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Tales of Vesperia
城からの抜け道
「ほんとにそれだけ、……手、ありがとな」

「い、いえ、これくらい」

エステリーゼは少し頬を赤く染めて、微笑んだ。

「じゃあ、行こうか?」

滑り落ちるようにユーリたちは降りていく。

ミレイはそのまま飛び降りたようで、スタッと綺麗に着地した。


「…これが、魔物?」

ネズミがそこら辺で動いている。

タッと私とミレイはユーリたちの前に出た。

「先手」

「必勝!」

私とミレイは詠唱を始める。

それに気づいてたくさんのネズミが集まってきた。

「焔よ!ファイアボール!」
「ぶっ飛べ!ファイアボール!」

二人が放った火の玉はネズミの群れを直撃して、ぶっ飛ばした。

「速いですね」

「俺たちの出る幕無し、だな」

「そうですね」


「うお、まぶしっ…」

なんだかんだと、地上へ出た私たち。

確かにモルディオの屋敷の女神像と繋がっていた。恐るべし、推測力。

「朝、かぁ〜」

「そんなに時間たったっけ?」

「一晩無駄にしたな。しかし、本当にここに繋がってるとはな」

ユーリは周りを見渡しながら言った。

「そうですよね。それにしても、窓から見るのと全然違って見えます」

辺りを見回すミレイを見ながら、エステリーゼは微笑んだ。

「そりゃ大げさだな。城の外に来るのが初めてみたいに聞こえるぞ」

ピクッと肩を揺らしたエステリーゼ。

「…そ、それは…」

そしてそのまま、俯いてしまった。

「お嬢様なんだから好き勝手に出歩けない、とか」

ミレイはエステリーゼの方を振り向きながら言った。

「は、はい、そうなんです」

「…ま、とりあえず脱出成功ってことで」

ユーリはスッと右手を上げる。

エステリーゼはその手のひらに人差し指をちょんっと当てた。

「…あ、ははは」

ユーリは困ったような笑顔をした。

「あ、あの、何か間違えました?」

「いや、別にな。シヴィ、ミレイ」

ユーリはもう片方の手も上げる。

それを見た私とミレイはくすっと笑ってしまった。

「エステリーゼ、こうやるんだよ」

パンッ

私はユーリの右手に、ミレイはユーリの左手にハイタッチをした。

「そうやるんですね…」

「やってみるか?」

「…そうしたいんですけど、早くここから動かなくてはいけませんし」

エステリーゼは悩みながら微笑んだ。

「今度、教えて下さい」

「…わかった。行くぞ」

「はいっ!」

「了解」

「うんっ!」

目指すはとりあえず下町。

私たちはゆっくりとその場から離れた。

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