物語 第8話 家族 あの事件から8日後… ネリア「お前…本当に、もう動いても大丈夫なのか…?」 フレイ「おう!大丈夫だよ!!」 ネリアはそう不安げに質問すると、フレイは陽気に軽々しく体を動かしてはそう言って笑顔を見せた。 らん「驚いたよ…あんな致命傷がたった8日で激しく動いても良いほどまで治るだなんて…!」 ガザフ「こいつは普通の奴より傷の治りがとても早いんだ…それに対して…はぁ、可哀想に…」 フレイ「…ぁあ、良いやつだったぜ…アルなんとか」 アルヴォンド「アルヴォンドや!!!あと棒読みやから全く心こもっとらんわ!!この通り生きてます!!!…―痛;」 ガザフ「自業自得だ。フレイの看病無視してナンパしに行った罰が当たったんだ、馬鹿者」 アルヴォンド「いいんや…俺はフレイ君と違って治癒心術あるから大丈夫やったし…――ほんで怪我の治りも早いしなぁ…」 らん「まぁ君はかろうじて心臓に当たっていなかったから、フレイ君と違って全治2週間だしね。治りが早いのは当然だよ」 アルヴォンド「ぅう…酷すぎやろ…みんなして…」 りん「みんな苛めるのはここまでにしてください!お父さんも!アルヴォンドさんは私を守って傷を負ったんです…なんとお礼を言ったらいいのか」 アルヴォンド「ぇ、んじゃチューで♪」 し〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん… ―ガチャッ りん「前言撤回です…最低ナンパ師」 らん「私の娘に何という事を…!」 アルヴォンド「わわ、じょじょ冗談やぁあああ!;;りんちゃんその武器降ろしたってぇえええ!!;ぁあとお父様もそのメス危ないからぁああ!!;」 第8話 家族 らん「今日ここを出発していかれるんですね?」 ガザフ「ぁあ、あいつらの好きにはさせたくないからな…止めさせてやる」 らん「グリュエル騎士団ですね…懐かしいです。もうつい最近のように思い出されます」 ガザフ「…ぇ、グリュエル騎士団を知っているのか…!?」 ガザフは疑問をらんにぶつけた時、病室で出かける準備を整う3人とそれを見守るりん達に顔を向けた。 らん「あなたたちに、そして…りんにどうしても聞いてほしい話がある。いいかい?」 フレイ「話…?」 ネリア「なんだ?」 アルヴォンド「ぇえで〜」 りん「…ッ」 らん「では、私の部屋にご案内します。ついてきてください」 場所を移動して此処はらんがいつも患者を診察している場所でもあり作業をする場でもある部屋。 部屋にある丸い大きいテーブルを真ん中に左右に5人掛けの大きいソファがある。 手前にらん以外の5人が腰かけ、遅れて奥の方のソファにらんは腰かけた。 らん「ここなら大丈夫でしょう。では私が今から話すのは、他でもない…あなた方の知りたいことについてです」 フレイ「…知りたい事?おじさんはなんでグリュエル騎士団を知っているのか…とかか?」 ガザフ「あと…らんとあなたの奥さんの間に何が起きたのか…ね」 らん「まぁそういったところです」 らん「今から20年前…まだりんが生まれる2年前のことでした。私と…意姿種族である彼女―リィリアが出会ったのは…此処の近くの森で医者を目指そうと頭にも思わなかった私が、魔物に襲われて死にかけている時に出会ったのです」 髪の色、髪型…容姿…今思うとほんとにりんと瓜二つの美しい女性でした。 そこで彼女と出会い、ヒュニマの私は彼女に強力な治癒心術によって一命を取り留められたのです。 リィリア「よかったです…!」 らん「君は…なんで私を見ただけで傷の状態が分かったんだい?」 そんな私の問いに彼女は自分が意姿種族であることを告げられました。 彼女は意姿種族の住かを襲われ、命からがら逃げてきたのだと言っていた。 両親は目の前で殺され、親戚も友達も…何とか襲った張本人のグリュエル騎士団から逃げ出してきたのだと。 それを気の毒に思い、実は私は彼女に一目ぼれをしてしまいましてね…彼女をなんとしても守り抜きたい。そう心に決めたのです。 そしてハイカラにある自宅に案内して彼女と一緒に過ごしました。 なんとか彼女を守ろうと、必死に兵士の目に晒さぬよう守りました。 そして時はあっという間に過ぎ、2年の年月が経ち… リィリア「見て…女の子よ!らんさん!///」 らん「ぁあ…私たちの証だ…」 リィリア「名前は…りんでいいかな?」 らん「らん…?どうしてだい?」 リィリア「私の頭文字とあなたの最後の文字を合わせて「りん」。私とあなたの愛の結晶を名前に残したいの」 らん「そうか・・・りん、これからもよろしくな」 りんが生まれた・・。私たちは嬉しかった…幸せに浸っていたんだ… あの存在を忘れて・・ね。 それから2年後…りんは2歳になり、誕生日の記念に近くの森でピクニックしに行こうと、出かけました。 それが…事件の始まりだったのです。 フレイ「事件・・・?」 ガザフ「!まさか・・!」 らん「察する通り…私たちの前にグリュエル騎士団のオルグユという者が現れたのです」 フレイ「オルグユだって!?!」 ガザフ「…チッ」 ガザフ(オルグユ…) らん「そこで私は思い出したのです…リィリアは命を狙われていることを…」 りん「母さん…」 リィリア「あなたは…私たち種族の集落を襲ってきた…!」 オルグユ「いやぁあ〜あれから何年振りか…4年ですか?変わっておりませんね〜」 らん「おまえが…リィリアの心を傷つけたやつか・・・!」 オルグユ「聞き捨てならんな。私はこの世界に不必要だと思い芽を摘み取っただけのこと」 らん「なんと惨い…!それでも同じ地上人か!!」 らん「わたしはそれから、いつも護身用に肌身離さず持っていた、得意の剣術でオルグユと一戦を交えました。しかし当然彼の方が強さは遥か上…敵うわけがありませんでした」 らん「ぐぅ…ッ!!つ、強い…!!痛ッ」 リィリア「らんさん!」 りん「と…さん…!」 オルグユ「おやおや…つまらないですなぁ〜?もっと楽しんでください…よ!!水剛破刃!!」 ―シュバッ らん「!?り、りん!!」 ―ザシュァッ らん「あいつはりんを殺そうと…攻撃を仕掛けた。それを…リィリアは身を呈してかばい…」 『!!』 りん「―…ッ!!」 リィリア「はぁ…はぁ…ッ」 らん「リィリア!しっかりしてくれ!」 オルグユ「はは!これは好都合!!これで絶滅しましたね…私の計画通りになりました!」 らん「!!お前…これを狙って・・!」 オルグユ「では…僕の計画は終わりました…では」 らん「待て!―行ってしまった…くそッ!!リィリア…今すぐ街に戻ろう・・大丈夫治るから―」 リィリア「もう手遅れよ…ごめんなさい」 らん「!リィリア…まさか自分のもわかるのかい・・?!」 リィリア「そのようね…もう、駄目みたい…らんさん…ずっと傍にいてやれなくてごめんなさい…あなたの心に傷をつけてしまったわね…」 らん「そんなことない…これは私が決めたことだ。私はあなたをグリュエル騎士団から守ること。なのに…私はそれを忘れてしまって…ッ」 リィリア「ぃいえ…それでよかったのよ…幸せを感じることが出来た。なにより…あなたとの結晶を残すことが出来て…嬉しいわ」 らん「リィリア…ッ!私…約束するよ。もう誰も死なないような…いつかすごい医者になってみせる…だから、天国から見守っててくれるかい?」 リィリア「すごいわ…らんさん、もちろんよ…ちゃんと見守っているわ。でも無理はしないで…あなたまで倒れてしまっては…りんの面倒を見る者はいないんだから」 らん「ぁあ…いままでありがとう…リィリア。私を幸せにしてくれて…りんを生んでくれて…」 リィリア「…私もよ…あり…が、と…」 らん「そして…リィリアは息を引き取りました。それから、私はりんの子育てを両立しながら、独学で医学を学んで…自分でも言うのはなんですが、世界で一番の医療技術を持ち、それをこのハイカラに教えていった結果、ハイカラは医療の国となったのです。りんも私の背中を見たのか、今では優秀な医師。そして意姿種族の血を引き継いだ彼女はその能力を生かしている…完璧で自慢の娘となりました。いずれ私を超すでしょう」 りん「お父さん…どうして、どうして私にウソを言ったの?!母さんは病気で死んだって!私はヒュニマだって!」 らん「それは・・私の臆病な性格だからですよ。それを言ったら、りんは私のことを嫌うんではないかと、そしてハーフだと告げたら…あなたは苦しむのではないのかと、ね…。でもそれは間違っていました。逆にそれで苦しめてしまっていたようですね…私もりんも…」 そう言うと、らんはりんに近づき近付き、きつく、優しくりんを抱きしめた。 りん「…ッ!」 らん「ごめんなさい…りん、貴方を苦しめてしまって…ッ」 りん「お父さん…!バカ…私は怒っていません…ただ、知れて嬉しかった…ありがとう、お父さん…悲しい話をしてくれて…ありがとう」 それを遠くで見ているガザフは、顔をうつむいた。 ガザフ(らんは…俺と同じことを思っている。だが、フレイは…お前は、俺の過去を、そして隠していることを知ったら…りんと同じ反応をするわけがない。俺は…罪人だからな…) フレイ「親父」 ガザフ「ぶぉおおおわぁあああ!?!?!;」 フレイ「うぉおお!?驚きすぎだよ!!;」 ガザフは自分の目の前にフレイが居ることに全く気付かなく、突然の声に異常なまでに驚いた。 それに驚くフレイ。 ガザフ「ど、どうしたんだフレイ?」 フレイ「いや…最近親父の様子が変だからよ…その、さ」 ガザフ「?」 フレイ「なにか辛いこととか…その、隠してることがあるんだったらさ、遠慮なく話してくれよ?おれ、もうガキじゃねェしさ…そういう受け入れる覚悟できてるから。だから…その、一人で抱え込まないでくれよな?」 ガザフ「!!フ、レイ…?!」 フレイ「おれと親父は血の繋がっていないとはいえ、親子だからよ…だから、隠し事とか無しだからな!!」 ガザフ「…フッ」 ガザフ(ありがとう・・息子。でも待っててくれ…必ず俺から話す。心の準備が出来たら…その時はよろしくな) フレイ「な、人が真面目に話してるっていうのに何で笑うんだよ!;」 ガザフ「「いや、やっぱりガキだなって思っただけだよ…ありがとうな息子」 そうガザフが笑いながらフレイの頭をくしゃくしゃになでると、フレイは拗ねたような表情をした。 フレイ(絶対本気にしてないな…このおっさん) その様子を遠くから見つめるネリアとアルヴォンド。 アルヴォンド(親子…かぁ) アルヴォンドは壁の柱に背中を預け、うつむきながらそう思った。 目をつぶると、脳内に走馬灯のように流れる記憶。 『母様…!』 『ふぁ…ぁあ…!!』 『…らい…だよぉ…ッ』 アルヴォンド(は…バカらしい) 一方、ネリアはりんをフレイを交互に見つめていた。 ネリア(家族…か。…ウォード…) そうネリアは今にも泣きだしそうな顔をしていた。 昔のことを思い出しながら。 ネリア(ウォード…どうか生きていてくれ…ッ!) ガササ… ここはとある森の中。 そこにいるのは、男女の姿が。 男「最近はやたらと魔物とはちがうのが出てきて大変だな…倒すのが精いっぱいだよ」 女「そうね…あら?」 歩みを進めていると、目の前には倒れている何かの影が。 さらに進むと、それは黒くて長い髪をし、白い衣装を身に纏った男性が倒れていた。 よく見てみると重傷を負っている。 男「な…ッ?!き、君大丈夫か!!」 女「酷い傷…!早く家に戻って治療を!」 男「ぁあ!」 そう二人は言うと、協力して倒れていた男性を担いで自宅へと急いで運んでいった。 ???「ネリア…さま、…うか、ご無事で…ッ」 その彼の小さなつぶやきは草木の雑音に消えていったのであった。 9話へと続く。 [*前へ][次へ#] |