転じて福・6(※18禁)


「あ、あぁ……あかぎさ、おかしい、オレ、おかしいっ……!」
「ん……っ? どうした、カイジ……?」
 乾いた音を立てて腰を叩きつけながら、赤木はカイジを見る。
「き、きもちよすぎてっ……! おかしく、なっちまうっ……!!」
 頬を染め、目を潤ませ、長い髪を乱しながら訴えるその様子に、赤木は獰猛な顔つきで乾いた唇を舐めた。
 便座に深く座り直し、思う存分媚肉を味わおうと腰を据えた瞬間、外から近づいてきたふたりぶんの足音に、赤木は動きを止めた。
 カイジも気がついたのか、またも青ざめ、ごくりと唾を飲み込む。
 足音はどんどん近づいてきて、ついにトイレの中まで入ってきた。
「おぇぇっ……あー、ぎぼぢわりぃ……」
「お前なぁ、弱いくせに調子乗って飲み過ぎなんだよ……」
 どうやら、酔った花見客と、それを介抱している男のふたり連れらしい。
 声は、ふたりともまだ若い。おそらく、まだ学生なのだろう。
 黒服じゃなかったことに、とりあえずほっとしたカイジだが、体の中でどくりと脈打った杙に、はっとして赤木を見る。
 焦ったようなカイジの目と目が合うと、赤木はニヤリと笑う。
 そして、指が食い込むほど強くカイジの腰を掴み直すと、激しくピストンし始めた。
「んんーーっ!?」
 カイジは慌てて赤木の肩を噛んだが、喉の奥で押し殺されたはずの喘ぎは思いの外大きく、トイレの壁に反響して外にいるふたりの耳にも届いた。
「あー……個室、先客いるわ……ってか、なんか呻き声、聞こえたんだけど」
 とろけるような肉孔を、ずちゅ、ずちゅ、と穿ちながら、赤木はカイジの顔を上げさせ、漏れそうになる声ごと飲み込むように、深く唇を重ねる。
 近づいてくる足音を聞きながら、カイジは赤木の舌に強く吸いついて懸命に声を堪える。
「もしもーし? 大丈夫っすかー?」
 薄いドア一枚隔てた向こう側で、こんな饗宴が行われているなどとは夢にも思っていないであろう、暢気な声とともにドアが軽くノックされる。
 コツ、コツ、と乾いた音が鳴るたび、カイジはびくりと身を竦ませる。
 すると、カイジの怯えに併せるように中がきゅうっと窄まり、その心地よさに、赤木の動きはますます激しくなっていく。
 荒い吐息を重ねながら、夢中で互いの体を貪り合っていると、しばらくして、扉の向こうから諦めたような声が聞こえてきた。
「返事ねぇな……」
「寝てんじゃね? うっ、ぷ……」
「そうかもなー。……ってかお前、ここで戻すなよ、後生だから」
 のんびりとした声に重なるようにして、千鳥足の足音が近づいてくる。
 次の瞬間、バン! と大きく扉を叩かれ、カイジの心臓が跳ねた。
 どうやら、酔っている方の男がドアに手をついて凭れかかっているらしく、くぐもった声がすぐ近くから聞こえてくる。
「あーくそ、めーわくだなー……この、酔っぱらい野郎がっ……!」
「お前、自分のこと棚上げしすぎだろ」
「うるせぇ! このやろっ、早くでてきやがれっ」
 扉の下辺りがドン! と大きな音をたてた。
 ドアを蹴りつけられたらしい。
 しかし、赤木から突き上げられ続けているカイジが肝を凍りつかせたのは一瞬のことで、すぐに心も体もとろとろと溶け出すような肉棒の熱さに身を委ね、赤木の舌に舌を絡ませながら、淫らな行為に没頭し始める。
「やーめーとーけって……」
 介抱している方の男が、ドアを蹴りつけた男を嗜めるも、男は酔っ払い特有の謎の執念深さを発揮し、尚もドアを蹴り続ける。
 ドン! ドン! と、今にも蹴破られそうなほど強く蹴りつけられ、このままだと本当にドアを開けられてしまうかもしれない、とカイジはぼんやり思った。
 赤木に激しく貫かれて、みっともなくよがり狂う自分の姿を、見られてしまうかもしれない……。
 そう妄想した瞬間、カイジの体を突き抜けるような快感が走り抜けた。
「ーーーーッ!!」
「っ、く……」
 ひときわキツい締めつけに、さすがの赤木も眉を寄せる。
「……どうした? こんなに締め上げて……なんか、やらしいことでも想像したのか?」
「っ……」
 濃厚な口づけの合間に、赤木は音を消した声で問う。
 カイジはぎくりとし、またしても中をきゅうっと締め上げてしまった。
「ふ……図星か……」
「う……っ」
 情けない顔でぶるぶる震えるカイジをきつく抱きしめ、絶頂へとのぼりつめるため、赤木は抜き挿しのスピードをさらに速める。
 がくがくと揺さぶられながら、カイジもまた、幼子のように赤木の体にすがりつく。
 ぬちゅ……ぬぷっ……と、卑猥な水音がいっそう大きくなる。
 外に聞こえてしまうのではないかとカイジは危ぶみ、そのことにまたぞくぞくして、赤木のモノを搾り取るように腸壁を収縮させる。
 互いの限界が近い。間近でドアを蹴りつける音が、ものすごく遠く聞こえる。
「このっ、このくそバカ野郎っ……、いって!!」
 パコン、と小気味よい音がして、ドアを蹴る音がようやく止んだ。
「くそバカ野郎はてめぇだ。やーめーろっつってんだよ」
 地を這うような低い声で牽制され、酔った男は一瞬、しんと黙り込む。
「……おま、お前、酔って具合悪いやつ殴るなんて最低だぞ」
「うるっせーよこのくそバカ野郎。……ていうかお前、ぜんぜん平気そうじゃん」
 呆れたようなため息とともに、ひとつの足音がドアの前から遠ざかっていく。
「あっちょっ……、置いてくなよっ……!!」
 情けない声を上げながら、酔っ払い男もその後を追って出て行った。



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