Don't hold out something.・1(※18禁) 拘束、目隠し アカギが格好悪い話


「カイジさん、きいてる?」

 ふいにそう問われ、カイジはどきりとして目線をあげた。

 醤油と油の匂いの充満する、狭いラーメン屋。
 差し向かいで座るアカギの鋭い目が、自分をじっと見ているのに気がつき、慌てて謝る。
「わり……ぼーっとしてた」
 すると、アカギは『やっぱりね』という顔で、ため息をつく。
 そして、話すのをやめて箸で細い麺を持ち上げ、口に運んだ。

 その動作を見て、やはり、とカイジは思う。
 アカギの、食事をする仕草に、言葉にできないくらいの微かな違和を感じるのだ。

 アカギと会ったのは、実に一ヶ月ぶり。
 だが、前会ったときとはなにかが違うような、据わりの悪い印象がどうしても拭い去れないのだ。
 しかし、いったいそれがなんなのかわからない。
 それがどうしても気になって、ラーメンを食べるアカギを眺め続けていた結果、ついアカギの話を聞き逃してしまったのだ。

 違和感の正体を探ろうと、アカギをじっと見詰めたまま、カイジは水を口に運ぶ。

「久しぶりに、カイジさんとセックスしたいな」

 水を含んだタイミングでアカギがそんなことを、狭い店中に響くくらいにはっきりとした声でいうものだから、カイジは水を飲み下すタイミングを逃し、大きくむせた。

「……って、言ったんだけど。さっき」
 苦しそうに咳き込みながら周囲を窺うカイジに、しれっとアカギはそうつけ加える。
「おま……っ! そういうこと、でかい声で言うんじゃねぇっ……!」
「さっきは、聞こえてなかったみたいだったから」
 さらりとかわすアカギの目は笑っている。
 からかわれたことには腹が立ったが、アカギがこうして愉しそうに笑うのが嫌いではないから、カイジは口をへの字に曲げたものの、それ以上文句は言わなかった。
 拗ねたようなカイジの態度に笑い、アカギは声をやや潜めて言う。
「で……どう?」
 囁くような声音に、カイジは体の熱が上がるのを感じた。

 カイジだって仮にも成人男子なのだから、人並みに性欲はある。
 一ヶ月も会っていなかった恋人と会ってなにもしないなんて、よっぽど体調が悪いとか、なにか事情がないかぎり、ありえない。

(わかってるくせに、野暮なこと聞きやがって)
 恨みがましい目線を送れば、愉しそうに笑う瞳に受け止められる。
 アカギはカイジの表情をじっくりと眺めてから、
「ーー愚問だったな」
 と言った。
 カイジの頬が、輪をかけて熱くなる。

 出ましょうか、と言って、立ち上がりながら伝票を掴むアカギに続いて、カイジものろのろと腰を上げた。




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