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Tales of Vesperia
満開のハルル
エッグベアを見つけるのに、だいぶ時間がかかったからかハルルに戻った頃にはすっかり暗くなっていた。

「おっ、戻ってきたか。材料はそろってるな?」

「ちゃんとあるよ」

カロルは鞄からエッグベアの爪と、ルルリエの花びら、ニアの実を取り出すと、カウンターの上に置く。

「お願いします」

店主はそれを受け取ると、店の奥に移動した。


数分したところで、店主がパナシーアボトルを持って店の奥から出てきた。

「パナシーアボトルの出来上がりだ」

カロルはそれを受け取ると、私たちに呼びかける。

「これで毒を浄化できるはず!早速行こうよ!」

走り出したカロルを、ユーリが止めた。

「そんな慌てんなって、ひとつしかねぇんだから、落としたら大変だぞ」

「う、うん。なら、慎重に急ごう!」

「…急ぐのはわかるけど、慎重に急ぐって…変なの」

「治るといいね。ハルルの樹」

「そうですね」

「わんっ」

焦らず慎重に、軽く急ぎながら私たちはハルルの樹へと歩き出した。


「おおっ、毒を浄化する薬ができましたか!?」

村長が期待を込めて、歩み寄って来る。

「カロル、任せた。面倒なのは苦手でね」

するとユーリは、カロルに持っていたパナシーアボトルを渡した。

「え?いいの?じゃあ、僕がやるね!」

カロルは嬉しそうにパナシーアボトルを受け取ると、樹の根元へと走り出した。

「カロル、誰かにハルルの花を見せたかったんですよね?」

「たぶんな。ま、手遅れでなきゃいいけど」

「…きっと大丈夫だよ」

「うん。信じれば、ね」

ハルルの樹がうっすらと光を放つ。

「樹が…」

「お願いします。結界よ、ハルルの樹よ、よみがえってくだされ」

「…頑張って」

ぎゅっと手を握って祈る。

そんな思いとは逆に、樹は光を失っていく。

「そ、そんな…」

「うそ、量が足りなかったの?それともこの方法じゃ…」

「そんなことないっ…きっと…!」

「もう一度、パナシーアボトルを!」

エステルの声に、村長は首を横に振った。

「それは無理です。ルルリエの花びらはもう残っていません」

「そんな、そんなのって…」

「エステル…?」

エステルは手を握ると、目を閉じて静かに祈る。

「お願い…咲いて…」

すると一度失われた光が、再び光りだす。

その光は枯れかけていた樹を包むと、樹は元気を取り戻し満開の花をつけた。

「す、すごい…」
「こ、こんなことが…」
「今のは治癒術なのか…」
「これは夢だろ…」
「ありえない…でも…」

村人たちが感激の声を上げている横で、エステルは地面に座り込んだ。

「はあ…はあ…」

「お姉ちゃん!すごい!すごいよ!」

「ありがとね!ハルルの樹を元気にしてくれて!」

にこっと笑う子供を見て、エステルもそれに応えるように軽く微笑んだ。

「ありがとうございます。これで、まだこの街もやっていけます…」

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あきゅろす。
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