは夢だったのかと認識し、そしてこの女性の声によって夢から目が覚めたのかと理解した。
そして、フレイは自分が膝枕をされていると気付いた瞬間、速攻立ち上がって彼女から距離を離した。


フレイ「うわぁあああ!!……って、あれ、うわ、誰だお前!!っていうか、此処どこ!?!あとさっきの言葉の意味はなんだ!!;」


あまりにも動揺しすぎて、頭に浮かんだ疑問を一気に女性にぶつけてしまったフレイ。
そのフレイの質問を聴いて、彼女はやんわりと微笑むと、


???「まず、はじめの質問から。私はフィーネ・ウェルツよ♪水魚種族なの・・・よろしくね少年君♪」
フレイ「俺は・・・フレイ・ミューレントだ」
フィーネ「あらぁ!フレイちゃん…可愛い名前ね♪」


褒められてるのに微妙な気持ちになる。
苦笑いをし、小さな声で礼を言った。


フィーネ「2つ目の質問。此処は世海都市ルーネ。私の家よ」
フレイ「ぇ!?ルーネなのか!?」
フィーネ「ルーネは海の中に存在する海底都市。水魚種族という、海の中で生きていける種族が住んでいるところよ」
フレイ「ぇ、海の…中?!!;ぇ、ちょ、うそ、ぇ」
フィーネ「安心して頂戴。あなたに水膜を付けたから濡れないし海の中でも息が出来るの」
フレイ「!!ほんとだ…」


よく見ると自分の体が薄い透明な膜につつまれていた。
それを聞いて安心する。

フレイ「!!そういえば…ネリアは…あいつらは!!」
フィーネ「あら?お仲間さんの…あの銀髪の少年くんと紫の髪のお嬢ちゃんのことかしら?家の外で探検してるわよ」
フレイ「りん…アルヴォンドか!ほかの奴は?!」
フィーネ「わからない…どうやらはぐれてしまったようね?」
フレイ「く…ッ!」
フレイ(ネリア…親父…!)
フレイ(…あの黒髪のやつはどうでもいいや)



フィーネ「さて、最後の質問ね。その言葉のまんまよ」
フレイ「?」
フィーネ「フレイちゃん…君は親代わりの人から2歳で両親は死んだ…そう告げられているようね?」
フレイ「?!な…ッ」


フレイからは名前以外のことは何も話していないのに、彼女はズバリと当てた。
そんな彼女にフレイは驚きを隠せない。


フィーネ「はっきり言わせてもらうわ。それは嘘よ」
フレイ「ぇ…ッ」


さらに突きつけられる事実。
ウソ。
それはフレイの脳を突きつけた。


フレイ「冗談言うなよ…ウソなわけない。とうさんとかあさんは事故で死んだ―」
フィーネ「君はそれを、ちゃんと、自分の目で、それを確認したのかしら?」
フレイ「!!して…ない。けど…ッ!」
フィーネ「その答えは…あなたの記憶の中に。私はそう言ったはずよ?」
フレイ「…記憶…?」


その言葉の意味が理解できないフレイは、首をかしげる。
それを見たフィーネは目を細めて、


フィーネ「あなたは記憶の一部を失っている。ここまで言えば…もうわかるわよ、ね?」
フレイ「!!」


言葉の意味を理解したフレイは、目を見開いてショックする。
顔をうつむき、手をきつく握りしめ、苦痛にゆがんだ表情をみせた。


フレイ(おれは…記憶を一部失っている…?)
フィーネ「記憶を失っているのは、どうやら5歳より前の記憶のようね」
フレイ「ちょっと待ってくれ…どうして分かるんだ?」
フィーネ「あら、知りたい?」


フレイは頷くと、フィーネは陽気にこう言った。


フィーネ「私はあなたたちの記憶を見ることが出来る特殊能力を持っているの」
フレイ「記憶…見ることが出来る?」
フィーネ「ぇえ、人と目があっただけで記憶が私の頭の中に入ってきて、それを映像としてみることが出来るのよ。フレイちゃんの夢も見させてもらったわ」
フレイ「…5歳からの前の記憶、知ってるのか?」
フィーネ「相手が記憶を失っている部分は見ることが出来ないわ。また相手が忘れたいと思っている部分は一部だけしか見れないの」
フレイ「という事はわからないのか…ハァ…」

フレイ(俺は…自分のことを知らなければいけない。みんなは知っているのに…知らないのは俺だけだ。俺は…誰なんだよ)


眉間にしわを寄せて今にも泣きだしそうな顔をするフレイ。


―ダァアアン!!

アルヴォンド「うっひゃぁあああ!べっぴんさんもなにもかも綺麗やったなぁ〜フレイ君もはよ起きんと、凄くもったいないでぇ〜♪」
りん「ちょっと、声が大きいですアルヴォンドさん!それにフレイさんが起きてしま―あ…」
フレイ「あ…アルヴォンド、りん…」
フィーネ「あらぁ、観光どうだったかしら?ちょうど今フレイちゃん起きたばっかなのよ〜♪」
りん(フレイ…さん?)


りんはフレイの様子がおかしい事に気が付いた。


りん(生心力が乱れている…いったい私たちがいない間に何が・・・?)
フレイ「ごめんな二人とも…起きるのが遅くて」
アルヴォンド「?!な、なんや〜?;急にフレイ君らしくない事言って;…疲れとるのは当然やろ!」
りん「…大丈夫ですよ。お気になさらず、もう体は大丈夫なんですか?」
フレイ「ぁあ…結構眠っていたらしいからな…この通り、元気だよ」


フレイはそう言うと、笑う。
その笑い方が、いつもより違うのを二人は見逃さなかった。
なんというか、作り笑いのような…悲しい笑顔


アルヴォンド(…もしかして)
りん(フレイさん・・?)


沈黙が続いた。
その沈黙を破ったのは、


アルヴォンド「!ぁあ〜自分用事思い出したで!ごめんなりんちゃんフレイ君!すぐ戻ってくるさかい…んじゃ!」
りん「ぁ、ちょっと!またナンパですか?!!んもぅ…あの人ったら」
フィーネ「…フフ」








―バタンッ


アルヴォンドはフィーネの家の扉を閉めて外に出ると、顔をうつむいて眉間にしわを寄せて考える様子を見せた。



記憶は遡り、フレイとりんがまだ目を覚める…昨日の夜の記憶。



フィーネ『アルちゃん…あなた』



フィーネ『“たくさん”お友達が近くにいるのねぇ〜♪』




アルヴォンド「ハァ…」



アルヴォンド『な、何のことや?』
フィーネ『それに…君自身が思い出したくないのか…途切れ途切れしか見れないけど』




フィーネ『苦労…したのね、アルちゃん』
アルヴォンド『!!?』
フィーネ『私には…あなたのほとんどが分かるわ…』
アルヴォンド『…も』
フィーネ『ん?』
アルヴォンド『誰にも…言わんといて…くれへんか』


俯き震えてそう言うアルヴォンドに対してフィーネは右手の人差し指を頬に充てて悩んだような表情をする。


フィーネ『あらぁ、良いのかしら?言わないと――』


―チャキッ

アルヴォンド『言うな』
フィーネ『…』


アルヴォンドはフィーネの首元に剣先を向け、ドスの効いた低い声で言う。
そんなアルヴォンドをフィーネは微動だにせず、目を細めてアルヴォンドを見つめた。
アルヴォンドは身体を震わせて、冷や汗を滲ませ、瞳は震え動揺しているように見える。
それを理解したフィーネは口角をあげると、


フィーネ『いずれ嘘はバレる。だって、ウソはばれる為に存在するモノなのよ…?』
アルヴォンド『それがどうしたんや…っ』
フィーネ『あなたから自分のことを話さないと…傷つくのはあなた自身。誰かに自分のことを言われる前に…告白した方が良いわよ?そろそろ…時は近づいてきている』








アルヴォンド「は…そんなもん知らんで…誰も」



上を見上げ、青い海を見つめる。



アルヴォンド「…なぁ…“みんな”…?」





歯車は動き始め、そして、少しずつ速度を増していった。



つながる時は…そう、遠くない。





第12話に続く

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