[携帯モード] [URL送信]

明土第七七四集積地鎮守府にて:第二部
2###年(着任三年目)04月1#日:南太平洋・M海域・明土第七七四集積地鎮守府・食堂
 「私は練習巡洋艦娘です、私はこの鎮守府の練度を上げる為に、ここに来ました!」

 まるで食堂全体に響き渡る様に鹿島(艦これ)19192は霜川提督に訴え始める。

 「私にはこの鎮守府の皆さんを他の鎮守府に引けを取らない存在にする義務が有ります!」

 練習巡洋艦娘としての自身の義務を。

 「それは私自身と霜川提督さん、貴方も含まれています!」

 その義務は自身と霜川提督にも適用される事を。

 「多分今のまま無制限に出撃を許可したら軽巡洋艦娘の皆さんの心は少なからず歪みます、少なくとも良い方向には転がらない筈です。」

 自らも落ち着かせる様に声の音量を落としながら感情に任せて出撃を繰り返した場合に想定される懸念を。

 「だから、私に平時の第三艦隊枠を使ったこの鎮守府の近海の哨戒活動も兼ねた練度向上を目的とした教導団を設立させて下さい!」

 そしてそれらを達成ないし解決する為の艦(娘部)隊の設立の提案を霜川提督に訴える。
 尚、教導団とは本来最高の練度を持つ者達を集めて編成される物だが、今回の場合語呂の良さとそれだけの人材を育成すると云う意気込みの現れだと思われる。

 「勿論編成は霜川提督さんに相談します、ですから……!」
 「……解りました、明後日迄にはご返答致します。」

 更なる鹿島(艦これ)19192の訴えを遮る霜川提督。

 「……ッ!」

 鹿島(艦これ)19192はその時の霜川提督の表情から察する。
 自分の訴えを仕込み、若しくは執拗な要求のそれと勘違いしている事を。
 鹿島(艦これ)19192は瞼を閉じて唇の臍を口腔内から歯で挟む様に閉じた。
 そして十数秒後、霜川提督が何かを言おうとした丁度その時に目を見開くと意を決した様に霜川提督の元へと歩み寄る。

 「失礼します!」

 霜川提督の前に立った鹿島(艦これ)19192がそう断るや否や食堂内に乾いた音が響き渡る。

 「私はあの嘆願書には署名していません、そもそもちゃんと見てあげたんですか!?」

 いきなりの平手打ちに呆然とする霜川提督に鹿島(艦これ)は自分の提案は軽巡洋艦娘達の仕込みでは無い事を訴えると同時にちゃんと軽巡洋艦娘達からの連名での嘆願書にきちんと目を通したのかを問い掛ける。

 「少なくとも私がさっき言った事は軽巡洋艦娘の皆さんとは関係無く全部本心からの物です!」

 呆然とする霜川提督に尚も訴える鹿島(艦これ)19192。

 「今からそれを証明して見せます!」

 再び食堂内に響き渡る様に宣言する鹿島(艦これ)19192。
 そして鹿島(艦これ)19192は高雄(艦これ)41457816の方を向くと、

 「高雄さん、瑞鶴さん、ごめんなさい!」
 「え、ちょっ、何で私の名前が……!?」

 いきなり名前を出された瑞鶴(艦これ)の抗議はその直後に目にした光景に中断される。
 いや、高雄(艦これ)45417816を始めとする食堂に居た所属艦娘は表情や反応は様々ではあったが、その光景に硬直していた。

 鹿島(艦これ)19192が前屈みになりながらその両手で霜川提督の半ば無理矢理自分の方へと向かせた上でその唇を確りと重ねている

 その光景に。

 食堂に沈黙が広がる中、鹿島(艦これ)19192は“毒喰らわば皿まで”と謂わんばかりに舌まで入れているのかと謂わんばかりに更に深く唇を重ね、些か卑猥な音が食堂に響く。
 どれ程の時間が過ぎたのだろうか、霜川提督の唇から鹿島(艦これ)19192の唇が離れる。
 その時、一瞬彼女と霜川提督の各々のそれが混じり合っていると思われる唾液が尾を引いた様に見えたのは目の錯覚だろうか。

 「これが私の本気です。」

 高雄(艦これ)41457816に土下座した時以来の平手打ちに続いてより強烈な、普通なら有り得ない行動に軽巡洋艦娘達への正負入り交じった感情さえ吹き飛んでしまい、思考停止状態となってしまった霜川提督の前に立つ鹿島(艦これ)19192は窓の先に見える夕焼けを背に笑顔と共に霜川提督にそう告げる。

 「もっと私達をここにいる艦娘達を見てあげて下さい。」

 鹿島(艦これ)19192は先程までとは打って変わって微笑みながら優しく諭す様にもっと自分を含めた所属艦娘を見る様告げる。

 「そして私、いえ私達が霜川提督さんを今の私の行動に対しても文句を言われない程の立派な提督さんにして見せます。」

 更に食堂にいる他の所属艦娘達を巻き込む様に今の行為を顎の底辺の少ないイケメンで無くとも他の鎮守府の提督(艦これ)に文句や嫌がらせを受けずに済む程に立派な提督(艦これ)にしてみせると霜川提督に約束する。

 「その為の、カッシマー教導団ですから。」

 そして彼女は告げる、自らが構想している第三艦隊枠を使った鎮守府近海の哨戒と艦娘達の練度向上の為の艦(娘部)隊の名前を。

 「宜しくお願いしますね♪」

 鹿島(艦これ)19192はそう言いながら自身の臀部の辺りで後ろ手を組みながら霜川提督に微笑み掛ける。
 その微笑みに霜川提督はただ呆然とするばかり。
 恐らくは彼はこの時(マジカル)人造人間艦娘の魔性に魅入られたのかも知れない。

 「……霜川提督さん、ちゃんと聞いているんですか!?」

 霜川提督が呆然としたままなのに気付いた鹿島(艦これ)19192は顔を赤らめながらその両手で霜川提督の頬を押さえつつ意識を戻そうと軽く揺する。

 「……はっ!」

 その行動に由って何とか思考停止状態から回復する霜川提督。

 「鎮守府近海哨戒兼練習艦隊、カッシマー教導団の編成、是非ともお願いします!」
 「鹿島さん、顔近い近い!」

 もう流石に余裕が無くなったのか、大事な事なので何とやらと謂わんばかりに一気にまくし立てる様に平時の第三艦隊枠を使ったカッシマー教導団を編成する様に要請する鹿島(艦これ)19192。
 思考停止から回復したと思ったら再び顔と顔の距離が近い事に慌てふためく霜川提督。
 「……仰りたい事は解りました、新しい艦隊の編成を今日の夜の内に決めさせていただきますので、その際に参考にさせていただきます。」

 霜川提督は鹿島(艦これ)19192に期日を決めた返答を返すと、いそいそと空の茶碗が二つ乗っているお盆を手に取って返却口へと向かう。

 「ご、ごちそうさまでした。」
 「……あ、ああ、はいどうもいたしまして。」

 霜川提督の挨拶に突然発生した状況に手を止めていた料理長さんも捉え所の無い返事をかえしてしまう。 空の食器を返却口に置くや否や霜川提督は慌てる様に駆け足で食堂を後にすると、食堂には暫し沈黙に包まれた。


[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!