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分断された海の片隅で:隻眼ヲ級の証言/Emily's Report ZERO若しくは序章
お金も有るに越した事は有りません。
2###/##/##:艦内食堂・隻眼ヲ級擬艦化形態・公海上・太平洋

 擬艦化した隻眼ヲ級へと誘われてはや数日が経ち、アルフレッドは普通の現代の艦船のそれな内装の艦内食堂にてエミリーの幻影と向かい合う様に着席、固形栄養食をミネラルウォーターで流し込んでいた。
 尚、エミリーが幻影なのはその身体が擬艦化形態時の制御中枢のSF的な外観の生命維持装置に保存されているからである。
 エミリー曰く、先ずは台湾へと向かい、そこで食料を調達する予定との事。

 「…で、その為の資金は有るのか?」

 それを聞いたアルフレッドの至極当然な質問。

 (その辺は心配無い、地球の表面積の七割は海、そして私は深海棲艦、後は解るな?)

 アルフレッドの問いに答えるかの如く隻眼ヲ級(分霊)の言葉がアルフレッドの心に響く。

 (深海の有り余る資源のほんの一欠片を持ち出した、と云う事か…。)
 (正確には情報収集活動資金という名目の同胞からの餞別、と云った所だ。)

 この念話、端から見ているとアルフレッドがじっとしている様にしか見えず、場所に因っては怪しさ全開なのは否めない。
 その懸念は文明の利器とマジカルな力の融合である程度解決する事になるのだが、それはもう少し先の話となる。

 (…一体お前達深海棲艦は何なんだ?)
 (その辺は私とエミリーの旅に付き合って行く中で何回かに分けて教えよう。)

 アルフレッドの更なる問いに隻眼ヲ級(分霊)から提案がなされる。

 (その辺は駆け引きの初歩且ついきなり全部教えても憶え切れないだろうからな。)

 その隻眼ヲ級の念は不敵そうな笑みを浮かべているかの様に感じられた。

 「ヲっちゃん、そんな高圧的な喋りじゃお兄さんに失礼だよ。」

 そんな隻眼ヲ級(分霊)に対し念話である事などお構い無しにエミリーが艦内放送用のスピーカーからの音声と云う形でたしなめる。

 (いや、舐められても駄目だろう、そこは。)
 (いやいや、せっかく一緒に旅するんだから、もうちょっと仲良くしようよ。)
 (お前、自分が思春期の少女で相手が成人男性と云う事も考慮した方が良いぞ。)
 (大丈夫だよ、何となくだけどお兄さんはヲっちゃんが言いたい事はしない気がするんだ。
 後、今のヲっちゃんの発言はある意味お兄さんに対するセクハラだよ?)
 (…その前に一つだけ言って置く、私をヲっちゃんと呼ぶのを止めろ。)
 (えー、可愛いから良いじゃん。)

 気が付けばエミリーと隻眼ヲ級(分霊)による念話での掛け合いと化しており、それに対してアルフレッドはそんな二人の掛け合いを聞きながら発言の機会を伺う。

 「二人とも良いだろうか…取り敢えず、資金的な問題は無い事だけは解った、有難う。」

 流石にうんざりしていたのか、アルフレッドは少し強引に話の流れを切った上で二人に質問への返答に対する礼を述べる。

 (そうか…私は船体の制御と警戒に集中する事にしよう、何か有ったら呼んでくれ…出来ればさん付けだと精神的に助かる。)

 隻眼ヲ級(分霊)が念話でそう告げるとアルフレッドは艦内食堂から気配が一つ感じられなくなった事に気付く。

 「それで、この艦での生活には慣れたくれた?」

 いつの間にか両肘をついて組んだ手の甲に顎を乗せる仕草をとっていたエミリーの幻影が不意にアルフレッドの方を見つめながら彼に問い掛けた。




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