転じて福・7(※18禁)


 完全に人の気配が消えると、赤木は絡まる舌を解いた。
 途端に、狭いトイレ中に響くような大声で、カイジは喘ぎ出した。
「んあぁっ! あっ、もうオレ、げんかい、ですっ……!」
「よく我慢したな。えらいぞ、カイジ……」
 泣きそうな顔で限界を訴えるカイジの頭をそっと撫でてやり、赤木はその頬に唇を落とす。
「ご褒美に、お前の好きなとこにくれてやる……どこが、いい?」
 赤木の言葉に、カイジの顔が真っ赤になる。
「そ、そんな、こと……っあ、んっ!」
 ぼそぼそと文句を言いかけたカイジだったが、赤木の突き上げに喉をひくりと引き攣らせ、言葉を途切らせた。
「ほら……どこだ? 言ってみろって……」
 ずぷずぷと抽送を繰り返しながら甘い声で言う赤木に、カイジはきゅっと唇を噛みしめたあと、おそるおそる口を開いた。
「な、か……」
「ん?」
「中に、ほしい、です……」
 蚊の鳴くような声に驚いて、赤木は一瞬動きを止めてしまった。
 まさか、カイジが中出しをねだってくるとは、想像もしていなかったのだ。
 せいぜい口か、もしくは自分の体じゃないところーー便器の中なんかを指定してくると思っていた。

 中に出せば、後々体が辛くなることは火を見るより明らかである。
 まして、ここは屋外だ。家に帰れば、洗い流すこともできるが、そこまでの道のりがキツいだろう。
 そんなことは、当の本人がいちばんよくわかっているだろうに、そのカイジ自ら、中に欲しいと懇願しているのだ。
「……いいのか? 腹、下しちまうかもしれねえぜ?」
「いい、です……その方が、きもちいい、から……」
 あまりに大胆な発言に固まっている赤木の頬を両手で包み、カイジは目を伏せてその下唇に軽く噛みついた。
「あんただって、そうだろ……?」
 誘うような声音に理性を突き崩され、赤木はカイジの後ろ頭を押さえつけて唇を強く吸った。
「んっ……んぁっ、あかぎ、さっ……!!」
 ずくずくと突き上げながら、赤木は欲望の滾る瞳で睨むようにカイジを見る。
「いいのか? 本当に、出しちまうぞ……お前の中に、たくさん……」
「あっ、いい、からぁっ……!! はやく、はやくくださいっ……!」
「このバカ……後悔しても、知らねぇからな……っ!」
 怒ったように吐き捨てるのと同時に、赤木はカイジの最奥、最も狭くて収縮のキツい場所に先端を叩きつける。
「うぁっ! あっ! あっあぁっ……!」
 カイジがひときわ鋭い声で鳴き、背を弓形にしならせる。
 搾り取るような締めつけに促されるまま、赤木はそこで埒をあけた。
「……っ、」
 目を閉じて歯を食い縛り、先端から精液の迸り出る感覚を追う。
 荒い息をつきながら、自分の放ったものでぬるつくそこを緩く突き上げていると、やがて虎柄シャツの腹辺りがべっとりと熱く濡れ、くったりと力の抜けたカイジの体がしなだれかかってきた。

















「信じらんねぇ……ああもう、どうやって帰るんだよ……!!」
 諸々の後処理を終え、個室を出てすぐさま頭を抱えるカイジとは対照的に、赤木は白濁でべったり汚れた腹に視線を落としつつ、暢気にタバコをふかしていた。
「んー……そんなに目立つか? これ……」
「当たり前だろうがっ……! 色だけじゃなくて、に、臭いだって、ひどいしっ……」
 言いながら、みるみる赤くなっていくカイジに、赤木はニヤリと笑う。
「あーあ。お前のせいだな。どう始末つけるんだ? カイジ……」
「元はと言えば、あんたが原因だろうがっ……!!」
 目を剥いて怒るカイジに、赤木は声を上げて笑う。
「まぁ……水で洗えば平気だろ。人気も少なくなってきたし、普通に歩いてても、まず気付かれねぇよ」
 無責任な発言をする赤木に、カイジは胡乱げな視線を向ける。
 そんな視線などどこ吹く風と、赤木はさっそく水道の蛇口をひねる。
 勢いよく流れ出した水に、派手な柄シャツを躊躇いなく浸す赤木の横顔を、カイジがぼさっと見つめていると、赤木がやがて、ぼそりと呟いた。
「このまま帰るのも、なんか惜しいな……」
「え?」
 聞き返すカイジの顔を鏡越しに見て、赤木は言った。
「ちょっとその辺、ぶらぶらしてから帰るか」
 花見だよ花見、と軽い調子で赤木が言うと、カイジはしばらくぽかんとしたあと、口許を右手で覆い隠す。
 どうした、と聞こうとして、それが嬉しいのを隠そうとするときのカイジの癖だということを思い出し、赤木は苦笑した。
 散歩ごときでこんなに喜ぶなんて、まるで犬みたいだな、なんて思いながら、今度はカイジの顔を鏡越しではなく直接見て、穏やかに言った。

「お前は、本当にかわいいよ。カイジ」

 愛おしげな声音にぴくりと固まったあと、緩みそうになる口許を引き締めようと苦心しながら、カイジは敢えて拗ねたような声で、ぼそりと言い返した。

「かわいいとか、言うなってば」






[*前へ][次へ#]

12/15ページ

[戻る]