天使の梯子をのぼったら ページ:5 確かにクラスでの甲斐の行動でおかしな所はひとつもない。 多分この違和感を感じているのは、俺だけだろう。 それを何と説明すれば良いのかわからない。 「綺麗な青空だねぇ、飛びたったら気持ちよさそうだ。そう思わない? 穂稀」 おい。 人の返事を待たずして、何が始まったんだ? からっぽになったランチボックスを確認した甲斐は、一足先に教室に戻った──はずだった。 「あれ? 甲斐……は?」 「帰ったけど」 しれっと返してくる折沢に「帰った?」と変な聞き返しをしてしまった。 「あ。そうそう、糸川あてに甲斐ちゃんから手紙預かってたんだわ」 この端末全盛期に手紙とは、レトロな。 それよりさっきまで一緒にいたんだから、言いたいことがあるならその時言えば良いのに。 そんなことを思いながら、手渡された手紙とやらを開いて、そのまま消えたくなった。 『穂稀へ 所用ができました。名残惜しいのですが、今日は先に帰ります。 愛をこめて。 カイル』 「…………」 毎日午後から早退できる所用って何? 『愛をこめて』? ……愛? カイル?って誰? おまえの名前、甲斐じゃねえのかよ、ブレブレじゃんかよ……。 「糸川? どした、おまえ顔白いよ?」 その上、読み終わった手紙は塵になって消えた。 「……お祓い、行くべきかも」 もう嫌、この訳の分からなさ。 俺も帰りてえ! [*前へ] [戻る] |