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Tales of Vesperia
記憶のかけら
男性がこちらを振り返りながら言った。

「それもまた真理、か……」

そう言って去るつもりだったのだろう。

歩こうと一歩踏み出した足が、止まる。

「………?」

男性はミレイを見て、軽く目を見開いた。

だけど、それは一瞬のことで。

男性は服の中から、何かのかけらを取り出すと、ミレイに見せた。

「…これは?」

「…記憶のかけら。…おまえの記憶が入っている」

「…私の…記憶…?」

男性からそれを受け取ろうとして、ミレイは手を伸ばした。

それに手が触れた瞬間、それは光の粒となりミレイの中に消えていった。

「……っ」

同時にミレイの瞳から涙が溢れる。

「…あと3つ。…見つけたら渡しに来よう」

男性はそう言うと、ミレイの横を通り過ぎる。

ミレイは軽く下を向いて、何かを呟いた。

それは私たちには聞こえなかったけど、男性には聞こえていたらしい。

やがて男性が去った後、私はミレイに声をかけた。

「大丈夫…?」

その声を聞いて、ミレイは急いで涙を拭う。

「大丈夫だよ。ほら、行こ」

にこりと笑う姿は、いつものミレイだった。

「…そうだね。よし、みんな行こ!」

そう言って歩き出すと、ミレイがいきなり立ち止まった。

「どしたの?」

「…梯子」

みんなして忘れてた、という顔をする。

ミレイはそれを見て、ニッと笑って言った。

「お先にっ!」

地面を蹴る音がしたあと、ミレイが飛び降りたことに気がつく。

「ちょっ…!」

思わず手を伸ばすが、それよりも早く落ちていく。

「いつものことだろ?ほら、俺たちも行くぞ」

ユーリはミレイが着地したのを見ると、同じように飛び降りた。

「ユーリ!」

ユーリが着地する場所に、ミレイが丁度立っていた。

ミレイは気づく気などまったくなく、ただ突っ立ってるだけ。

「だ、大丈夫でしょうか…?」

エステルが心配した時には、ほぼ激突寸前。

その瞬間、ミレイが一歩前に出る。

ストッとユーリが着地したときには、ホッとした。

「シヴィリア!エステル!早く下りて来なよ!」

下から聞こえてきたミレイの声に、私は軽く微笑む。

「うん!行こう、エステル!」

「はいっ!」

さすがに二人のように飛び降りることはできなくて、梯子を伝って下りて行く。

「飛び降りても平気だよ!ユーリの部屋の窓から飛び降りるのと同じだって!」

「…いや、こっちのほうが二倍くらい高いぞ」

ミレイとユーリの会話を聞きながら、私とエステルは下りていく。

「…さっきの人、何だったんでしょう?ミレイの知り合いでしょうか?」

「んー。まあ、暑いと変なのが増えるって言うしね」

「暑い……です?」

私は先に下りて、そう言うエステルに手を伸ばした。

エステルは嬉しそうに微笑むと、その手を取ってストンッと下りた。

「ハルルに行くために、砦を通りましょう?」

「うん」

そう言って私たちは砦を抜けるために歩き出した。

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あきゅろす。
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