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明土第七七四集積地鎮守府にて:第二部
2###年(着任五年目)06月初旬:南太平洋・M海域・明土第七七四集積地鎮守府・個人用地下工廠
 程無くして湯呑み二つと急須を載せたお盆を手にテーブルに戻ってくると、明石(艦これ)(分霊)は湯呑み を霜川提督と自身の前に置く。
 そして急須から日本茶を各々の湯呑みに注いで行く。
 日本茶を注ぎ終えた明石(艦これ)(分霊)は改めて先程迄座っていた椅子に座ると自身の方の湯呑みを両手に持って息を吹き掛けた後に少し日本茶を啜る。
 大変失礼に当たるのかも知れない行為だが、これは自身が淹れた飲み物を先に飲む事によってその飲み物に毒が入っていない事を相手にその身を以て示す作法である。
 最もこれは丁度一年前に訪れ、時雨(艦これ)4622010が少なからず影響を受けたとある(異世界線の)鎮守府の関係者から教唆して貰った事の一つの受け売りなのだが。

 「さあ、どうぞ。」

 明石(艦これ)(分霊)が霜川提督に日本茶を勧める。

 「それでは。」

 霜川提督も促されるままに湯呑みを手に取り口許まで持って行くと数回息を吹き掛けた後に少しだけ啜る。

 「先程は私が何故この鎮守府に来たのか迄お話しました。」

 更に日本茶を啜りながら明石(艦これ)(分霊)がどこまで話したのかを確認する様に再び霜川提督に語り掛け始める。

 「次は対OT艤装用特火重粒子砲その物についてお話ししておきましょう。」

 明石(艦これ)(分霊)の言葉に霜川提督は軽く縦に振る事で了承の旨を伝える。

 「先ずその外観はOT艤装用の装備のそれですが、実際は科学と魔法、そして霊的な力の複合型です、要は制式の艦娘用艤装に近い物だと思っていただければ大体合っています。」

 それを受けて明石(艦これ)(分霊)はざっくりとでは有るが、対OT艤装用特火重粒子砲がどういう原理の装備であるかを霜川提督に告げる。
 その身に着けている由来となった実艦が一定の馬力を有している艦娘なら誰でも一発は全力での照射が可能な理由を感覚的に感じ取った霜川提督は軽く首を二回縦に振る。

 「故に霊的な施錠によって所有者となる艦娘以外の艦娘がその対OT艤装用特火重粒子砲……長ったらしいからバスター砲って言いますね、を使用する事は出来無い様になっています。」

 更に彼女は悪用を防ぐ為に霊的な力を使った安全装置がついている事を霜川提督に告げる。

 「所有者が死んだり、力づくで奪われ掛けたりした場合は自壊して消滅する様になっています。」

 どうやら強奪・被轟沈対策も万全らしい。

 「例外は所有者が認めた対象となりますが、それでも最大出力での照射は明土鎮守府方式の制限解除か従来型の鎮守府運営方式ならケッコン艦娘のみとなります。」

 その上でICBMやSLBMのそれ程では無いにしても、全力照射には更なる条件が必要と云う事か。

 「それらの手続きが必要な最大出力での照射以外にも翔鶴さんに渡したバスター砲には4つのモードで使用する事が出来ます。」

 どうやら対OT艤装用特火重粒子砲は軍用の銃火器と同じ様に複数の使用方が存在するらしい。

 「一つ目は安全モード、実弾銃火器の安全装置を入れているのと同じ状態ですね。」

 これは暴発を防ぐ為にも必須だと言える。
 最も、実在する銃器の中には意図的に最初から安全装置を付けていない物もあるのだとか。

 「二つ目はある程度の威力の重粒子弾を単発で撃ち出す単射モード、これは戦艦娘や正規空母艦娘、また威力や射程は落ちますが軽空母艦娘や重巡洋艦娘でも使用可能です、でも理由は後で説明しますが艦娘としては制式武装の主砲で砲撃した方が確実で効率も良いと思いますよ、多分。」

 何とも引っ掛かる物言いだが、説明待ちか。 

 「三つ目は低出力で重粒子弾を連続照射する分隊支援火器モード、これは海上並びに深海棲艦に対しては明土鎮守府方式の艦娘用制式武装の副砲と同じ威力を有していて、副砲を装備出来る艦娘なら誰でも使用出来ます。」

 これは海上(水上)機動歩兵としての艦娘の運用を見越したモードだろうか。
 説明を聞く限り明土鎮守府方式の副砲でも連射速度はともかくある程度の代用は可能であるとも云えるのかも知れない。

 「最後の四つ目は一定威力の重粒子を持続的に照射しながら薙ぎ払う事で照射距離内の一定範囲を薙ぎ払う対面制圧モード、通称ギロチン・バーストモード、これは正規空母艦娘や軽空母艦娘を始めとする攻撃可能な艦載機を運用する艦娘のみが由来となった実艦の馬力に比例した効果で使用する事が可能です。」

 霜川提督は最上型姉妹が以前似た様な事を某ロボアニメの全部乗せ装備なOT艤装の大型ビーム砲でやっていたのを思い出す。

 「でも、全力照射以外は何れも艦娘の制式艤装でやった方が効率と確実性の面から言って良いんですけどね……特に明土鎮守府方式なら。」
 「それは一体……ああそういう事ですか。」

 どういう事なのか問いかけた所である事に気付く霜川提督。

 「対OT艤装用特火重粒子砲は指向性エネルギー兵器、海の上では湿気や水分によって威力は大幅に減衰される、で良いんですよね、明石さん。」

 霜川提督が明石(艦これ)(分霊)に念を押すように答える。

 「概ねそれで合ってます、夜戦では自ら位置をばらす様な物、も加わりますが。」

 明石(艦これ)(分霊)は霜川提督からの回答に是としつつも発射時の閃光は特に夜間戦闘では相手に自身の位置を特定される危険性が高い事を付け加える。

 「何よりエネルギー、即ち艤装用の燃料の消費が馬鹿にならないんですよ。」

 更にある意味鎮守府運営にとって最も重要な問題点を挙げる明石(艦これ)(分霊)。

 「それらを物ともしない低い減衰率や火力を叩き出す指向性エネルギー兵器やそれらを装備したOT艤装を作れるのはかの“霧”やどこぞのPMCのメカデザイナーの名を名乗っている提督さん位でしょう、もしかしたらアメリカの某社のギーク達が次世代強化服用の装備でその内作れるか、位ですかね。」
 「あのPMCの提督さん、本人何ですかね?」
 「さぁ?」

 例外的な装備を作れそうな者達を持ち出した所で投げ掛けられた霜川提督からの質問に明石(艦これ)(分霊)はただ肩をすくめてみせる。

 「個人的見解で宜しいのでしたら、もし本人なら某ロボアニメシリーズの初代主人公機の頭部そのままな被り物をせずともグラサン掛けるだけで済むのでは無いんじゃ無いのかな、と云う気はしますけどね。」

 その上で明石(艦これ)(分霊)個人的見解を霜川提督に答えてみせる。

 「それかそうしなければならない事情があるか、ですかね。」
 「それはあのPMCの提督さん本人のみぞ知る、ですかね。」

 話が脱線し掛けているのを察したのか二人はそう締め括る。
 最も、この後話が大幅に脱線する事になるのだが。

 「話を元に戻しますと、更に指向性エネルギー兵器は射線が真っ直ぐですから予測回避されやすいんです、況してや深海棲艦なら海に潜られたらお手上げですよ?」

 明石(艦これ)(分霊)は話を元に戻すべく更なる指向性エネルギー兵器の問題点と深海棲艦側が採り得る最も簡単な対策を挙げる。

 「況してや古式ゆかしき海戦の作法に則って戦っている訳では無いのですから鬼・姫級なら更に予測回避や撃った側に対する円周運動での回避を平然として来るでしょうね。」

 更に深海棲艦の上位種である鬼・姫級が更に採り得る手段にも言及する明石(艦これ)(分霊)。

 「よしんばそれで圧倒出来たとしてもそれは更なる無念・妬み・怨みといった府の感情を急激に増大させて怨念然とした無所属の出現率の増大を促し、下手すれば……って云うのを明日式神転移で一旦横須賀鎮守府を経由して海の向こう側のサンフランシスコ鎮守府に行って説明してくるんですが、そういうのもあるからOT艤装は不味いんですよね〜。」

 そう言って明石(艦これ)(分霊)は溜め息をつく。

 「只指向性エネルギー兵器の利点も有りまして、技術の向上に伴う火力の上昇と装備の軽量化が容易な事、初速が速いので普通は命中率が段違いな事、そして兵站管理の一元化の三点を挙げて置きますが今回は話の主旨から外れますので詳しい説明は省略します。」

 指向性エネルギー兵器の利点も挙げておく辺り、この明石(艦これ)(分霊)も気配りの出来る個体なのかも知れない。

 「色々話が長くなりましたが、特火重粒子砲に関する説明は一旦ここまでとします。」

 流石に話が長くなってしまったのを自覚したのか、一旦説明その物を締め括る明石(艦これ)(分霊)。

 「まあ、ここの適性持ちな艦娘の為以外には作る気は……いえ、作らない事を此所に誓いましょう。」

 その上で明石(艦これ)(分霊)は対OT艤装用特火重粒子砲を広めない事を誓う旨を伝える。
 それは自身を生み出した(この物語の世界線の)オリジナルの明石(艦これ)の意思を自らも尊重する事を誓う事も意味していた。

 「同時に胆に命じて置いて下さい、貴方は核程では無いにしても、いえある意味では核以上の力を使える様になってしまった、と云う事を。」

 それまでからは一転して真剣な面持ちで霜川提督に語り掛ける明石(艦これ)(分霊)。

 「また厄介な……いや、力には責任、或いは義務を伴う、という事ですか。」

 そう言って霜川提督は天井を見上げながら思った事を口にする。
 言葉自体は日本版が異様に高く評価されているとあるアメリカンコミックの主人公の叔父が市の間際に主人公に言って聞かせる場面がある程に有名な物ではあるのだが。

 「解りました、胆に命じておきましょう。」

 霜川提督は明石(艦これ)(分霊)の方に向き直るとそう返す。

 正直舞鈴艦隊の最上型姉妹が以前試験的に使った某ロボアニメの全部乗せなOT艤装の装備の一つである大型ビーム砲以上の火力と言われてもピンとこないのだが、態々バスター砲の名を冠する以上相応の代物なのだろう。
 そしてそれは出来れば使わないに越した事は無い物でもあるのだろう。
 故にその為にも更なる自己研鑽は欠かせない、やはりノーカラテ・ノーアドミラル若しくはノーカラテ・ノーサクセスと云う事か。

 「それに使わなくても済む様にするのが私の仕事なのでしょうから。」

 霜川提督はそう明石(艦これ)(分霊)に返答する。

 「……もう少し気の利いた、そして押しの強い返し方出来ませんか、そんなんだから」
 「何故そこで非モテネタ振りますかね?」

 重い話題から一転しての返答の仕方に対するダメ出しからの下世話な話への振り方に遮る様に突っ込みを入れる霜川提督。
 
 「非モテネタではありません、童〇ネタです、非番には態々水着姿になってくれてる娘達の誠意に応えてあげる気は無いんですか?」
 「いや、あれは更なる登用要求と私の戦争狂化の阻止、そして節電が目的では無いんですか!?」
 「それも有りますが、そうじゃ無いんですよ。」

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あきゅろす。
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