Don't hold out something.・2(※18禁)



 ラーメン屋からカイジのアパートまで、徒歩で十分くらいの距離を歩く。
 腹がくちくなったせいで気だるく、カイジはいつもよりゆっくり歩きながら、すこし前を歩くアカギの後ろ姿を、ぼんやりと眺める。
 こうして、歩いているのを見る限りは、いつも通りのアカギだ。なんの違和感もない。
 でも確かに、ラーメン屋ではなにかがおかしかったのだ。
 それがなにか探り続けているが、やはりわからない。
 相変わらず正体不明の、歯がゆさを感じながら、カイジは内心、首を傾げる。



 今夜は特に冷え込みがひどく、ラーメン屋で暖まったはずのカイジの体も、玄関に到着する頃にはすっかり冷え切っていた。
「さみ……」
 小さく呟きながら部屋の鍵をあけ、照明のスイッチをいれる。
 靴を脱いで部屋に上がると、続いてアカギも靴を脱ぎ始める。

 心なしか、いつもよりゆっくり靴を脱いでいる気がする。
 よくよく、足許を見ると、アカギは前会ったときと違う、新しい靴を履いていた。
 汚れ一つないまっさらな靴。脱ぎ慣れていないのだろうか?
 だがカイジはここでもやはり、ラーメン屋で感じたのと同じ、微弱な違和感をアカギに感じた。

 やはり、気のせいではない。
 確信したカイジは、本人に直接、言ってみることにした。
 アカギが靴を脱ぎ終えるのを待って、口を開く。
「アカギ、お前、なんかーー」
 ヘンじゃねえ? と言い切る前に、アカギが一歩、大きく近づいてきて、カイジは息をのんだ。
 アカギはカイジの腕を強く掴んで、部屋の奥へと引きずっていく。
「アカギ!? っ、おい……!」
 たじろぎつつ呼び掛けたが、アカギは答えず、ベッドの前までカイジを連れて行くと、無言のままベッドの上に押し倒した。
 そして、突然のことに固まっているカイジの上にのしかかると、腰の上に跨がって身動きをとれなくする。

「……っ、アカギ?」

 動揺を隠しきれない声にアカギはニヤリと笑うと、カイジのジーンズからベルトを抜き取る。
 そして、ずるずるとカイジの腹の上に移動すると、カイジの腕を頭上で一纏めにして、ベルトで雑に縛り上げた。
「お、おい!」
「いいから、じっとしてなって」
 慌てるカイジをいなしている間に、アカギは自分のベルトを抜き、体勢を変える。
 それを使って今度はカイジの足首を、同じように縛り上げ、体の自由を奪った。

 カイジは呆然としていた。
 こんなーー拘束など、今までされたことなかったし、アカギがこういうことに興味があるとは決して、思えなかったのに。
 混乱のあまり抵抗を忘れているカイジをそのままにして、アカギはベッドから離れる。
 暫くして、タオルを手に戻ってくると、ふたたびカイジの上に跨がった。
 そのタオルでなにをするつもりなのか。この流れで、予想されることはひとつしかない。
 勘づいたカイジは慌てた。
「ま、待てっ、アカギっ……!」
「待たないよ」
 アカギがそう言って、細く折ったタオルをカイジの目の上に被せた。
「やめろっ……! おい、アカギっ……!」
 流石にカイジは抵抗する。
 しかし暴れれば暴れるほど、手足のベルトの結び目は固く締まってカイジの自由を奪っていく。
 無駄な抵抗を嘲笑うかのように、頭の後ろで布の擦れる音が聞こえてきて、カイジはあっという間に視界を奪われた。
「あ……アカギっ……?」
『見えない』ということに、言いしれぬ不安を覚え、カイジは心細そうな声を出す。
 アカギらしくない行動やその性急さも、カイジの不安の一因だった。
「たまには……、いいでしょ、こういうのも」
 思考を読み取ったかのように、耳許で囁かれ、次の瞬間。
「っふ、あ、あッ!」
 耳の穴にぬらりと舌が差し込まれ、カイジの体が跳ねた。
「はぁ、あっ」
「相変わらず、耳、弱いんだ」
 しつこく耳をねぶりながら、アカギが嘲笑う。
「あ、いや、イヤだっ……!」
「いつもより、反応いいけど」
 興奮してる? と言われ、カイジは唇を噛んだ。
 アカギの言うとおり、相手の行動が見えない分、普段より敏感に反応してしまう自分を、カイジも自覚していた。


[*前へ][次へ#]

26/34ページ

[戻る]