二匹の猫 バカ話 短い



「カイジさん」
「うわっ、びっくりしたっ!」
「なに読んでるの?」
「え……昨日買った雑誌だよ」
「ふーん……」
「あー、重い! 体重かけんなっ……!」
「『パチスロ必勝ナビ』ね……こんなのに頼ってるようじゃ、勝てねぇわけだ……」
「余計なお世話だっつーの! っていうか、勝手にページ捲んな! 戻せっ……! そして重い! 離れろっ……!」
「ふふ……断る」
「あぁ? ……ったく、こういうときお前、いっつも邪魔してくるよな……」
「そう? ……そうかな」
「なんか、猫みてぇ」
「ねこ?」
「試しに『にゃあ』って鳴いてみな? 『にゃあ』って」
「は? 『にゃあ』……?」
「おお! ……なんつうか……わかってたけど、予想を遙かに超えて可愛くねぇな……」
「そんなことより、今の」
「あ?」
「あんたも言ったでしょ、『にゃあ』って。それ、もっかい」
「え、ええ?」
「もっかい鳴いてみてよ、カイジさん」
「なんでオレが……うひゃっ!」
「鳴いてみて」
「わ、わかったわかった! だからそれ、やめろっ……! くすぐってぇ……!」
「やめたよ」
「はー、はー……マジでなんなんだ、お前……」
「ね、早く」
「……」
「……」
「に、にゃあ……」
「……ククク」
「……なんだよその笑いは、気色悪い」
「可愛くない」
「そ、そりゃそうだろうよ……! 可愛かったらおかしいだろうがっ……!!」
「……けど、悪くない」
「はっ? っておい、ちょっと……!」
「……ククク」
「馬鹿、やめろって……! あっ、あっ」


 背中にのしかかったまま雑誌を奪い取ると、巨大な白い猫は尻尾を振りながら、もう一匹の犬みたいな黒猫を押し倒し、襲いかかった。






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