プレゼント・7





 昨夜一晩降り続いた雪が嘘みたいに、翌朝はすっきりと晴れ、澄み渡った青空に太陽が白く輝いていた。



 まろやかに鈍い冬の陽射しを瞼に受け、しげるが目を覚ますと、自分の腕枕で眠る恋人の顔が目に入る。
 その姿はもう子供ではなく、よく見慣れた大人のそれに戻っていた。

 長い黒髪を手で梳きながら、しげるは恋人の名を呼ぶ。
「カイジさん」
 顔を顰めてもごもごと口を動かしたあと、カイジはうっすらと瞼を開いた。
 そして、しげるの姿が目に入ると、一気に覚醒したように大きく目を見開く。
「あっ……! お、お前、元にっ……」
 昨晩の行為のせいで嗄れてしまった声に、しげるは頷いてやる。
「うん。カイジさんも」
 すると、カイジははっとして自分の体に目を落とし、元の自分の体に戻っているとわかると、心底ほっとしたような顔で長いため息をついた。
「よ、よかったぁ〜〜……もし元に戻れなかったら、どうしようかと……」
 うっすらと目に涙まで滲ませて安堵の表情を浮かべるカイジに、しげるはちょっとだけつまらなそうに、
「そう? ……もうすこし、あのままでもよかったような気もするけど」
 と独りごちた。


「しっかし……いったいなんだったんだろうなぁ、昨日のアレは」
 自分の顔をぺたぺたと触りながら、まだ信じられないという風に嘆じているカイジに、しげるは訳知り顔で
「クリスマスプレゼントだよ」
 と答える。

 しげるの発言の意味がわからず、カイジは深く眉を寄せる。
 その顔に笑いかけ、しげるは身を乗り出してカイジの顔に顔を近づけた。

「……覚悟しな。あっという間におっきくなって、昨日のオレなんか目じゃないくらい、いい男になってやるから」

 なにかがふっきれたように清々しいその笑みに、カイジは思わず見とれてしまい、咳払いをして誤魔化した。
「そっ……そういえばお前、なんか欲しいもの決まったか?」
 慌てて話題をすり替えるカイジに、クリスマスは過ぎたのにまだそんなこと言ってやがるのかと呆れつつも、しげるは目を細めてちいさく囁く。
「……カイジさん」
 すると、カイジは大きく目を見開いたあと、顔をわずかに赤く染めた。

「馬鹿だな。それはもうとっくに、お前のものだよ」

 そんなことを言って、カイジが照れ臭そうに笑うから、やっぱりこの人には敵わない、と思いながら、しげるは大きなその体に力いっぱい抱きついた。






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