深い闇の底で見つけた光
06
返事をしながら悩んでいると、薫は私の鞄を持ち上げた。
「え…か、薫…!?まだ終わって…!」
「面倒臭いから全部持ってく。置いてったってここに戻ってこれるかわからないんだし」
「え!?じゃあ全部持ってく…!」
薫から鞄を受け取ろうとすると、薫は自分の肩にかける。
「俺が持ってく」
「お、重くないの!?それに私の荷物だし自分で持ってくよ!」
「うるさい」
そう言うと薫は私の額を指で突いた。
「…ったぁ…!」
「黙って俺の言うこと聞いてろ」
「…じゃあ、ありがと」
軽くお礼をして私は刀を持って立ち上がる。
「この場所ともお別れかぁ…」
今日まで薫と過ごしていた場所。たくさんの思い出が詰まったこの部屋。
…思えばいろんなことがあったな。
「…行くよ、雪音」
そう私を呼んで、手を差し延べてくれる。
「…うん」
私がその手を取ると、薫は軽く笑う。
決して離れないように強く握りしめながら、私たちはこの場所を後にした。
(第五章:終)
[*前へ]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!