深い闇の底で見つけた光
05
中に入るとものというものがあんまりなくて、広々としていた。
「薫のことだ、そんなに遅くはならないよ」
「…あ、はい」
私はとりあえず床に荷物を置くと、座布団のひいてある場所に座る。
「…雪音さん、ひとつ聞きたいことがあるのだが」
「なんですか?」
綱道は私と向かい合うと、微笑ましそうに笑った。
「薫とはうまくいってるのかい?」
「………え?」
突然の質問に私は首を傾げる。内容は聞き取れた。だが、理解するのに時間がかかった。
「ええぇ!!?」
だって綱道からそんなことを聞かれるとは思っていなくて。
私は驚いて目をぱちくりさせた。
「…え…というかうまくいってるもなにも私たちそんな関係じゃ…!」
そう、私たちはそんな関係じゃないのだ。
この世界に来て、羅刹に追われてた私を薫が助けてくれて。
薫を守りたいがために、刀の使い方も教えてもらった。
「私の気持ちがどうであれ、薫はわかりませんから」
そう綱道に言うと、私は自重気味に微笑んだ。
…私は薫のことが好きだし、薫のそばにずっといたい。
でも、いつかは自分の世界に帰らなくちゃいけない。
それが―――ただそれだけが私の中に渦巻いていた。
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