深い闇の底で見つけた光
01
あれから3週間たった今。薫は眠ったままだった。
今までの疲れを、傷を癒すかのように眠り続ける薫を見て、私は不安ながらも安堵していた。
起きたら薫の好きなものでも作ってあげよう。
心の中で静かに誓うと、暖かい日差しがさす外へと飛び出した。
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※薫side
「……ん…」
ここ…は…?
そっと起き上がり周りを見渡すと、此処は何処かの小屋のようだ。
「…雪音?」
近くにいるはずの雪音がいない。それだけで俺は不安に襲われた。
小屋の入り口の戸が少し開いていることに気付いた俺は、速足で戸を開けた。
同時に勢いよく風が吹き、花びらが舞い上がる。
突然のことで目を瞑ったが、目の前にある桜の木の下。
肩まで切り揃えられた黒髪。桜と同じ淡い桃色で染められた着物を着た、知っている後ろ姿。
「…雪音…」
風になびく黒髪を見つめながら俺は雪音の元へ歩きだした。
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