分断された海の片隅で:隻眼ヲ級の証言/Emily's Report ZERO若しくは序章 霜川富次編:Girl's Meeting from “Takao”'s seaplanehanger 2###(着任四年目)/12/23:M海域・学園艦の幻影出現地点近海・高雄(艦これ)実艦化形態・船体後部・水上機用格納庫 明石(艦これ)(分霊)の目の前で艦橋と繋がっていた仮想表示版がブラウン管テレビの電源が切れた時の様に消滅する。 「あ〜筆頭秘書艦様の機嫌を損ねちゃったか。」 その様子を見た夕張(艦これ)41460141がそう言いながら肩を竦める。 明石(艦これ)(分霊)が来る迄は彼女が整備妖精に指示を出しながら所属艦娘達の艤装の整備や何等かの理由に因って明土第七七四集積地鎮守府預かりとなった特殊艤装の解析等を一手に引き受けていた明土第七七四集積地鎮守府の整備主任であった。 「夕張さん、霜川提督用のMサイズ強化服の改修作業は?」 明石(艦これ)(分霊)が夕張(艦これ)41460141に米軍が霜川提督に無期限貸与(という名の実質的譲渡)されたレールガンランスを主兵装とし、最終的に不採用とされたMサイズ強化服の改修作業の進捗について尋ねる。 「装甲の全交換にレールガンランスは同じガワの超射程ビームランチャーに、背中の左右の防御用可動式防盾兼レールガンランス用補助ユニットを装甲と同系統の外観を持つ飛行用ブースターユニットに各々変更するだけだったんだけど、いやああんなにめんどくさくなるとは思わなかった。」 夕張(艦これ)41460141の言葉から察するに骨格以外は全交換な魔改造も良い所な改修作業はこの場に持ち込んで作業を行う程に難航していた様だ。 「いや、いきなり陸戦重視な重装甲型から緊急迎撃用に飛行も可能な拠点防衛機体って無茶も良い所なんですけど……。」 改修内容の余りの無茶振りに突っ込みを入れる明石(艦これ)(分霊)。 「まあまあ、明石さんには感謝してますって。」 「で、あれ霜川提督の案?」 明石(艦これ)(分霊)は改修内容が誰の案なのか夕張(艦これ)41460141に問う。 「私の案ですが何か?」 明石(艦これ)(分霊)からの問いにしれっと答える夕張(艦これ)41460141。 「いやだって装甲は騎士を題材にして分厚くしているのに隙間だらけ、陸上での機動力もそれほどでも無い、挙げ句の果てに肝心のレールガンは一度は失敗に終わったズムウォルト級用のヤツを無理矢理小型化したのを補助ユニットに連結してようやっと使用出来る様にした物、あれでどうしろと?」 まるで無茶振りな改修内容に対する言い訳をするが如く一気にまくし立てる夕張(艦これ)41460141。 「それだったらいっそより騎士然とした美しい装甲外観に大型の盾、騎兵槍は大幅に軽量化出来る長距離ビームランチャー、そして艦娘達に対する随伴・先駆けを可能にする背部飛行用ブースターを施した高機動機にして使える様にした方が良いじゃないですか。」 夕張(艦これ)41460141は更に熱く語る。 「いや、そこまでやるなら例えモンキーモデルでもファイテック・アーマースミス製の制式機貰った方が早い様な……そもそも今ボクカワウソと共に売り出し中のキリン改二、あれ本当はオ……」 「それも良いでしょうけど現時点でそれらを貰うなり買える保証は何処にも無いしある物で何とかするしかないでしょ、それに外観に関しては将来武蔵(たけぞう)さんが二代目霜川提督に就任した時の事も考えて有るのですよ。」 若干引き気味に反論する明石(艦これ)(分霊)にも夕張(艦これ)41460141は両手を各々腰に添えながらドヤ顔で答える。 尚、ここで言う武蔵(たけぞう)さんとは明土第七七四集積地鎮守府の武蔵(艦これ)の事であり、彼女はカッコカリでは無い養子縁組みによって霜川・武蔵(たけぞう)の名前と戸籍を得て現在提督(艦これ)見習いとして研修中の身となっている。 「あっ、はい、そうですね。」 その無駄に自信満々な様に半ば呆れ気味に肯定の返答を返す明石(艦これ)(分霊)。 「それにしても此処の高雄さんは珍しいね、お相手がアラフィフのお爺さん一歩手前のオッサンと云うのは。」 明石(艦これ)(分霊)が話題を半ば無理矢理変えんとばかりに幾つかの鎮守府を見て回って来たかの様な口調で他の鎮守府の高雄(艦これ)のかなりの数の個体がショタコンであった事を根拠に高雄(艦これ)41457816をそう評する。 「ウチの高雄さん流石に土下座されるとは思ってなかったみたいで、その辺りから気になり始めて今では霜川提督が我慢出来なくなって自分を押し倒して云々と言う設定で一人い……」 「余りに下品な猥談は遠慮して下さるかしら。」 夕張(艦これ)41460141が愛宕(艦これ)31251720から聞いた高雄(艦これ)41457816の性欲処理事情を暴露しようとしたのを制しながら歩み寄って来たのは熊野(艦これ)(水野・優奈)であった。 「明石さん、チィーッス!」 熊野(艦これ)(水野・優奈)の隣にいた明土鎮守府方式の制式実装されたばかりのサンタ少女な姿のクリスマスmodeな鈴谷(艦これ)(水野・結衣)が人差し指と中指を立てた右手を自身の頭部の辺りで左から右へと振りながら明石(艦これ)(分霊)に挨拶を送る。 さん付けな辺りはやはり元富裕層の子女(三女)といった所か。 「どうも、鈴谷さん。」 「どうも、熊野さんはお堅い人が多いなあ。」 明石(艦これ)(分霊)は鈴谷(艦これ)(水野・結衣)に、夕張(艦これ)41460141は熊野(艦これ)(水野・優奈)に各々返事を返す。 「そうだ、鈴谷さんと熊野さんはどうします、あれ提督から最上さんや三隈さんにも了承を得た上でなら使っても良いって許可は得ましたけど。」 明石(艦これ)(分霊)が猥談について追求を逸らすかの様に件の全部乗せ背部追加型OT艤装の使用許可が出た事を装備を削る様言われた事は敢えて伏せた上でやって来た二人に伝える。 「鈴谷、あれ重そうだから嫌なんですけどぉ。」 それを聞いた鈴谷(艦これ)(水野・結衣)はあからさまに不平を口にする。 「でもウチの提督は今回は突入するなら最初から制限解除するつもりらしいですから装備して貰わないと伊勢さん日向さんが突出してしまうので装備していただかないと。」 そんな鈴谷(艦これ)(水野・結衣)に明石(艦これ)(分霊)は今回の任務は突入する場合は最初から制限解除を行う事から伊勢(艦これ)3990858と日向(艦これ)3990869の随伴を務めるには件の全部乗せ背部追加型OT艤装の装備が必要不可欠である事を説く明石(艦これ)(分霊)。 「それについてなんだけどさ。」 そこへ最上(艦これ)(水野・舞)と三隈(艦これ)(水野・葵)が会話に割って入る様にやって来る。 「明石さん、私達と相談の上で装備を削って、という点を伏せたままというのはどうかと思いますわ。」 続けて三隈(艦これ)(水野・葵)も明石(艦これ)(分霊)が伏せていた点を指摘しながらその事をたしなめる。 「いやあ、その、ほ……」 「今男のロマンを持ち出されるのは作戦行動的にも悪手ですよ?」 「あ、でも今から僕から誰の何の装備を削るか言うからそれで行こうよ。」 尚も食い下がらんとする明石(艦これ)(分霊)に指摘と提案の合わせ技で説き伏せ返す最上(艦これ)(水野・舞)と三隈(艦これ)(水野・葵)。 「むぅ〜。」 たまらずむくれる明石(艦これ)。 この辺り、彼女も余り夕張(艦これ)41460141の事をどうこう言えた義理では無いらしい。 「明石さん、装備を使用者が使いやすい様に最適化させるのも甲勲章持ちの工作艦娘の腕の見せ所ですよ。」 そんな明石(艦これ)を三隈(水野・葵)が宥める。 ある意味見事な阿吽の呼吸による説得だと言えよう。 「先ず僕と鈴谷は基本羽根付きのブースターにでっかい剣か大砲のどちらかを選択出来る仕様で。」 「え〜。」 続けて告げられた最上(艦これ)(水野・舞)からの明石(艦これ)への仕様要求に鈴谷(艦これ)(水野・結衣)が嫌そうな顔をする。 「結衣、ここは我慢してよ、状況に応じて瞬時に装備や艤装の形態変えれるの僕と結衣だけだからさ。」 「じゃあ帰ったら本土の洋菓子店巡りね、絶対だからね!」 「うんうん、良いよ。」 最上(艦これ)(水野・舞)からの艦娘としての名前、所謂TACネームでは無く本来の名前で頼まれた鈴谷(艦これ)(水野・結衣)は未だその表情は不機嫌気味ながらどうやら対価を認めさせる形で自身を納得させた様だ。 「で、三隈と熊野には背中のブースターと付属の粒子加速剣発振機二振りの一式のみで、砲雷撃に関しては制式の艤装の装備でも十分だからね。」 鈴谷(艦これ)(水野・結衣)の了承を確認した最上(艦これ)(水野・舞)は続けて三隈(艦これ)(水野・葵)と熊野(艦これ)(水野・優奈)の仕様を明石(艦これ)に告げる。 基本的に公表されている時報と云う形での艦娘紹介を聞く限り最上(艦これ)はどちらかと云えば所謂だらし姉なのだが、最上(艦これ)(水野・舞)は最上(艦これ)である前に水野・舞である事を選び、公の場以外ではそう在り続けていると云う事か。 「解りましたわ。」 「承りましてよ。」 最上(艦これ)(水野・舞)からの指示に対して三隈(艦これ)(水野・葵)と熊野(艦これ)(水野・優奈)はごねる事なく了承する事を伝える。 「解りました、じゃあ夕張さんも手伝って下さい。」 「はいは〜い、じゃあちゃっちゃと始めますか。」 明石(艦これ)(分霊)は最上(艦これ)(水野・舞)からの指示を書き留め終えると夕張(艦これ)41460141に手伝う様促し、夕張(艦これ)41460141もそれに同意を示す。 「皆さんに伝えたい事が有ります」 そこへ霜川提督からの音声による艦内放送が格納庫に響き渡る。 [*前へ][次へ#] |