深い闇の底で見つけた光
02
春独特の暖かい風が、日差しが気持ちいい。
ゆっくりと深呼吸を繰り返しながら私は満開に咲き誇る桜の木を見上げた。
「…早く起きないかな。寂しいよ、薫…」
目に涙が溜まっているせいか、視界が滲む。
「雪音」
その時、背後からずっと聞きたかった声が聞こえた。
同時に溜まっていた涙が頬を伝う。
ゆっくりと振り返るとその声の主はやっぱり薫で。
私は嬉しくて、泣きながら薫に抱き着いた。
「…かお、る…!起きたんだね、幻なんかじゃないんだよね…!」
「あたりまえだろ。なんで泣くんだよ、雪音」
薫は私の涙を拭いながら安心させるように微笑む。
「…だって、薫、3週間も起きなかったんだよ…?このまま起きなかったらどうしようって…!」
そう言うと薫は私の頬を掴んで引っ張った。
「いひゃい、いひゃい!」(痛い、痛い)
「雪音がそんな心配しなくていいんだよ。俺は今、ここにいるんだから」
「薫…」
私は静かに薫を見つめた。すると頬にあった薫の手は私の顎に。
「ん…」
唇に柔らかい感触がして私は目を閉じる。そして空いている手を薫の指に絡めた。
互いの存在を確かめるための、触れるだけの口づけ。
私は嬉しくて泣いてしまう。
ゆっくりと唇が離れたと同時に、抱きしめられた。
「雪音、愛してる」
「…うんっ…薫、私も…!」
薫の背に手を回して抱きしめかえす。そして薫だけに聞こえるように、今の気持ちを全て伝えるように、私は言った。
「愛してる…!」
桜の木の下で私たちはもう一度、誓いの口づけを交わした。
(もう離れてなんかあげないから!ずっと一緒にいてね、薫…!)
(それはこっちの台詞。もう離さないよ、お前は永遠に俺のものだから)
たとえまた別れがくる時が来ても。
私たちはまた出会えるから。
(終章:終)
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