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分断された海の片隅で:隻眼ヲ級の証言/Emily's Report ZERO若しくは序章
疑念と信用と信念と
 2###/##/##:店舗裏応接室室・茶房“台北洋風茶房”・某商店街・台北・台湾


 台湾茶房棲姫に案内された地下の倉庫で火焼山で物資の補充の序でに託された活動資金や艤装用資材等を艤装内から転送で引き渡したエミリー一行は階段を登って応接室へと戻った。
 尚、引き渡しのの際エミリー達は地下倉庫を増築する際に人間の生活インフラを破壊しない様に掘り進めるのは苦労した等の話を台湾茶房棲姫から聞かされたりしたのだが、今回その辺の描写は割愛させていただく。

 「はい、お疲れ様。」

 再び着席したエミリー達と相対する様に自身の席の脇に立っている台湾茶房棲姫がエミリー達に労いの言葉を掛ける。

 「まあ、折角だから少しゆっくりして行きなさいな。」

 台湾茶房棲姫がそう言うとどこからともなく黒のゴシックロリータ風ドレスに白いエプロンと云う女給めいた衣装を着た戦艦タ級がエミリー達と台湾茶房棲姫に対して茶を淹れ始める。
 ぱっと見た限りでは至って普通の濃い目の紅茶、若しくは烏龍茶と言った所か。

 「さあ、どうぞ。」

 女給姿の戦艦タ級が茶を淹れ終えてそのまま消える様に退室すると、台湾茶房棲姫は淹れられた茶を薦めた上で先ずは自らが一口啜って見せる。

 「一応、こういう時の持て成し方の作法には則ったわよ。」

 台湾茶房棲姫は相手を信用させる為に淹れられた茶を先ずは自分から口にしてみせる。
 最もその言葉には自身が深海棲艦である以上それでも信用ならないであろう事は百も承知である事を含んだ物言いではあるのだが。

 「解った。」

 それだけ言うとアルフレッドがエミリーに先んじて淹れられた茶を口に入れる。
 アルフレッドが口にした上での第一印象は煎じたばかりの烏龍茶であった。
 口にしてから暫く沈黙が応接室を支配する。
 自身の体調に変化が無いのを確認したアルフレッドは続けて二、三回程更に啜る。

 「ああ、これは只の烏龍茶だな。」
 「これで少しは信用していただけたかしら?」

 アルフレッドが出した結論に台湾茶房棲姫が軽く笑みを浮かべながら確認の言葉を紡ぐ。

 「あっ、そうなんだ……それじゃあいただきます。」
 「どうぞ。」

 それを見たエミリーも息を吹き掛けて冷ましながら飲み始める。
 一部の特殊嗜好の方々にとってつまらない結論を言えば出されたのは本当に只の淹れたての温かい烏龍茶である。
 無論エミリーもエミリーで不用心な気もするのだが、彼女にしてみれば日本領海線付近の時の様にここで毒を盛られて倒れれば自分はそこまでだったのだ、いった所なのだろうか。

 「そうね……何か聞きたい事有る?」

 不意に台湾茶房棲姫がエミリー達に話の切っ掛けを振ってくる。

 「内容に因っては対価は戴くわよ?」

 台湾茶房棲姫がその笑みを不敵な物に変えながら左手の親指と人差し指で輪を作り、振って来た話題の内容如何によっては何らかの対価が必要な事をエミリー達に示す。

 「そうだな……この二人に今の深海の派閥をより詳しく説明して貰おうか。」

 それに対応する様に隻眼ヲ級(分霊)が台湾茶房棲姫に情報の提供を促す。

 「ふーん……で、賢者様はその二人に何処まで説明してあるのかしら?」
 「我らが人の総意から生まれた事、故に三つの派閥に別れている所迄は説明してある。」

 何処から説明をすれば良いのか確認の為の質問を行う台湾茶房棲姫に隻眼ヲ級(分霊)は深海棲艦の起源と三つの派閥に別れているのは教えてある事を伝える。

 「じゃあ、無所属・徹底抗戦派・穏健派についての更なる説明と私達絡みの現象についてお二人にお話すれば良いのかしら?」
 「ああ、それで良い。」

 台湾茶房棲姫からの回答に隻眼ヲ級(分霊)は肯定の言葉を返す。

 「そう……じゃあ私達その物についてから話すわ。」

 台湾茶房棲姫はそれを受けて先ずは自分達深海棲艦そのものについての説明から始める事をエミリー達に伝えた。


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