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Tales of Vesperia
結界の外へ
下町に来てからいろんな事があった。

そんな下町も少しの間、見納めか。

「ユーリ・ローウェ〜ル!!よくもかわいい部下を二人も!お縄だ、神妙にお縄につけ〜!」

「やばっ!ユーリ!」

私たちは素早く立ち上がると、ユーリの元へと走った。

「…ま、こういう事情もあるからしばらく留守にするわ」

ハンクスじぃさんはやれやれ、と楽しそうな感じで言った。

「これで金の件に関しては貸し借りなしじゃぞ」

辺りを見渡すと、みんなそれぞれ楽しんでいた。

これから起こる出来事が読み取れる。

「頑張れー」

「年甲斐もなくはしゃいでぽっくりいくなよ?」

「はんっおまえさんこそのたれ死ぬんじゃないぞ」

ユーリは私たちの方を見ると、下町の出口に向かって走り出した。

「ちょっと…!ユーリ!またね、じぃちゃん!」

そう言うと、ミレイも走り出した。

「気をつけるんじゃぞ、ミレイ」

それを見たエステリーゼはハンクスじぃさんに向き直った。

「おじいさん、私も行きます」

「あやつの面倒を見るのは苦労も多いじゃろうが、お嬢さんも気をつけてな」

「はい。ありがとうございます」

エステリーゼはお辞儀をすると、走り出した。

「じゃあ、私もそろそろ行くね」

「あやつらの事、頼むぞ」

「わかってるって」

そう言って、行こうとした。

「シヴィリア」

突然、呼ばれて振り向く。

「必ず、帰って来るんじゃよ」

「うん!」

ユーリたちを追って私も走る。

それを見たハンクスじぃさんは、みんなに合図を送った。

同時に下町の住人が雪崩のようにルブランを襲った。

「騎士さま、噴水はいつ直るんですかい?」
「騎士だ、かっこいい〜♪」
「ばあさんの入れ歯を探してもらえんかの?」

その光景を見ながら、私はユーリの隣に並んだ。

「ばかも〜ん!通れんではないか!公務の妨害をするでな〜い!」

みんな揃ったから、行こうとした。

すると。

「ちょっ…」
「まっ…」

次の人の流れに、巻き込まれた。

「進めないよー」

「嬢ちゃんたちを泣かせるんじゃないよ!」

「なに勝手なこといってんだ。……ってちょ、押すなって!今叩いた奴、覚えとけよ!」

人混みに紛れて、ユーリに好き放題する人たち。

「シヴィリア、ミレイちゃん。これ、持っていきな」

どこからか現れた物を受け取る二人。

「ありがと!」
「あ、ありがと」

なんとか、人混みを抜ける事ができた。

「ユーリさんたちは皆さんに愛されてるんですね」

「冗談言うなよ、厄介払いができて嬉しいだけだろ」

「…ね、ユーリ。それ」

ミレイはユーリの腰にいつの間にか下げてあった袋を指差した。チャリチャリと金属音がする。

「おい、誰だよ、金まで入れたの!こんなの受け取れるか!」

返しに戻ろうとすると、ルブランがこっちに走ってきていた。

「仕方ないから行くよ!」

ユーリは素早く袋をしまうと、走り出そうとした。

ガシャンッと後ろから音がして、振り向く。

「な、なにごとだ!」

「ラピード!」

「ラピード…狙ってただろ。おいしいやつだな」

エステリーゼは不思議そうに首を傾げて言った。

「犬?」

「じゃ、まずは北のデイドン砦だな」

「え?あ、はい!」

エステリーゼの視線がユーリへと動く。

「どこまで一緒かわかんねぇけど。ま、よろしくな、エステル」

「はい。……え?あれ?…エス…テル?エステル、エステル…」

悩んでいたエステルは、ぱっと顔をあげて微笑んだ。

「よろしくお願いします、ユーリ、シヴィリア、ミレイ」

私たちはそれを微笑みで返した。


「しばらく留守にするぜ」

「いってきます」

「必ず取り返してくるから!」

「待っててね」

みんなそれぞれ挨拶を済ませると、結界の外へと旅立った。

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あきゅろす。
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